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『203号室』加門七海

『203号室』
光文社文庫
加門七海
476円
2004.9.20

 怖いはずの仕掛けはたくさんあるのだけれど、なぜかあまり怖くない心霊ホラー。地方出身の女性が主人公で、都会暮らしに胸を弾ませて上京してきたのだけれど、借りた部屋が……という話。

 加門七海の作品では『蠱』は文句なしにおもしろかったし、『大江戸魔方陣―徳川三百年を護った風水の謎』『東京魔方陣―首都に息づくハイテク風水の正体』のあたりもなかなか良かったのですが、『うわさの神仏―日本闇世界めぐり』というオカルトエッセイで「あれれ?」という感じになり、最近の物は残念なことになんだかピンとこなくなってしまいました。

 今回読んだ『203号室』もいまひとつ。
 主人公の女性がパニック系の性格でうまく感情移入できず、おいてけぼりを食ったような印象です。ホラーではあまり冷静な主人公はまずいのかもしれませんが、幻覚なのか現実なのかを一人称的視点でまぜこぜにされてしまうと、恐怖ではなく狂気を描いた小説を読まされている気分になって醒めてしまいます。
 とはいえ、あまり理性的な主人公でも理屈臭くてうんざりしちゃうし。さじ加減が難しそう。
 気になったのは一人称的三人称で書かれた地の文で「イッちゃった人」(正気を失った人の意)のように口語、というか砕けた若者言葉が登場するところ。完全一人称ならアリだと思うけど、形式的に三人称の地の文で言葉が砕けすぎると興が削がれてしまいます。これもさじ加減かな?

 最初の頃の短編集『蠱』のようなスタンスの話がもう一度読みたい、と思うのは私だけでしょうか。

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