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2008年8月の15件の記事

『イシノネ』に登場した音楽

 『イシノネ』作中で登場させた主な曲からCDを紹介。
 今考えると曲とエピソードをもっと深く絡められれば良かったな、とも思います。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ ハーン
 ハーンのバッハ演奏を一度聴くと他の一流と言われる演奏家達がヘタクソに思えてしまいます。文句なしの名盤。古楽器演奏(バッハ当時の技巧と楽器)ならば残響たっぷりの教会建築で録音されたクイケンの新録音も心地良いです。作中でヴァイオリン練習場所になっている展望室も残響が豊かで無伴奏ソナタの分散和音がきれいに重なるのかも。
サラサーテ:カルメン幻想曲 ツィゴイネルワイゼン/ヴァイオリン名曲集より ムター
 CDのタイトルは「ツィゴイネルワイゼン」が主役ですが一緒に収録された「カルメン幻想曲」がムターにぴったり。ヒールでタンバリンを鳴らしながら弾くのは絶対無理!と思えてしまう難曲です。「のだめカンタービレ」で峰がこの曲を弾く恋人を指して「俺の真っ赤なルビー」と感涙を流しますが、本当に「真っ赤なルビー」なイメージの曲。脱線ですがツィゴイネルワイゼンは冒頭で「き~み~の名は~」と口ずさんでみると脳裏にメロディが焼き付きます。
さくらさくら
 これは残念ながらイメージに近いCDは見つかりませんでした。高校生の頃、ヴァイオリンを習っていた友人が余興に見せてくれたのが作中での“左手ピチカートによる装飾音付さくらさくら”でした。身近に楽器弾きがいるなら演奏をねだって困らせてあげてください。「琴で弾くときみたいな装飾音」と注文をつけるのがお勧めです。
ラヴェル:ツィガーヌ レーピン
 ムターのツィガーヌは力強く情熱的ですがレーピンの録音は寂寥感がありました。ラロの「スペイン交響曲」がメインタイトルのCDですがこれに収録されているツィガーヌは割と好き。ただ決定盤演奏が見当たらない曲でもある気はします。
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 テツラフ
 このブログ内でも紹介記事を書いたので詳しくはそちらへ。この曲も好きな曲なのに決定盤が思いつかない……。
パガニーニ:カプリース 五嶋みどり
 五嶋みどりの伝説の一枚。ヴァイオリンについてあまり知らない人が聴くと「本当に一人で演奏してるの?」と不思議に感じる超絶技巧曲。
ベルク:ヴァイオリン協奏曲 ムター
 お勧めは現役ヴァイオリン弾きの女王・ムターの録音。いわゆるゲンオン(現代音楽)の中ではもっとも聴きやすい曲と思われます。この録音もとてもロマンチック。オーケストラもムター自身の演奏も最高。一世を風靡した名盤――のはずなのに国内盤が廃盤、なのかな。Amazonで見当たらなかったのでリンクは海外版です。少し線が細い感じですが渡辺玲子の録音も割と好き。この曲はハーンが録音してくれれば最高、と思うのですが。

☆ ☆ ☆

 2ch創作文芸板「小松左京賞スレ」関連のお話。
 スレッドで『イシノネ』を読んで下さっている方は概ね

  • 文章はかろうじて及第?
  • 構成がダメで先に読み進めるのが辛い

 という印象のようです。
 2chという場所柄酷評を覚悟していたのですが晒した当人が読んでいるスレということで遠慮もあるのでしょうか。印象が短く一言二言綴られそれが、ああ、と納得行くものばかり。「登場人物は何をしたいのか?」には膝を打ちました。
 早々に読破して下さった方もおいでのようです。
 一次選考落ちでいわばハズレ保証のついた長編ということになりますが、にも関わらず手にとって下さった皆さんありがとう。
 落選作でも公開することでSF系新人賞を目指す人の何かの参考にでもなれば『イシノネ』も浮かばれるというものです。

 さて。気持ちに区切りをつけて次へ向かおう。

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『バイオミネラリゼーション』渡部哲光

『バイオミネラリゼーション』P.89とアンモナイトバイオミネラリゼーション―生物が鉱物を作ることの不思議
渡部哲光
東海大学出版会
4410円
1997.2.20

★★★☆☆

 貝殻や骨などの生物の作る鉱物についてまとめられた本。1997年刊なので少し本の雰囲気は古いですが内容面では今も十分に新しそう。零細研究ジャンルのようですし。
 意外な世界が垣間見れて楽しめた本でした。真珠層の形成が電子顕微鏡で見ると渦巻きだったり(写真参照)、ハノイの塔風だったり。シンプルな化学式も登場しますし、生物系大学生向けの印象ですが、読み物として接しても十分に楽しめると思います。大きめの図書館にはあると思うので見かけたらぱらぱらと覗いてみてはいかがでしょう。珪藻や放散虫、有孔虫の骨格には自然の不思議を感じられるはず。
 の数が少なめなのは一般向けとしてはあまりにも偏ったジャンルなのでお勧めしにくいため。専門の方は教科書としてすでに持っている気がしますし。
 より新しい類書では『バイオミネラリゼーションとそれに倣う新機能材料の創製』という68,000円の本も存在するようなのですが、この値段ではとても買う気にならず、地元の図書館にもありませんでした。残念。

オパール化アンモナイト  上掲載写真は真珠層の形成解説ページと手持ちのアンモナイトです。虹色に有色効果が見えているのはオパール化アンモナイトだから――ではなく表面を削って内側の真珠層を剥き出しにしたものだから。アンモナイトも内側はアラレ石?方解石?の真珠層を持つものが多いようで、軽く表面を削ってやるとピカピカの虹色になります。科学的な標本としてはNGですが、お土産としては真珠層が見えていた方がキレイ。本来は下半分に覗いているようなフラクタル模様の縫合線で覆われていたようです。
 右はミネラルショーで撮影してきたマダガスカル産のオパール化アンモナイト。写真だと色が気持ち悪い気もするのですが、実物はもっときれいです。50~60cmあったかな? これは元々の殻自体は「バイオミネラリゼーション」ですが、オパール化はアンモナイトが死んでからのものなので「バイオミネラリゼーション」ではありません。

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『イシノネ』の素材

 自作SF小説『イシノネ』の元ネタ紹介。今回は『イシノネ』の巻末に付した参考図書の中から。

鉄理論=地球と生命の奇跡
 生命の星・地球博物館とセットでお勧めしたい良書。白砂青松の由来から地球に酸素がある理由までを絡めてぐいぐい読ませてくれます。この本を読み、地球博物館の層状赤鉄鉱(BIF)を撫で、火星を思い描きました。
最新探査機がとらえた火星と土星
 2004年のムックなので少し古くなった観もありますが火星観はさほど変わっていないと思うので十分現役。クレーター年代学による火星各地の年代情報もありましたが『イシノネ』世界ではこの年代学は大刷新されたことになっております。現状の年代区分モデルでは多細胞生命が生まれる時間的猶予がなさそうなので。
メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋
 アニメの監督・脚本で名高い人の書いた化石採集家伝。この本がなければ『イシノネ』は書かれなかったでしょう。
SUE スー 史上最大のティラノサウルス発掘
 この本を持ってミネラルショーに行き、ブラックヒルズ研究所のブースで買い物をして著者のピーター・ラーソンにサインをもらうなんていかがですか。
よみがえる分子化石 (感想記事⏎)
 この本に書かれているような分子化石の研究が将来きっと理論古生物学を生むはず。境界条件で区切らずに億年単位の化石化過程を計算機で追跡できる――というのが作中の時代の化石成因論です。百年後にはそれくらいできるはず、と思うのですが、この百年の科学の歩みは細分化・精緻化でどんどん遅くなってるんですよね……。
日本惑星科学会誌 Vol.13 No.3,2004 P137 火星の日射量変動と気候
 こちらはネットで見つけたもの。資料のネット依存度は意外に低い(最新ニュース程度)のですが一般の図書館では専門性の高い資料には触れられないのでCiNiiなどのネット上の情報が役立ちます。

 科学ネタは最新情報でお話がひっくり返ったりもします。
 例えば火星探査機Phoenixのミッション。土壌から過塩素酸化合物(ヒドラジンの仲間・毒性が高い)が検出されてしまって「ロケットの噴射ガス残留物か? でなければ過去にも生物は望み薄かも」という状況になっています。過塩素酸を利用する生物もいないわけではないそうですが。主人公に岩石の味見させちゃってた気が……。溶けちゃうゾ。
 そうだ。火星の北半球低地が巨大な衝突クレーター痕である、という説も日経サイエンスに紹介されていたのでした。月の衝突起源モデルや木星の内軌道移動もそうですが、計算機で「こういう初期条件を設定すると結果が現実に合う」というのは一見科学的ですが、実は科学ではなかったり。1+1=2ですが3-1=2でもあり、4/2=2でもあります。答えを同じにするだけの計算であればいくらでも都合の良い初期条件を揃えられるのです。ゆえにこの説は不採用。……いえ、本当は北半球の低地が海でないとお話が成立しなくなってしまうというだけですが。
 オリンポス山からタルシス三山一帯は反対側にあるヘラス平原を作った巨大衝突の衝撃波が惑星を貫き火山活動を誘発したのだ、という思いつきも書きたかったのですが『レッドマーズ』ですでにそのアイデアは使用済みでがっかり、ということもありました。火星での化石発掘物語も私が知らないだけで、メジャーな作品ですでにこってり描かれた後なのかもしれません。

 蛇足ですが。
 『イシノネ』掲載と同時に2chの日本SF新人賞■小松左京賞 Part.2スレに告知をしてみました。結果、この数日で2chから58人の方が飛んでいらしたようです。多いのか少ないのか。

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ココログファイル容量制限

 ココログでアップできる1ファイル容量の上限が40MB→1MBに変更されるそうです。

2008.8.25 アップロード1ファイルあたりの最大容量変更について

 『イシノネ』のPDFがすでに1.5MBあるのに。

 LaCoocanなんて有料サービスに振り替えってのも納得いきません。理由が「スプログ・不正利用(?)ユーザの排除」であるのに通常のユーザがなぜコストを支払わねばならないのか。実質的な値上げではないでしょうか。

 そもそも「排除したいユーザ」をサービスの仕様で制限するのが横着すぎるのではないでしょうか。
 ココログフリーならばまだしもベーシックだってプロバイダーとしてのNiftyの正規サービスとして利用しているのだし、ブログ設置のためだけに対価を支払っているプラスやプロに至ってはスプログはともかく「倉庫として使うことの何が悪いのか」という話になります。違法性のあるデータの配布などに使っているなら排除されて然るべきですが、何ら問題のないデータのファイル倉庫として利用することにどんな倫理的・法的問題があるでしょう。(2008.8.27追記)

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SF小説『イシノネ』

 第9回小松左京賞に投稿した自作SF小説です。
 一次選考で落選した原稿を改稿したものです。同賞挑戦者の他山の石にでもなればと思います。


イシノネ
2008.8.31公開
2010.10.16更新
ダウンロード
「――ね、マリ=クレールは火星地表でどの程度、有人探査が行われたか知っている?」

人類のフロンティア・火星で化石ハンターを目指す少女。彼女は錆びついた惑星がかつて生命の星であったと信じるのだが……。
ジャンル:SF・全年齢・622枚

 雑記的な追記でも。
 小松左京賞に投稿した時点では「がんばった!」と思ったのですが、ブログ公開のために見直してみたらボロボロでした。構成大ぽかはあるし、編集ミスが残ってるし(まだあるかも)、日本語がおかしいところがあるし(たぶんまだある)、一次落ちして当然だったと改めて思いました。

 修正という以上にざっくりと手を入れてます。お盆休み前に提供する目算が夏が終わりかけての公開となりました。
 (改稿はしましたが、それで一次通過するレベルになったとも思いません。2008.9.6追記)

 プロット的な密度は薄め。謎も投げっぱなしの部分が多々あるので「だらだら長いだけ」かもしれません。読者を楽しませるため、というよりは書くのを楽しむことに終始した気がします。

 感想、批判、問題点の指摘etc歓迎いたします。

注意事項

◆ ◆ ◆

 その他の自作小説も「小説ライブラリ」にあります。

リンク

 

◆ ◆ ◆

2009.2.19追記:『イシノネ』の感想を掲載してくださっているブログ様もあるようで大感謝です。

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生命の星・地球博物館

生命の星・地球博物館ロビー

 神奈川県立生命の星・地球博物館へ行ってきました。幾度目かですが、ここの触れる展示が好きなのです。

「お、パール」でオパール GR DIGITAL F2.4 1/30sec ISO154

 今回はこんな感じのものを見たかったのでした。今、ちょうど読んでいる本が『バイオミネラリゼーション』という本で、少し関連があります。上の写真は石灰岩がオパール化して真珠光沢が出た物。

オパール化アンモナイト GR DIGITAL F2.8 1/32sec ISO109 -0.3 EV こちらはアンモナイトがオパール化したもの。上の石灰岩も含めて語としてはオパール(SiO2・nH2O)より霰石(アラゴナイトCaCO3)のような気もするのですがよくわかりません。有機物を含んだ石の遊色効果はとてもきれいなのに、写真に撮るとイマイチ冴えないのが残念。ミネラルフェアに展示されていたマダガスカルの大アンモナイトもルビー化?していて見事だったのに写真映りが悪くてがっかりした覚えがあります。

ディプロドクス パノラマでディプロドクスのお腹の下から……なんですがわけのわからない代物に。首は途中でうんにょり曲がって闇の彼方。

 ディプロドクスの展示はお腹の下をくぐれるよう通路が設定されていて「これは子供達にバカウケ」と思うのですが、恐竜展示自体が思ったより子供ウケがよろしくないようです。ちびっ子たちの目はなぜか恐竜化石より哺乳類の剥製に。なぜだ。

 生命の星・地球博物館の前回のレポはこちら

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紅茶専門店・青い空

夏摘みダージリン GR DIGITAL F2.4 1/5sec ISO154 -0.3EV 千歳船橋の紅茶専門店「青い空」へ行ってきました。最近は千歳船橋へ寄る用事が少なくなってしまってこのお店は何年か振り。(地図⏎

 注文したのは夏摘みダージリン。しばしの後にテーブルにセットされたのはこんな感じで、ポットにはどことなくスリランカ風?デザインのコジー。茶器もよく見るとクジャクかキジか、という花鳥柄。
 おー。良い紅茶。
 渋みもコクもどっしりと強い味。おいしい。

 お店の外観はGoogleマップのストリートビューにあるとおり、商店街の外れにあるなんてことのない喫茶店。少し古めかしい感じ。お店の中はスリランカっぽいタペストリーがぶら下がっていたりして微エスニック。青山にあるようなオシャレな店ではなくて、豆腐屋さんや中華料理店が並ぶ商店街にしっくりくる雰囲気でした。

 夕方がめっきり涼しくなったこの数日。
 熱い紅茶も汗を掻かずに楽しめました。

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招き猫@豪徳寺

ビニール袋入り GR DIGITAL F3.5 1/73sec ISO64 -0.3EV おや。ビニール袋入り。

ジーク! ハイル! GR DIGITAL F2.4 1/60sec ISO64 下から見上げるとスタジアムスタンド風になるのではなかろうか、と撮ってみたら。むむむ。この雰囲気はナチス物映画の演説シーンみたいです。「ハイル! ハイル!」と。
 でもボケている最前列には反体制分子も。

招福観音 GR DIGITAL F4 1/32 ISO100 -0.3EV ストロボ強制発光 かっちょいい木の箱に入った招き猫。首輪の組紐も朽ちかけていて歴史ありげです。箱の奥には「招福観音」と書かれているようですが招き猫本体に隠れて読み取れませんでした。

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『もしもあなたが猫だったら?』竹内薫

もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく
竹内薫
中公新書
756円
2007.12.20

★★★☆☆

 もしも私が猫だったら――。
 猫缶やドライフードはイヤだ。生魚と生肉を食べ、ときどきマタタビにトリップして足立商店からスルメをかっさらい、般若顔の犬と遊んで暮らすのだ。

 でも、この本はそういう話ではありません。SF的なアイデアの提示とその回答「もしも××だったら?」というのが詰まった本でした。
 科学的な思考実験が並べられますが、本気で設定された実験が少ない印象です。先に解答がわかっている/思い浮かんだものの中から紹介しているような。予定調和的にキレイに収まる話ばかりなので結果としては思考実験と銘打ってもウンチク紹介の一亜種になってしまっています。

 でも紹介されている話題はどれも面白かった。
 鳥の視覚、プラトンの哲学、量子テレポーテーション。比較的軽く、さっくりと読める読み物に仕上がっていました。科学ネタの雑学本として楽しめると思います。

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『熱河生物群化石図譜』

熱河生物群化石図譜―羽毛恐竜の時代
張弥曼著/小畠郁生監訳・池田比佐子訳
朝倉書店
9975円
2007.11.20

★★★★☆

 先日の『澄江生物群化石図譜』に続いて熱河生物群と化石ネタ。
 澄江生物群はカンブリア紀の生物でしたが、熱河生物群は中生代の地層で中国北部、モンゴル、シベリア、朝鮮半島、日本と広い地域に分布します。産出する生物も昆虫、魚類、軟体動物、爬虫類、両生類、恐竜類、鳥類、哺乳類、翼竜類、植物と幅広く、保存状態も非常に良い“化石ラーガーシュテッテン”です。

 その産出する化石の豊富なバラエティを反映してか、この『熱河生物群化石図譜』では『澄江生物群化石図譜』や『バージェス頁岩化石図譜』のように、見開きごとに化石生物一種ずつの紹介ではなく、かなりぎっしりと情報が詰め込まれています。学名の羅列も続くので「ええと、これなんだっけ」と前後のページを繰ったり、記憶を探ったりするうちに読んでいる内容が頭から抜けてしまったりもします。解説文自体は平易ですが、内容がするすると自然に頭に入ってくる類の本ではありません。高価な本なので、じっくり味わえてお得、というのは貧乏性ゆえの考えでしょうか。
 印刷は巻末の索引以外はフルカラー。軽量コート紙ですが『澄江生物群化石図譜』よりは紙質に張りがあってカラー写真のコントラストもくっきり感があります。

 先日行ってきた『世界最大の翼竜展』にもこの熱河生物群からの標本がありました。ゾルンホーフェンの標本も。

 後は『ゾルンホーフェン化石図譜Ⅰ・Ⅱ』が揃えば一段落なのですが、二冊組のコレに手を出すべきかどうか……。

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『一億三千万人のための小説教室 』高橋源一郎

一億三千万人のための小説教室
高橋源一郎
岩波新書
735円
2002.6.20

★★★☆☆

 この手の小説指南本、ついつい手にとってしまいませんか。「なるほど」と頷けることもあればそうでないこともありますが、幾度ハズレに当たっても懲りずに手を出してしまいます。そしてどうやらプロの作家でもこの手の本を読んでいたりするようです。

わたしの書斎の本棚には「小説の書き方」「小説教室」「小説はどうやって書くか」「小説家になる方法」「新人賞のとり方」「作家になるには?」といった、小説を書くための、もしくは小説家になるための本が三十一冊ありました。

『一億三千万人のための小説教室』高橋源一郎,まえがきより

 なるほどと思う部分も多かったし楽しくも読めましたが、やはり、というべきでしょうか。この『小説教室』を読んでも自分の書くものががらりと変わるようなことはない気がしました。書かれているのはごく当たり前の、普通のことです。少なくとも意外なことは欠片も書かれていませんでした。
 でも、この本に書かれている通りのことはそうそうできなさそう。
 世界が違って見えるまで待つ? 難しい~。
 小説と遊ぶ? 難しい~。
 『ハリウッド脚本術』のようなものを実践するのは大変ですが、それは労力の点で大変なだけでじっくり取り組めば完遂できてしまうものです。クリアすれば達成感もありますし、プロットを立てる際にはとても役に立つことが実感できます。
 一方で「小説と遊ぶ」というような観念的な指南は達成度も何もわからないわけで、要求水準が高い、と思ってしまいます。いえ、いつまでたっても追いつけないような相対的な目標設定なのでしょう。具体的なハウツーではなく、心の問題を重視するあたりが純文学作家の文章読本らしい、ような気もします。

 読んで楽しくはありましたが、役に立つかと問われれば「よくわかんない」です。

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『言語の脳科学』酒井邦嘉

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか
酒井邦嘉
中公新書
945円
2002.7.25

★★★★☆

 人は生まれついて言語を獲得する能力を持つ。

 この仮定に基づき、これを実証しようという方向の話です。MRIやPETを使い、言語と脳の関係を明らかにしようという研究の、そのアプローチを紹介した本。
 アプローチ、というのはまだ脳の活動を詳細に(シナプス単位で)観測する手段がないために「××をすると脳のこの辺りが活動する」程度のことしかわからないということと、具体的な言語生成モデルの提示が行われないままだから。
 もちろんMRIの登場によって活動中の脳の様子が朧気にでも見えているというのは素晴らしいことなのですが、著者が求めているのは――『攻殻機動隊』で描かれたような――脳活動のモニタリングなのでしょう。現状ではわからないことだらけでとても論理モデルなど構築できない、という段階のよう。
 この本が出されたのは2002年。6年が過ぎて非侵襲型の診断装置は小型化・低価格化はされているようですが、まだ「攻殻を予感させる」レベルには達していないようです。
 診断装置の進歩がひたすら待ち遠しくなるような一冊でした。

 少し難があるのは論理の飛躍が多かったこと。著者は文法機能・言語機能の先天性を主張し、学習によってのみ言語を獲得するという研究に対しては批判的なのですが、その批判の論理の輪が所々ぞんざいな気がします。読み物として煩雑になるのを避けたのかもしれませんが。

 う~ん。なんだかこの本の面白かった部分を上手く表せていないかな。

 認知言語学よりは生成文法の方が、診断技術の進歩に伴って分が良くなるのだろうな、という予感をひしひしと感じさせてくれる本でした。

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JAXA相模原キャンパス宇宙研一般公開

 JAXA相模原キャンパス・宇宙研の一般公開に行ってきました。

宇宙研入口 GR DIGITAL F3.5 1/500sec ISO64 -0.3EV

 面白かった~。でも疲れた~。
 予想以上の人出でした。淵野辺駅とJAXA相模原キャンパスを結ぶ無料バスも朝一番の便からして乗りきれずに臨時の二本目のバスが出る始末。子供連れも多かったですが、宇宙オタクらしきオジサンが一人で来ているケースも多かったようです。

第1会場 GR DIGITAL F2.4 1/36sec ISO64 -0.3EV 第1会場は「はやぶさ」「かぐや」が主役。二階から俯瞰するとこんなに人だらけなのがわかります。でもここはバスの到着直後を外せば混雑はさほどでもなくお好みの展示をそれなりにじっくりと眺められます。解説もびっしり並びますし、JAXAの(あるいは大学などの協力研究員の?)方が詳しく説明してくれます。知識のある方は専門的な知識/疑問をぶつけてみてもダイジョウブ。
 気になっていた月ペネトレーターも1/1スケール模型(という名のたぶん本物)が置かれ、ロシアの探査機による月面投入が決定したようです。
 「かぐや」の第二弾ことSELENE2はまだ計画が本決まりにならないようで、質問してみたところ説明員の方も困ったような顔をしていらっしゃいました。2010年代に実施するならそろそろ決めておかないと開発が間に合わないのでは……。
 「はやぶさ」コーナーでは小惑星イトカワの模型を触らせてくれました。密度が実物のイトカワと揃えてあるとかで、手に持ってみると思ったよりもずしりと重くびっくり。鉄隕石じゃない普通コンドライト(と考えられている)もこんなにずっしりくるのか、とちょっぴり感動。1.9g/cm3という数字と実感がようやく一致した気分です。

第4会場 GR DIGITAL F2.4 1/32sec ISO71 -0.3EV バルーンにぶら下げた書き文字は手作り感で溢れていますが、一般公開の展示はどこもかしこも手作り展示です。普段研究している設備そのままに解説ボードだけ大判プリントしたような感じ。説明してくれるのはどこでも航空宇宙のプロで、打てば響くような答えが返ってくるとても贅沢なイベントです。
 たぶん日本の宇宙開発だけです。
 第一線に立つ技術者たちがこんな懸命になって一般市民への広報役を果たしてくれるのは。

 なのにきっと政治家は弾道ミサイル技術の基礎、くらいにしか考えていないんだろうなぁ……。

ヘリコンプラズマ GR DIGITAL f2.4 1/20sec ISO200 -0.7EV 今回の一般公開イベントの中で一番並んだ「人工オーロラ」展示コーナーの、でもオーロラとは別のヘリコンプラズマチャンバー。こちらは行列もしていなかったのでのんびりと写真が撮れました。
 人工オーロラは「あ、それっぽい」と一瞬だけで、とうてい心ゆくまでじっくりと、とは眺められなかったのが残念。

 他にも超音速風洞とか「はやぶさ」のイオン推進エンジンとかMPDアークジェットとか面白い物がいっぱい見られて幸せな一日でした。

 宇宙に惹かれる少年少女はぜひ次回の一般公開に訪れてみてください。
 こういうイベントに一番来ていて欲しい中学~大学生くらいの姿が目立たなかったのが少し寂しくもありました。

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『遺伝子・脳・言語』堀田凱樹/酒井邦嘉

遺伝子・脳・言語―サイエンス・カフェの愉しみ
堀田凱樹/酒井邦嘉
中公新書
819円
2007.3.25

★★★☆☆

 サイエンス・カフェと題された科学者と一般の人々との対話セッション録。最初から本にするために起こされたわけではない文章(対談etc)はヌルいものが多いので正直期待していなかったし、読んでみてもやっぱり「すっきりしないなあ」とは思いましたが、そこそこ楽しく読めました。

 遺伝子に脳に言語。テーマ的にはとても興味深いものです。遺伝子についてはDNA解析という形で多くの知識が集まりつつありますが、そこから脳や言語――「知能」の理解までにはまだまだ遠い道程が横たわっているようです。
 あるいは道程の遠さだけでもわかってきているのかな、と期待して読んでみた本なのですが、それも五里霧中らしいことが窺えるだけ。う~ん。霧を晴らすのがきっと序文に書かれている生物学における素粒子論のようなもの=理論生物学であり、統計数理と情報処理と生物学の融合なのでしょう。

 サイエンス・カフェで語られた内容自体は正直、目新しいことはないと思います。やはりカフェと題するものはログを読むのではなく実際に参加しないと面白くないものなのかもしれません。質疑応答のやりとりこそが醍醐味なのでしょう。
 Amazonのユーザーレビューが五つ星ばかりなのが不思議です。(2008.8.8現在)

 この本の中で紹介されていた『言語の脳科学』(酒井邦嘉)は読んでいるところなので、近いうちに感想を書いてみようと思います。

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『澄江生物群化石図譜』

アノマロカリスのつもり澄江生物群化石図譜―カンブリア紀の爆発的進化
朝倉書店
X・ホウ他著/大野照文他訳
9975円
2008.3.20

★★★★☆

 しばらく前に神保町に行った折、この本も買っておりました。ほぼ一万円の本ということで春以来悩んでいたのですが、ようやく決心をつけました。書名的には『バージェス頁岩 化石図譜』と姉妹本のようですし、邦訳出版社も訳者チームも同じですが、原著は互いに関係のない本のようです。原題も『バージェス頁岩化石図譜』は“LIFE”でこちらは“THE CAMBRIAN FOSSILS OF CHENGJANG, CHINA”です。
 澄江の読みはチェンジャンなんですね。

 値段も、満足度も高かったです。

 カンブリア紀の生物に関する知識はまだ混乱の真っ最中らしく、例えばアルコチュバ・コノイダリスというホーンのようなシルエットを持った生物はヒオリテス(これまた謎の三角形のポリンキーのような生物)に固着しているように見える標本があるのに穴掘りをする生物の一種だとする説が紹介されていたり、クラゲみたいに見えるエルドニア・エウモルファという生き物が底生生物説とクラゲ型浮遊説があったり。
 化石写真と復元図が並べられている物には「この化石からこんな復元できちゃうのか」と驚かされます。

 ヘンテコな生き物がぎっしり200ページ以上詰め込まれた図鑑サイズの本です。価格的にも内容的にも『バージェス頁岩化石図譜』よりはずっと専門的ですが、カラー写真が豊富(ほぼ半分のページが写真で占められる)なので目で見ても楽しめます。
 ですが、やっぱり

硬皮は稜で縁どられている.硬皮の携帯はさまざまで,小さな標本では腹側が尖ったV字形で幅は狭いがより大きな成体では盾形に近い.対になった硬皮は背側で接しているように見える.ただし,最近背側へ伸びて正中線をまたいでいると解釈できるかもしれないとの指摘もされている.

 こんな感じの説明が延々と続くので、楽しく眺める本というよりは研究者や重度のマニア向けかも。眺めて喜んでいるだけの私にはもったいない本だったかもしれません。

 そうそう、どうでも良いような話ですが。本の中に出てくる「化石保存庫」という用語。これ日本でもlargerstätten(化石ラーガーシュテッテン)とそのまま使われてきた地質用語だと思うのですが、ドイツ語のままの方が絶対格好いいと思うのです。

 書誌情報と並べた写真は『恐竜のおりがみ3』(川畑文昭)に折り方の載っていたアノマロカリス。本の真似をして立体感を出そうと曲げてみたらヨレヨレの失敗作になってしまいました。「新・おりがみランド」というシリーズの一冊で、他にもオパビニア、ディプロコウルス、四枚の紙を組み合わせて作るティラノサウルスの頭骨etc...etc...が載っています。難易度はほどほどだけれど見映え良く折るには技術が必要そう。

恐竜折り紙本記事

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