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『イシノネ』の素材

 自作SF小説『イシノネ』の元ネタ紹介。今回は『イシノネ』の巻末に付した参考図書の中から。

鉄理論=地球と生命の奇跡
 生命の星・地球博物館とセットでお勧めしたい良書。白砂青松の由来から地球に酸素がある理由までを絡めてぐいぐい読ませてくれます。この本を読み、地球博物館の層状赤鉄鉱(BIF)を撫で、火星を思い描きました。
最新探査機がとらえた火星と土星
 2004年のムックなので少し古くなった観もありますが火星観はさほど変わっていないと思うので十分現役。クレーター年代学による火星各地の年代情報もありましたが『イシノネ』世界ではこの年代学は大刷新されたことになっております。現状の年代区分モデルでは多細胞生命が生まれる時間的猶予がなさそうなので。
メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋
 アニメの監督・脚本で名高い人の書いた化石採集家伝。この本がなければ『イシノネ』は書かれなかったでしょう。
SUE スー 史上最大のティラノサウルス発掘
 この本を持ってミネラルショーに行き、ブラックヒルズ研究所のブースで買い物をして著者のピーター・ラーソンにサインをもらうなんていかがですか。
よみがえる分子化石 (感想記事⏎)
 この本に書かれているような分子化石の研究が将来きっと理論古生物学を生むはず。境界条件で区切らずに億年単位の化石化過程を計算機で追跡できる――というのが作中の時代の化石成因論です。百年後にはそれくらいできるはず、と思うのですが、この百年の科学の歩みは細分化・精緻化でどんどん遅くなってるんですよね……。
日本惑星科学会誌 Vol.13 No.3,2004 P137 火星の日射量変動と気候
 こちらはネットで見つけたもの。資料のネット依存度は意外に低い(最新ニュース程度)のですが一般の図書館では専門性の高い資料には触れられないのでCiNiiなどのネット上の情報が役立ちます。

 科学ネタは最新情報でお話がひっくり返ったりもします。
 例えば火星探査機Phoenixのミッション。土壌から過塩素酸化合物(ヒドラジンの仲間・毒性が高い)が検出されてしまって「ロケットの噴射ガス残留物か? でなければ過去にも生物は望み薄かも」という状況になっています。過塩素酸を利用する生物もいないわけではないそうですが。主人公に岩石の味見させちゃってた気が……。溶けちゃうゾ。
 そうだ。火星の北半球低地が巨大な衝突クレーター痕である、という説も日経サイエンスに紹介されていたのでした。月の衝突起源モデルや木星の内軌道移動もそうですが、計算機で「こういう初期条件を設定すると結果が現実に合う」というのは一見科学的ですが、実は科学ではなかったり。1+1=2ですが3-1=2でもあり、4/2=2でもあります。答えを同じにするだけの計算であればいくらでも都合の良い初期条件を揃えられるのです。ゆえにこの説は不採用。……いえ、本当は北半球の低地が海でないとお話が成立しなくなってしまうというだけですが。
 オリンポス山からタルシス三山一帯は反対側にあるヘラス平原を作った巨大衝突の衝撃波が惑星を貫き火山活動を誘発したのだ、という思いつきも書きたかったのですが『レッドマーズ』ですでにそのアイデアは使用済みでがっかり、ということもありました。火星での化石発掘物語も私が知らないだけで、メジャーな作品ですでにこってり描かれた後なのかもしれません。

 蛇足ですが。
 『イシノネ』掲載と同時に2chの日本SF新人賞■小松左京賞 Part.2スレに告知をしてみました。結果、この数日で2chから58人の方が飛んでいらしたようです。多いのか少ないのか。

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