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『黒十字サナトリウム』中里友香

『黒十字サナトリウム』
中里友香
徳間書店
2008.9.30
2100円

★★★★☆

 表紙というか帯というか、徳間のSF赤本シリーズは不思議な装丁なのですが、幅広帯のイラストが内容をよく表しておりました。表紙買いおっけー。文章はたまに「単語の意味が微妙にずれてない?」と思うこともあるのですが、ぐいぐいと引き込む力があります。饒舌な文体で描かれるイメージは鮮やか。最初の一ページで「いける!」と手応えがあるはずです。日本SF新人賞の受賞作でこんな印象を持てたのは初めてかもしれません。
 文体は文学的、というか時折読んでいる者を置き去りにしそうな形容が現れます。が、そのぎりぎりの所を見極めている感じでとても読みやすく心地良い文章なので心配は無用。

 ジャンル的にはSFではなくゴシック小説だと思います。さらに細かいジャンルを書くとネタバレになりそうなので伏せますが。著者が自ら『SF Japan 2008 SPRING』掲載の受賞コメントで表明しているように萩尾望都の影響の窺える雰囲気で、かつゴシック。ホモとロック抜きのアン・ライス的世界、かな。冒頭こそ日本でのエピソードですが近代ロシア世界が舞台となります。登場人物たちのネーミングから察するに、著者はソ連時代のクラシック音楽も愛しちゃってるのかもしれません。BGMにはショスタコーヴィッチやプロコフィエフ、ハチャトリアン、ストラヴィンスキーが合う気がします。キラキラした金属弦のヴァイオリンとロシア音楽ならではの金管の響き。そんな感じです。そうそう。ふと思ったのですが、ヒロインのレイナには黒いファーの帽子が似合いそう。メーテルの被っていたような。

 文章に引き込まれても、キャラクターに魅せられても、たぶん最後のオチは賛否両論となるでしょう。私は背筋にぞわりときて「おおお!」となったのですが、唐突と感じる人もあるはず。ミステリのようなかっちりとしたロジックでの仕掛けではないです。

 巻末には『SF Japan 2008 SPRING』に掲載された短編「逆十字入門」も収められています。

 この著者の次の話もぜひ読んでみたいと思ったのでした。

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