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『宇宙生物学入門』P.ウルムシュナイダー

宇宙生物学入門―惑星・生命・文明の起源
P.ウルムシュナイダー著 須藤靖他訳
シュプリンガー・ジャパン
4095円
2008.7.8

★★★★☆

 宇宙生物学。
 なんてアヤシゲな響きなのでしょう。アメリカはエリア51に宇宙人を隠している!みたいなイメージの湧いてくるタイトルです。サブタイトルもトンデモ本が科学的アプローチを装うかのような胡散臭さに思えなくもありません。
 でも、この本はマジメな科学解説書です。東大理学部四年で行われた "Intelligent Life in the Universe" を読んだ輪講をまとめた物だそうです。地球物理と天文と生物の最新の知識が詰め込まれた硬派な本でした。
 文章はシンプルかつ明晰で、平易とは言えないものの十分にわかりやすい良い訳でした。

 内容的には――タイトル通り宇宙生物学入門に必要な知識一式をまとめた感じです。天文、地質、惑星物理、生化学、進化論、文明論。多様なジャンルに渡る知識をひとまとめにした本で、数式は登場しませんが理学系学生向けの印象です。一般向けの「なんとなく雰囲気でわかればいい」科学解説書ではなく、専門外のジャンルに手を伸ばす研究者のためのガイド役、って感じでしょうか。
 書かれている内容はほぼ最新ですが、新発見や新理論を提唱する本ではないのでこの本で取り上げられている各ジャンルに通じていれば新たな知識は得られないと思います。が、境界領域は知識がつぎはぎになりがちで全体のつながりがなかなか見えてこないので、『宇宙生物学入門』のような本でしっかり整理し直すのも効果的な気がします。

 お勧め、ではあるのですがこの本を読み終えて思ったのは「科学や技術はやっぱり国家主義的なんだな」でした。ドレイクの方程式にまつわる説明で文明の存続期間について語られた中で「人類の無責任な側面が正しく管理されることがなければ人類は滅亡する」と説き、人類の自滅的な性質を改造すべきだと述べています。個よりも種として人類を見たときの生存方法を優先して考えてしまうあたりが科学のおもしろさ、ラジカルさではありますが、その思考は結果として全体主義。あまりにも傲慢な科学の姿にうっとりするくらいSFを感じます。(人類改造自体はネタとしてはありきたりなのだけれど、お堅く地球物理や生化学の解説がえんえんと続いてきた末なのでインパクトがある)

 少し弱いのが知性や文明、社会に関する項目。
 まだまだこれからのジャンルということなのでしょう。

 読み応えのたっぷりとある本でした。

 後日『アストロバイオロジー』という同ジャンルの本を読んでこちらの本の特徴がはっきりしました。化学進化に注目した『アストロバイオロジー』に対し、こちらの『宇宙生物学入門』はハビタブルゾーン探しが中心に据えられていた印象です。境界領域の本は著者の専門によって印象がかなり違ってくるので読み比べも一興。(2008.11.16追記)

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