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『最強の狙撃手』アルブレヒト・ヴァッカー

最強の狙撃手
アルブレヒト・ヴァッカー著 中村康之訳
原書房
2007.4.5
2100円

★★★★☆

 「酸鼻」

 この本の内容を一言で表すならばそれです。『極大射程』(スティーブン・ハンター)のボブ・リー・スワガーもかくやと思われる狙撃手ヨーゼフ・アラーベルガーの伝記なのですが、戦地での遺骸写真も多く掲載され、文中での表現もかなりどぎついものでした。傑出した狙撃手の話ではあるのですが、英雄譚というにはむごい描写も多く、戦争の痛ましさが印象に残る本でした。

 小説と違うのは戦果は驚異的であったのに射撃技術自慢がないこと、かな。いえ、戦車のハッチから一瞬だけ顔を覗かせた敵兵を逃さず狙撃したり、迫り来る装甲トラックの5cm×30cmほどの小窓を狙った狙撃をしたりと十分に驚異的な技術が示されるのですが、スナイパー映画によくあるような800m先の標的を……の類の遠距離狙撃逸話はなく、伝記中に登場する最長距離狙撃は600m程度のようです。これだって十分にスゴイですが。この狙撃兵のスゴさは射的能力ではなくて的確な判断力に思えます。アラーベルガーはごく普通の機関銃手として前線に投入され、とくに狙撃の訓練を受けたわけでもないのに独力で凄腕の狙撃手へと育っていきます。生き残るための戦闘勘のようなものが群を抜いていたように読み取れました。この本は、狙撃手云々がメインテーマではなく傑出した生存能力を示した兵士の記録、かな。

 原題は"Im Auge Des Jägers"。
 『猟兵のまなざしのなかで』。
 こちらの方がずっと内容に即していると思います。

 手に取ってから一息に最後まで読み通してしまいました。

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