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『世界の名機 フライト・インプレッション』後藤武

世界の名機―フライト・インプレッション
後藤武
ネコ・パブリッシング
2005.10.10
2200円

★★★★☆

 飛行機マニアはけっこういるようで、飛行機本も書店で割に見かけます。月刊の雑誌なんかもあるみたいですね。
 でも飛行機関連の本は写真や来歴が紹介されることはあっても操縦した感想が綴られることは滅多にありません。
 四輪や二輪の雑誌では当たり前の試乗レポート。その航空機版であるこの本はかなり珍しい内容ではないかと思います。

 P51ムスタング、カタリナ飛行艇、バッカニア、F104スターファイターetcetc……。往年の名機がずらり。本当は第一次大戦時代の飛行機の本が読みたいと思って探していたのですが、その手の本は図鑑的な本か撃墜王の伝記になってしまうようで、飛んだときにどういう感じのする乗り物なのかがピンと来ずにおりました。ところがこの本を見つけてぱらぱらとめくってみると試乗記ではないですか。複葉機のレポもいくつかあります。これは読まねば!と。

 面白いです。この試乗レポを書いている人はオートバイ雑誌でインプレッションを書いている人でもあるそうで、乗り物の「ここが面白い、操縦していて楽しい」みたいなことを書くのに慣れているらしく撃墜王の手記よりも身近に理解しやすい印象です。操縦技量はもちろん実戦のファイター・パイロットたちには遠く及ばないのでしょうが、知りたかったのは空を飛ぶ感触なので適材なのでしょう。
 なんて羨ましい本なんだろう。

 誤植が目についたとか、文章が少し単調で一気に読むと読み疲れしてしまうとか、傷がないわけではないのですが、実際に空を飛んだ人の手で書かれた印象に勝る物はないと思います。コンバットフライトスクール(空戦ごっこを楽しませてくれる飛行訓練)なんてめちゃくちゃ楽しそう。本物の弾が飛んでこないオトコノコの戦争ごっこ。ライターはおっさんですが、こんなことをしている人種のオツムは少年と相場が決まっています。すごく贅沢。いいなあ。
 写真もいいカットが多いです。併飛行させたもう一機からカメラマンが撮影している光景が多いのですが、カタリナ飛行艇の飛んでいるシーンの素敵なこと。雲海に上下を挟まれ、天使の梯子が射す中に飛ぶムスタングの格好いいこと。カラーページも要所要所に配されていて効果的です。

 「飛行機って操縦したら楽しそう」と思える人にお勧め。
 エルロンとかラムシェバックとか一般には馴染みの薄い用語が飛び出しますが、あまり気にしなくても空気感は伝わると思います。飛行機マニアでなくても楽しめるはず。

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