« 招き猫@豪徳寺 | トップページ | 『ダ・ヴィンチ』2009年9月号 »

『アンブロークン アロー 戦闘妖精雪風』神林長平

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風
神林長平
早川書房
2009.7.26
1680円

★★★★☆

 ぞくぞくきました。

 待望の戦闘妖精雪風の第三部『アンブロークン アロー』です。330ページ弱の厚手のハードカバー。表紙からしてカッコイイです。読み始めてすぐに引き込まれました。冒頭はリン・ジャクスンの話から始まります。ロンバート大佐からの手紙が届いた、というエピソードから。
 雪風シリーズは飛行機物です。初代の『戦闘妖精雪風』は『エリア88』と並んで飛行機ファンに愛されたフィクションの代表となり、二作目の『グッドラック』も飛行機分は多少減りましたがSFファンの支持の厚い作品でした。そして第三部『アンブロークン アロー』は……神林節全開。
 一作目の無印雪風のテーマは航空機+機械知性でしたが『グッドラック』ではコミュニケートがテーマとなり、この『アンブロークン アロー』では実在と知覚の話となりました。飛行機は飛びますがもはや空戦は脇へと追いやられ、ある意味神林作品としては異色であった雪風が本来の神林ワールドへと取り込まれていった物語であると思います。

神林長平はジャムである。

という話なのだと、これを書きながら直感しました。
 特殊戦も雪風も零もジャム的存在と化していて実質的には雪風世界においてはジャムの侵略は完了しているようにも感じられました。戦闘機物から言葉遣い師の世界へのシフトは神林長平というジャムによって浸食されてしまった結果に思えます。でも、どちらも元々神林長平の世界であるわけで。

 ストーリーや設定的には紛れもなく雪風シリーズの続編ではありますが、読んでいても続編である実感はあまりありません。でも、面白かった。現代の科学知識を足がかりに徹底的な内観によって得られたものなのだ、と現代SFを感じました。「複合生命体」という部分に焦点を当ててきたアニメ版の『雪風』への返信も多分に含まれていたようです。

 なんとなく『敵は海賊』シリーズのヨウメイとロンバート大佐の姿が重なった話でもありました。

 タイトルの『アンブロークン アロー』は毛利元就の三本の矢の逸話をかけたものかと思うのですが、もしそうであるとしたら「折れないための三要素」ってラストシーンのあの三つとなるのでしょうか。でも、二つになっちゃったっぽいし、と先が気になります。

 第四部はいったいどんな形になって読者の前に現れるのだろう。

|

« 招き猫@豪徳寺 | トップページ | 『ダ・ヴィンチ』2009年9月号 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。