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2009年12月の15件の記事

2009年を振り返って&拍手御礼

2009年のアクセス状況統計

 アクセス数ランキング。表中の数字はPV。

VAIO type P 8011
ScanSnap 7413
小説ライブラリ 1642
SR-001MK2 1553
Zaurus 1238
電子辞書 960
百合関連 899
あかねいろ 773

 やはり製品レビューが強いようです。コンテンツの柱であるはずの招き猫は相変わらず不人気記事crying Googleの検索で「招き猫」と検索しても引っかかりません。SEO的にまずいことでもしているのでしょうか……。
 Zaurus関連の記事は今年後半になってめっきりアクセス数減速。
 書籍関連のレビューはアクセスが分散しているので統計にはうまく載ってこないのですが安定して検索から読みに来ていただいているようです。『宇宙細胞』は人気検索ワードでした。
 意外に多かった検索ワードはFlashFire。あまり役に立つ記事ではないので訪問していただいた方には申し訳ない気が。

 本の感想記事はもっといっぱい書きたかったのですが、読みっぱなしで書ききれていないものも多かったです。化石本や火星本の新刊が少ない年だったということもあるでしょうか。

拍手メッセージへのお返事

U様
 北海道は空気、空、季節の変化、と何か特別な感じがして大好きです。『動物のお医者さん』で道外出身者達がなぜか北海道に帰省してくるシーンに大納得、みたいな。作中時期は晩秋で終わっていたので真冬がありませんでしたが厳冬期の描写にもチャレンジしてみたいです。

 拍手機能を含め、皆様からのレスポンスは何よりの励みになっています。大感謝です。

 さてと。
 これから二年参りにでも行ってこようと思います。

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『物語 バルト三国の歴史』志摩園子

物語 バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア
志摩園子
中公新書
2004.7
861円

★★★☆☆

 バルト三国の歴史についてまとめた一般向けの本です。類書はずっと専門的な内容のものが多いようでこれが数少ない入門書になりそうです。タイトルに「物語」とついてはいますがエストニア・ラトヴィア・リトアニアの歴史を淡々と綴った感じで物語として読むのはちょっとつらかったかも。
 これらの三国がそれぞれ国家としての意識を持ったのがロシア革命から大戦間にかけての時期で、十字軍の侵入を受けてヒンドゥ的な土着信仰からキリスト教化され、ドイツとロシア、ポーランド、対岸の大国スウェーデンに振り回された混沌とした歴史はすっきりと整理しがたい感じです。バルト三国という括りで見ようとするとたぶんこのあたりはどうにもならないのでしょう。「すごくややこしい地域」というのがわかっただけで収穫だったかも。
 この中公新書の「物語」シリーズは他にもいくつか出ているようで読んでみたくなりました。

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BSマンガ夜話 第37弾 志村貴子「青い花」

 12月24日に放送されたBSマンガ夜話は志村貴子の 「青い花」を取り上げていました。

 夏目房之介が冒頭でいきなり「わからない」と言い出して波瀾含みの展開となっていましたが、これはゲストの女性にすぱーんと魅力の核を言わせたかったのでは、と思いました。わからないと言いつつ夏目房之介は確信のある答えを持ってはいて、でもゲストも他のレギュラーも欲した答えを吐いてくれなくて……というちょっと切ない回だったのではないかと思います。

「百合の恋愛漫画に見えますが、
実は少女を描いただそれだけなんです」

なんて答えをゲストの女性達に期待していたのではないかな。
 『青い花』には同性愛を至上のものとする視点も少しだけ織り込まれていたりしますが、それそのものが少女の感性である気もします。同性愛者としてのフミ、思春期特有の感情で同性に思いを向ける京子、王子様キャラでありながら女々しい杉本先輩、ノンケならではの残酷さで「よしよし」とフミを抱きしめるあーちゃん。恋愛漫画であればヒロインは意中の相手とくっつくのは既定のはずですが、きっとこの漫画はキャラクター個々の少女としてのゆらぎだけがあってフミ×あーちゃんの関係の行方はそのゆらぎの彼方で定まっていないんじゃないかな、と。イメージとしての“少女”のサンプルが並べられている群像劇――吉田秋生『櫻の園』に近い話のような――。
 なんてことを番組を眺めながら思ったのでした。討論番組は見ている方もその中に加わっている気分になりますね。

 途中、司会役が「小説でこの空気感はありえないの?」と言っていたけれどあるよ!と叫びたかったです。吉屋信子(ちょっと饒舌か)、川端康成の『乙女の港』(再刊されました)、恩田陸、梨木香歩(風というよりは水の気配かも)。行間を空白で空けずとも、びっちりと書き込んだ文章の中に“風”や“木漏れ日”、“間”、“空気感”を感じられる作家はたくさんいるはず。むしろ『青い花』のような百合要素を持った少女漫画は少女小説の系譜で眺めた方がしっくり来るんじゃないかな。

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『ぷあぷあLIPS 第2巻』後藤羽矢子

プアプアLIPS 2
後藤羽矢子
バンブー・コミックス
2009.12.26
680円

★★★★☆

 ビアンの店長のいる宝石店につとめる貧乏娘・ナコのコメディ四コマ第二巻。店長のレンはもうすっかりナコの虜。でも相変わらずおニブのナコはよくわかっていなくて……と思いきやちょっと気にし始めてるかもしれない二巻目でした。明るく大らかな感じの貧乏話。貧乏も同性愛ネタも軽く笑って楽しめます。四コマはこういうあっけらかんとした雰囲気が読みやすいな。

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『二人のひとりあそび』森奈津子

二人のひとりあそび
森奈津子
徳間文庫
2009.12.4
600円

★★★☆☆

 2005年刊の『倉庫の中の美しき虜囚』に「姉の花、妹の指」と「二人のひとりあそび」を加えて文庫化したもの。

 お目当ての百合物、というよりはレズビアン物は全九篇の中の「彼女への供物」「少女と少女」「姉の花、妹の指」「二人のひとりあそび」の四編。異性愛物でもSM的な要素や男性同性愛的な要素が登場するので一般的な官能小説と思って読むと「あれ?」となってしまうのでご注意を。

 気に入ったのは「少女と少女」と「二人のひとりあそび」。森奈津子のひとりあそびネタの話はどれも面白くて『姫百合たちの放課後』に収録されている「花と指」や『先輩と私』もぐっときたのでした。『SFマガジン』の少し前の号に載っていた短編もやはり同じテーマながらSFしてて面白かったです。

 部分的に苦手なネタもあったのでは少なめとなりましたが森奈津子ファンには楽しい一冊のはず。

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デスクトップPC故障

 年末ぎりぎりになってデスクトップPCが壊れてしまいました。

 ちょっと前からフリーズするようになっていて「Thinkpad買ったばかりなのに今壊れてくれるな~」と思いながら騙し騙し使っていたのですが、ついに完全に起動しなくなりました。予備パーツを色々とっかえひっかえしてどうやらマザーボードの故障らしいと判断。とりあえずデータだけでも救出しようとUSB接続のSATA用HDDケースを買ってきました。2000円弱。安っ。似たようなケースは色々あったのですが、機能的な差もわからなかったのでテキトーに。


タイムリー GROOVY 3.5とVAIO type Pタイムリー GROOVY 3.5

 とりあえずの印象は

  • 使用中にどついてクラッシュさせそう
  • 3.5inchHDDは音も振動もけっこうあって邪魔
  • ケーブルが邪魔
  • アルミ部分は質感悪くないけどプラ部分が安物丸出し
  • インジケータが電源パイロットランプのみでしかも後面のみ
  • 電源ケーブルが抜けやすくてヤバイ
  • 「ハードウェアの取り外し」をしてもやっぱりHDDの回転が停止しない

 VAIO type PとThinkpad R400のどちらからもデータが利用できるといいな、と感じたので近々NAS(LAN接続HDD)でも導入してみようと思います。

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『コミック百合姫S 2010 Winter』

コミック百合姫S 2010年 02月号
一迅社
2009.12.18
880円

★★★★☆

 今号は530ページ超。付録のカレンダーもついて女性誌みたいに分厚くなっておりました。

表紙 椿あす

 カレンダーのサムネイルに隠れて顔の部分くらいしか見えないです。

ピンナップ ふゆの春秋

 好みの絵柄。pixivで公開されていた絵もイイ。

付録カレンダー

 プラケースに入ってて葉書大。イラストもいい感じ。これは『百合姫』本誌全プレのカレンダーも申し込んでおけば良かった気が。

「flower*flower」石見翔子

 やっと連載再開だ~。朱はドーランで色が抜けていると男の子っぽさが増しているような。今回は夜祭り篇。うひー。またもやクリフハンガー。割とほのぼの回だったのですがやきもきする場面で見事に「つづく」。作者はたぶんS。

「ふ~ふ」源久也

 うわわ。なんじゃこのげろ甘な恥ずかしい雰囲気は~。読んでいて恥ずかしくなってきて思わず雑誌を閉じてしまった。恐る恐るまた読み出してもやっぱり恥ずかしい。

「此花亭奇譚 第3話」天乃咲哉

 招き猫が。やっぱり百合には招き猫です。関係ないけど。今回は二話構成で後半はこれまで見た目愛らしく実は意地悪っぽかった蓮のお話。

「幼馴染と呼ばないで!」黒柾志西

 新連載。廃部寸前の超能力同好会で楽しくいちゃいちゃの幼馴染二人+同好会を潰さんとするやはり幼馴染の風紀委員。初回から何やら慌ただしい展開に。

「絶対少女アストライア」東雲水生

 こちらも新連載。雰囲気は『百合姫』本誌の猫目堂シリーズより『カルボナードクラウン』に近いかな。サブキャラたちの縦ロール度高め。一回目から起伏のある展開。

「HONEY CRUSH」椿あす

 おわ。新キャラ二人。片方が仏教系なのですがニーソ型足袋にミニスカ法衣は新しいかも。しんみりしそうな展開の香りも。

「発情2谷村まりか

 小学生時代に偶然のアクシデントでキスしてしまった女の子二人。それ以来ずっと中学?高校?に入っても変に意識してしまうのだけれど……。「お漏らし」とか「発情」とか際どい系のキーワード設定だけれど際どさ攻めではないほのぼの作風の印象。

「死神アリス Chapter:3」いづみやおとは

 今回はひなげしvs.過去のしがらみ篇。

「会長と副会長」袴田めら

 読み切りから展開した感じなので何話目なのかがよくわからなくなりつつありますが。前号で「来る者は拒まず」の博愛主義?を宣言した会長にやきもきする羽目になる副会長、なのだけれど……。と逆接の展開を期待してしまいます。どうなる次号。

「カシオベア・ドルチェ dolce10」髙木信孝

 アンナもてもて。なんとなくそんな気がしていたけれどこれは一種のハーレム漫画、と今更ながら思ったのでした。基本はちゅー。

「ゆるゆり 23~27」なもり

 合わせて60ページ。今号も季刊「ゆるゆり」。

「ふたりとふたり」吉富昭仁

 このシリーズ、今回も濃厚なラブシーンがあって「Wildroseでもいいんじゃ」という気も。乳房や性器へ直接の愛撫描写がないので一般映画あたりでも普通に出てくる雰囲気濡れ場ではあるのだけれどこの傾向に掲載作がシフトして『チャンピオンREDいちご』みたいな雑誌になったらそれもヤだなぁ……と思ってしまいます。お話自体はとても良い感じで好みなだけにちと心配に。

「南波と海鈴 Vol.26」南方純

 百合漫画誌をネタに争う二波と海鈴。最後うまく落としたなっ、て感じ。

「特盛りプリンを持ってこい」すこやか

 ♪や~きゅう~や~るなら、なノリで始まるメイドのリクルート話。コミック大賞から出てきた人はそれぞれ独特の空気があっていいなぁ。

「コノハナリンク act.8」玄鉄絢

 なぜかプロレス。そして8話目で作中時間が二日?しか進んでいないらしいことに気づきました。登場人物も多いのでこれは単行本になってから一気読みするとすっきりするかも。

「ひめちゃんはやっぱりてれやさん」珠月まや

 「つづきはコミックスにて」って見事なお預けっぷりじゃー。

「apocalypse Chapter:3」倉田嘘

 そう! MMORPGはコミュニケーションゲームだよね、と思わず頷いてしまった今回の話。くーのゲーム機が壊れてしまってパーティはどうなる、という展開に。

いけだたかし×倉田英之20,000文字対談

 今回の目玉記事はコレ。読み応えたっぷりありました。

 今号は乙ひよりがいなかったのが寂しかった。「オレンジイエロー」楽しみにしていたのですが。次号はさらに新連載が二本加わる予定のようです。

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招き猫@豪徳寺

おんぶ招き 年の瀬が近づいてきました。年末年始には招き猫も大繁殖の季節を迎えるのでそろそろ奉納所も整頓されちゃうかな、と見てきました。

 おんぶ招き。

御稲荷さんvs.招き猫 狐面のアクセサリは並べてみると豪徳寺タイプの招き猫と配色が似ているかも。

綱渡り彦にゃん

 久々に彦にゃん見ました。

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『百合姫Wildrose Vol.4』

百合姫Wildrose 4
一迅社百合姫コミックス
2009.12.18
890円

★★★☆☆

 百合姫陣営のえっち系アンソロジー『Wildrose』の四巻目。なんだかんだいいつつ毎号買ってたり。今回は秋山こいと、井波はじめの二人が百合姫関連では初お目見えかな? 性描写がある、というかメインなのでその手のものに免疫のある人向け。

「あたためますか」秋山こいと

 自主的な補習で居残りをした委員長とつらら。肉まん(カレーまん)をネタにおもしろおかしく盛り上がります。つららがなぜか長老喋り。BLをメインに描いている人のようですが、サイトの男性イラストとはかなり雰囲気が違いました。

「あのコだけには秘密のコト。」井波はじめ

 ボーイッシュでそっけない晶とアイドルタイプの泉深。泉深はイズミの読みでいいのかな。この作者もBL畑からの参入のようです。pixivなどを見ると男性キャラはシャープな顔立ちでGLのWildroseでは印象もかなり違います。

「私の彼女」三国ハヂメ

 先日、同じ作者の成年コミック『百合色螺旋』を買ってみたのですがWildroseではえっち描写があっても行為そのものよりも二人の関係を描いていて「エロと言ってもけっこう差がある」と思ったのでした。百合姫本誌読者にはWildrose的なエロの方が断然楽しめる気がします。

「聖夜のアガペー」森島明子

 ミッション校を舞台にしたらしい二人の話。クリスマスのミサの後に聖堂に居残ったのだけれど「天使のような愛香を犯します」と強引に迫るリズ。森島明子はこういうシチュも描けるのか、とちょっと意外だったかも。後ろ手緊縛萌え。

「私たちのミライ計画」南崎いく

 ペットショップのトリマーと女子高生の話。キス止まりの関係にやきもきする主人公。この作者の話はストレートにどーんとぶつかるキャラが気持ちいいです。ちょっと粗忽者というか乱暴者属性があるのも好き。

「愛羅武勇マイガール」高橋依摘

 わは。一迅社モバイルのシリーズで万葉百合を描いていた人の暴走仮名タイトル。最近の百合姫は本誌ともども懐ネタに振ってきますね。族の悪行やら卒業リンチやらが妙に可愛くアレンジしてあったりしてポップというかギャグというかのノリも楽しい。

「シュガーコンプレックス」青木光恵

 少女漫画に付きもののダイエット話。キメの一言で思わず噴いた。作者らしいざっくばらんな雰囲気。

「花の刺繍 蜜の針」柚葉せいろ

 掲載を重ねるごとにうまくなってるし、百合姫本誌に初登場したときのあの独特の雰囲気も保っていて応援したくなる感じ。少女らしい幼さの残る緊張した身体のラインの雰囲気が出てて好感触。百合姫本誌でもまた読みたいな。

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『アップル・ディ・ドリーム 2巻』城之内寧々

アップル・ディ・ドリーム 2巻
城之内寧々
一迅社 百合姫コミックス
2009.12.18
860円

★★★★☆

 1巻同様メタリックで星の飛んでいるキラキラカバー。コミック百合姫掲載分+小百合姫掲載分+描き下ろしで百合姫本誌の分しか読んでいなかった身としては初見のエピソードがいくつもあって嬉しかったです。あとがき漫画では衝撃?の事実が! すごく納得できました。

 『乙女戦士ラブリー5』では駒割が大きめで服が細かく描き込まれているのが一目瞭然でしたが、こちらの『アプディ』でも四駒で引き構図ながら服のバリエーションにはかなり力入ってます。『アプディ』デザインの実物服、見てみたいな。

 描き下ろし分での「そしてそれから」のもさもさパーマの店長、イメチェンしすぎて笑ってしまいました。雑誌連載分しか読んでいない人は読んでおくべし!

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『プシスファイラ』天野邉

プシスファイラ
天野邊
徳間書店
2100円
2009.10.31

★★★★☆

 Amazonの商品写真は巨大帯部分がなくて印象が別物ですね。

 イントロダクションを一ページ読んで「読みづらっ」と思ってしまいました。指示代名詞(こそあど言葉)多めです。言葉が硬めです。三十ページほど読み進めて「注釈多すぎ」となりました。でも会話が並ぶ辺りまで読むと慣れてくることもあって読みやすくなります。
 これはいける!

 鯨による海中音声ネットワークで構成されるwebのお話。現実のwebを「実は鯨が先に生体的に構築しちゃってたよ、というアイデアで、鯨たちのネットワーク技術を中心に話が進みます。一言にすると……『攻殻クジラ隊』? 警察モノではないですが。

 表紙(帯)からして鯨度が高そうですが

例えばクジラの親子関係にしても現実のクジラの生態系とは大きく乖離しているわけですよ。

『SF Japan 2009 Spring』日本SF新人賞最終選考会
図子慧

と、図子慧による座談会評のようにあまり鯨っぽくないです。

 ではどういう話なのか、というとかなり擬人化された――というよりも水中で暮らす技術文明のない人類にデジタルネットワークを持たせてみたらどうなるかな、と現実のweb技術を丸ごと当てはめてみた感じです。web技術の解説書的な一面がありました。
 一方でこの話は人類と鯨文明とのファーストコンタクトの話でもあるのですが、このコンタクトの部分があっさり気味。コンタクトが描かれるのがお話が2/3ほど進んでからで展開も加速するためにシナリオ的になります。描写の中心はあくまでもネット――タイトルの「プシスファイラ」。現実の技術の先に描かれる個と全のイメージはネットワーク論・文明論的なアプローチとして意欲的ではあるのですが、1980年代のサイバーパンクが描いたネットワーク世界のようなイメージで「妥当だけどもう一声欲しい」と感じたのでした。
 説明描写が欲しかったのが鯨たちの基本通信機能。完全にデジタルな、コピーしても劣化しない信号をやりとりする能力があるようなのですが、言語の獲得とデジタル通信の獲得とのギャップがうまく埋まらない感じでした。また生体ハードウェアとソフトウェアの分離点が不明で互いに垣根を越える「柔軟なハードウェア」が設定されている気がするのですがその部分ももちょっと説明が読みたかった。

 でも、これは面白い。誰にでもお勧めできるタイプの小説ではありませんが、電子工学を学んだらしい著者ならではの知識が生かされた技術・文明・コミュニケーション小説です。SFの新人賞にはふさわしい触感を持った話であると思います。

 次回作はもうちょっと読みやすいといいな。

 著者のwebサイト「SphereCommune」もあるようです。

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世田谷ボロ市2009年12月

20091216_01 12月のボロ市に行ってきました。
 平日と言うこともあり、1月のボロ市と比べて人も少なく歩きやすかったです。代官屋敷近くの公園では例年通り代官餅に行列ができていました。

 左画像はボロ市では割とありふれた古物商。一番手前のレジスター、よく見ると「ZENINARU REGISTER」と銘が入ってます。

20091216_02

 画面左端がちょっと欠けてしまいましたが「フランスの蚤の市」。ボロ市も国際色豊かに? 売り子さんもフランス人みたいです。

20091216_03

 こちらはボロ市ではお馴染みの本物のボロ。単なる端切れもあれば着物もあります。

 トップページ下の方には昨年以前のボロ市の写真もあります。

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『非線形言語モデルによる自然言語処理』池原悟

非線形言語モデルによる洋なしのミルクプリンパルフェ非線形言語モデルによる自然言語処理―基礎と応用
池原悟
岩波書店
2009.6.25
6090円

★★★★☆

 難しかった。

 非線形言語モデル。なんかもうこの単語だけで難しそうな、格好良い雰囲気が漂います。

 例えば「李下に冠を正さず」という文があります。これは「紛らわしいことはしない方がいい」という意味ですが「李/下に/冠を/正さず」の各々の語の意味からは文意は理解できません。成語としての意味を知らなければ通じないような、そんな言葉の使い方というのは意外に多い。それが非線形――全体は要素を組み合わせた延長にあるものとは限らない、ということになります。
 もちろん言語の中には線形な面もあって「このバラは綺麗です」といったように辞書で引いた単語の意味を文法で解釈すればきちんと意味が生じ、通じる文もあります。そんな線形の要素は機械翻訳でもそこそこ扱えるようになっているそうです。
 じゃあその非線形の部分をきちんと意識して何とかしよう、というのがこの本の内容なのですが……。う~ん。この本は理系メソッドのない人にはウケが悪そうです。andやorといった記号論理学の基礎が必須。かといって理系の訓練を受けていても「言葉で言葉を説明する」言語学のスタイルに慣れていないと混乱してしまうはず。ソシュールやチョムスキー、認知言語学についてのアウトラインくらいは知っておかないと「ナニイッテンダ」と取り残されてしまいそうです。(取り残されました)

 とっつきにくさは言語学の本の共通点かもしれません。第Ⅰ部第3章あたりまで読んでようやくこの本のスタイルに慣れてきます。同時に具体例が増えてきて内容が実感できるようにもなりました。書かれていることも突飛な部分はなく、自然な考え方で構成されているので説得力も高いです。著者は翻訳システムを通じて意味解析・意味理解に迫ろうというアプローチであるようで、本の中で想定されている「自然言語処理」も翻訳を主眼に置いているようです。

 脱線ですが。
 たぶん翻訳というのは入力と出力でともに「正解の文章」が存在するために言語処理の素材として評価しやすいのだと思います。一方で最近では初音ミクから発した、文章→発音、という過程が脚光を浴びています。現時点のミクは「頑張ればそこそこ歌う楽器」ですが、意味を扱う言語処理を通すことで初めて真に歌う機械=ボーカロイドになり得るのではないでしょうか。現時点での「非線形言語モデル」でも意味解析には取り組んでも意味理解には手が届かないようですが、可能性を感じました。文字と音声とで形が違うので評価は翻訳より難しくなりそうなものの、内観のみで評価せざるを得ない人工知能よりはずっとマシなはず。

 好感が持てるのがGoogle翻訳的な統計処理による言語処理ではなく、意味にきちんと取り組もうとしている姿勢。統計は実用的ですが世界の真理を明らかにする科学の目的からは離れてもしまうわけで、真っ向からロジックを追求しようという姿勢に「これが科学なんだ」と感心したのでした。

 文章のとっつきにくさに途中で「ナニコレ」とポイされてしまいそうなこの本ですが、挫折しそうになったらせめてP.248-250の「パターン翻訳への適用例」だけでも眺めてみてください。多くの言語学の本が理屈だけでデータ処理の実践を伴わないこととは違い、この本は実践された結果があります。結果を見れば頑張って読もうという気になるのではないでしょうか。

 面白い、と素直に言えるほどきちんと内容を理解できた気はしないのですが、大いに刺激を受けました。ちょうどGoogle日本語入力が話題になった時期でもあり、一太郎/ATOK2010が発表になった時期でもあります。苦しみながらも楽しく読めました。

 著者らの主催する研究会のサイト「鳥バンク」ではデモプログラムに触れることができます。

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『死闘ケーニヒスベルク』マクシム・コロミーエツ

死闘ケーニヒスベルク―東プロイセンの古都を壊滅させた欧州戦最後の凄惨な包囲戦
マクシム・コロミーエツ著 小松徳仁、高橋慶史訳
大日本絵画(独ソ戦車戦シリーズ)
2005.12
2625円

★★★★☆

 淡々とした戦闘記録でした。

攻勢作戦開始時点の第3ベロルシア方面軍は総勢479,331名の将兵と16,479挺の機関銃、5,078門の迫撃砲、2,080門の対戦車砲、4,496門の野砲、1,578両の戦車および自走砲を保有していた。それに対するドイツ軍部隊は、将兵135,480名、機関銃8,174挺……

『死闘ケーニヒスベルク』p.25より

 戦場のロマンとか武勇譚は一切なし。1945年からはじまったヨーロッパ東部戦線でのソ連軍の大反攻を主軸に情勢を上記引用部のように淡々と描いていきます。まさに資料本。全160ページ程度のB5版ソフトカバーであまり厚い本ではありませんが2625円。紙質が薄コート紙で多用されるモノクロ写真の印刷も良く、8ページのカラーには独ソ両陣営の戦車やトラックの側面図イラスト、舞台となった東プロイセンの地図などが収録されています。なるほどこれは高めの本になってしまうはず。長期保存を前提とした資料という印象です。「独ソ戦車戦シリーズ」というのはソ連(ロシア)のグラスノスチ以降の情報公開で得られた資料によるものだそうです。この本も掲載写真はソ連側の撮影した物。撃破された戦車類中心で、本文の記述もソ連側からの東プロイセン攻略を追っています。
 タイトルになっているケーニヒスベルク包囲戦も淡々と戦況が描かれますが、そこに記された万単位の死者や××部隊殲滅の言葉が重いです。陥落直後のケーニヒスベルクの写真も多く収められていて中世から築かれてきた強固な堡塁がぼろぼろになっている光景に戦闘の激しさを感じました。

 巻末に収められた訳者あとがきにはドイツとソ連双方がなぜケーニヒスベルクという古都に拘るのかが短くまとめられており「なるほど」と思ったのでした。

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Thinkpad R400

 据え置きのノートPCを買い換えました。Thinkpad R31からThinkpad R400に。

CPUCerelon900
メモリ2GB
ディスプレイ14型 WXGA+ LEDバックライト
HDD60GB
OSWin7
アブリOffice2007

 こんな感じ。49,800円の最廉価モデルのディスプレイをWXGA→WXGA+にしてOfficeをつけました。計7万円ちょっと。Lenovoの直販サイトでのカスタマイズモデルです。注文から手元に届くまで約三週間。

Thinkpad R400 これまで使っていたR31はボディを持ち上げるとギシギシ感があったり、キーボードが少し浮いてる感じがあったのですがR400は今時のモデルらしくかっちりした手応えになりました。全体にRシリーズの後継というのがよくわかる作りで7年程頑張ってくれたR31くらいまた長持ちしてくれるといいな。R31は先月辺りから挙動不審で「ログインしたらユーザ環境空っぽ」とか「起動途中でコケる」とかし始めました。

 Thinkpadの売りにWindows7最適化を謳うEEという機能があるのですが、そもそもWin7自体の起動が速いこともあってWin7向けにチューニングした効果がどの程度のものなのかはよくわからないです。
 ちょっとむっと来たのが無線LANの設定。Thinkpad用のインターフェースでWindowsの機能をオーバーライドしていて、設定がきちんと保存されない場合があるみたい。メーカー製ノートPCはどこも似たようにハードウェア設定機能を乗っ取るツールが標準なのですが、OS側の機能からたどって設定しようとするとトラブルの元になりがちでこの手の皮被せ機能は良いことがないです。

 R31は熱くなったとき以外はファンが回らない設定でしたがR400は常時回るようで少し耳障り。VAIO type Pが完全無音で動作することに慣れてきたこともあって気になりました。

 トータルでの印象は「フツー」。
 IBMからLenovoになったからといって特に品質に差が出たわけではなさそうです。元々Thinkpadのビジネス向け機種は「丈夫で長持ち」なだけでSONY製品のような派手さとは縁がないせいか、R31からR400に置き換えてもとくに変わった気分はしないのでした。

2012年8月追記

 フツーと書きましたが現時点でのThinkpad R400の印象はかなり低くなりました。

 液晶に縦線が出てしまいました。
 液晶の表示品質自体、あまりよろしくないな、輝度を落としても目がチカチカするな、と思っていたのですが、常時縦の青線が表示される部分ができてしまいました。常に同じ場所です。
 購入から一年半くらいの頃だと思います。廉価機とはいえあまり早い劣化であったと思います。

 今後、私がThinkpadやLenovo製品を買うことはないでしょう。

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