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『流血の夏』梅本弘

流血の夏
梅本弘
大日本絵画
1997.10
4200円

★★★★☆

 ソ芬戦争を描いた『雪中の奇跡』の続篇。第二次ソ芬戦争――継続戦争のお話です。

 1939年11月末~1940年3月の冬戦争でソ連の侵略をなんとか押しとどめ、領土を一部割譲しながらも独立を守り抜いたフィンランド。冬戦争後は再度のソ連の侵攻を恐れてナチスドイツに接近してしまいます。1941年6月末に始まった独ソ戦緒戦はドイツ軍が絶好調であったこともあり、ナチスドイツの尻馬に乗ったフィンランドは冬戦争で失ったカレリヤ地域の奪回に乗り出します。この時点ではソ連の大反攻も始まっておらず、フィンランドにはソ連が負けそうに見えたのでしょう。ですが結果から見ればこれは失敗でした。1943年、ドイツのスターリングラード戦での敗北で情勢は一変しフィンランドは苦境に立たされます。
 『流血の夏』ではここまでの流れはあっさりと済ませて1944年6月から始まった“流血の夏”――フィンランド側6万、ソ連側推定20万の戦死者を出した戦争の終盤を描きます。フィンランド側、ソ連側双方から集めた写真資料も豊富で、地上戦を中心に戦況を細かく追います。6万と20万という戦死者数からするとフィンランド側優勢に見えますが、実際の戦況はソ連主導でフィンランド側は物量に圧倒されたジリ貧の戦いであったようです。

 『雪中の奇跡』『流血の夏』ともども今書いている小説の追加資料にしたくて読んだのですが、お気楽なエンターテイメントのお話には生かせそうもない苦しい戦争を綴った二冊でした。惜しかったのは冬戦争で辛くも独立を守ったばかりの疲弊したフィンランドがなぜ再び、しかもフィンランドの側から戦端を開くことになったのかという政治の部分が抜け落ちていたことです。そのあたりを描いた政治家視点の冬戦争・継続戦争も読んでみたいです。う~ん。でもフィンランド絡みの本って少ないような。ラリーと家具とウィンタースポーツの話題ばかりで。

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