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『日本SF精神史』長山靖生

日本SF精神史----幕末・明治から戦後まで
長山靖生
河出ブックス
2009.12.11
1260円

★★★★☆

 読み応えがありました。

 サブタイトルに「幕末・明治から戦後まで」とあるように日本SFの黎明期から昭和後半までの流れを解説した本です。
 紹介されていたのを機会に青空文庫の『海底軍艦』を覗いてみれば旧字旧かな総ルビで当時の雰囲気たっぷりに楽しめた、のですがとても残念なことに『日本SF精神史』で名の挙がる黎明期の作品たちはまだあまり収録されていないようです。有名なだけあって海野十三はかなりの点数が登録されていますね。あ、村井弦斎の『食道楽』はテキスト化作業中だ。賀川豊彦の『空中征服』も今年で著作権が切れるようですでに作業中?――という具合に紹介される作品を青空文庫で探してみる楽しみもあります。一方で国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでは紹介されていたタイトルのかなりの部分が閲覧できました。白黒二値画像で画質はイマイチですがネットで誰でも見られるというだけでもすごいことです。素晴らしい!

 明治三十年代には滅亡テーマの物語が多かったという項では

どうもこの時期の天文学者には人騒がせな人が多いが、その実相はメディアの取り上げ方の問題であり、天文学者が指摘したわずかな可能性を誇張して報道したり、科学知識の不足から誤解して報道したりしたものも少なくないようだ。

『日本SF精神史』P.115

などと紹介されていて今もあまり変わらないな、なんて思ってしまいました。温故知新……とはちょっと違いますが、今も昔も人は人なんですね。

 海野十三が乱歩を批判したという話が紹介されていたのですが

探偵作家やSF作家は、人間的に信頼している相手にこそ、鋭い舌鋒で真剣な議論を挑む傾向がある。

『日本SF精神史』P.172

というあたりにはぐっと来ました。そうだ。これだ。著者の作家たちへの信頼の篤さというか、好意の視線というか、何かそんなものがいっぱい詰まった本だと感じたのでした。だからでしょうか、読んでいて心地良いのです。最後は読者とSF作家の双方に向けての熱いエールで締めくくられて全体を通じてひとつの物語でも読んだかのような感覚も味わわせてくれます。SF創作を志す人にもパワーを与えてくれるはず。私も発奮しました。

 SF史の紹介本なのでSF好きと近代史好きを兼任していないと読みづらいかもしれませんが、日本SFの黎明期に思いを馳せてみるのも悪くないと思うのです。今年は良い本を続々と引き当てていて幸せ。

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