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『リンバロストの乙女』ジーン・ポーター

リンバロストの乙女
著:ジーン・ポーター 訳:村岡花子
角川文庫
1990.12

★★★★☆

 紺野キタの『つづきはまた明日』二巻作中に登場してあまりに懐かしかったもので再読です。エルノラのお弁当ってどんなんだっけ、と忘れていたので元ネタを読み返してみたら、とてもおいしそうなこと。実物のお弁当を見て「エルノラのお弁当だ」とわかってしまう杳はスーパーおさんどん少年。たぶん、杳は自分でも「エルノラのお弁当」を再現してみたことがあるに違いありません。お弁当の制作者であることみちゃんのお母さんも乙女属性の持ち主なのでしょう。

 のっけから漫画の話に脱線してしまいました。

 『リンバロストの乙女』はリンバロストの森の端に住む少女・エレノアのお話。エレノアが生まれてきたときの陣痛で目前の沼で溺れる夫を助けられなかった母・ケートは娘・エレノアを憎まずにはいられません。頑なな母はエレノアの学費も面倒を見ず、エレノアは昆虫採集で学資を稼ぎます。時代はいつ頃だろう。馬車は普通に使われていて、でもお金持ちは自動車も持っているようです。電報もあります。
 舞台となるリンバロストはgoogle mapで探してみるとセーレムの近くのようで“Salem's lot”というキングのホラーなども思い出します。インディアンの保護区や広大なマークトゥエイン国立森林公園なども近くに控えた土地のよう。でもリンバロスト最寄りの町・オナバシャ(Onabasha)は今の地名にないのか見つかりません。
 エルノラのお弁当も“Elnora lunch”で検索してみても画像検索にかかってこなくて残念。現代のリンバロストのレストランにはランチメニューに「エルノラのお弁当」なんてないのでしょうか。う~む。

 森のほとりで貧しい生活の中で育ったエレノアは聡明な少女で、自力で稼いだ学資で高校へ通います。エレノアの採集した昆虫標本を買ってくれる鳥のおばさん、近所に住むシントン夫妻と様々な人に助けられてエレノアは美しい少女に成長していきます。
 お話の中で現代の私たちに少し奇異に映りそうなのが服装への拘り。学校へドタ靴や更紗(たぶんプリント柄の安物生地のことでしょう)を身につけていくことはとても恥ずかしく、また卒業式用の服装もあつらえなくてはと大騒ぎをします。状況に合った服装がとても重視され、貧しくて服装が整えられないことは耐えられないくらい恥ずかしいらしいのです。ううむ。これが1909年初版の時代というものか。
 上巻で様々な苦難を乗り越えて健やかに育ったエレノアに下巻で恋の訪れを予感させる出会いがやってくるのですが――とあとは実際に読んで楽しまれた方がいいでしょう。でも、少女小説としては下巻の展開よりも上巻の成長物語の方が私は好きです。最初に読んだ頃もやっぱり上巻の方が気に入っていた気がします。

 ポーターの小説には他に『そばかすの少年』というのがあるはずなのですが、こちらは読んでいない気がします。近いうちに読んでみよう……。

 一番上にはAmazonへのリンクが張ってありますがすでに新品での入手は難しそうです。私は図書館から借りてきて読みました。

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