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2010年8月の13件の記事

『ロボットという思想』浅田稔

ロボットという思想~脳と知能の謎に挑む
浅田稔
NHKブックス
2010.6.29
998円

★★★☆☆

 テレビなどで赤ちゃんみたいなロボットの研究紹介を見たことはありませんか。赤ん坊を立ち上がらせるかのように子供ロボットを手助けして立たせてやる。ぱっと見には「これがロボットの研究なの?」と首を傾げてしまう光景ですが、今回読んだこの『ロボットという思想』ではそんな赤ちゃんロボットや胎児ロボの紹介を通じて身体性をテーマにロボット開発の最前線を紹介します。

 面白そう、ではあったのですが読んでいてピンと来ないことが多かったです。「なぜロボット研究なの?」という点。理由は色々並びます。ですが一番重要そうな「ロボット開発を通じて人を知る」というのが引っかかってしまいました。以前『ロボットとは何か』を読んだときには「確かにそうだ!」と感じられたこの理由も先日『科学哲学』を読んだからでしょうか、ロボット開発が本当に人を知るということにはならないように思えてきました。

 ブラックボックスの関数y=f(x)があります。入力xに対して出力yが出ます。そしてもう一つ内容のわかっている関数g(x)があります。この関数も入力xに対して出力yが出ます。少なくとも試してみた範囲ではf(x)=g(x)に見えました。
 では、このf(x)とg(x)は本当に中身まで同じと言えるでしょうか。
 No。
 内部ロジックの一致を示すためには入出力が一致するというだけでは足りないのです。そしてこの本で紹介されていた「人を模倣したロボット」の研究も似た結果が得られたというだけでヒトの知能の仕組を明かしてくれたわけではありません。もっともらしい仮説の一つが、一応ヒト(の部分)と似た機能を果たす、ことを示しているだけです。

 だからといってこの本がダメなわけではありません。分子運動による熱力学の説明も、原子物理学も本当の分子運動や原子の構造を直接に観測したわけではない、モデル仮説に過ぎないからです。そしてモデル仮説に沿ってなされた「予測」が見事に的中する。予測と事実に食い違いが生まれない限りは仮説は有効です。同じようにヒトの機能が工学的に模倣できれば良い。人工知能分野で定番の「チューリングテスト」もそういう考え方です。判別できなければおっけー。

 とはいえ、やっぱりすっきりしないのも事実。知能について学者がモデルを立て、モデルに沿ったメカニズムを実際に組んでみて思惑通り動けばそのモデルは合格。……本当に合格でいいの?と。そんなことを考えさせられた一冊でした。

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提灯招き

20100823_01

 久しぶりの招き猫奉納所。

提灯招き猫 夜の豪徳寺商店街にはこんな招き猫看板もおりました。ちょっとブキミだけど愛嬌もある……かな? 提灯っぽいような看板っぽいような手作り感溢れる何かです。たぶん居酒屋さんの看板。

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アニメ映画:借りぐらしのアリエッティ

 遅ればせながら見てきました。『借りぐらしのアリエッティ』。新宿バルト9にて。

 楽しかった。
 『トトロ』や『紅の豚』ほど夢中にさせてはくれなかったとはいえジブリ映画が小人を描いてくれたというだけでも嬉しい。
 小人を描く、ということはヒトと小人の大きさの対比もあるけれど、小人の大きさならではの物理法則も現れるわけで。特に顕著になるのが液体。コップの中の水がとろんとしているのも、体についた水滴が払い落とせるのも涙がまん丸の玉になるのも小人の大きさだから。ちびっこたちはこれをどう思ったろう。「アニメだから」で当たり前に見えてしまっただろうか。将来、高校へ進んで物理を習ったときにスケーリング則を学んで「あ、これアリエッティ!」とわかってくれるだろうか。欲を言えば、体が温まりやすい/冷えやすいことや、小さな体の生き物は相対的に力持ちであるところを見せて欲しかったし、同じ理由でしょっちゅうゴハンが必要な可能性が高かったりするあたりも。
 十分に頑張っているのも確かで、ガサツなヒトが小人たちの生活を脅かすズドドドドドーンなシーンはとても面白かった。ヒトと小人のスケールの違いを表すために凝らされた演出も地味ながら効果的だったと思う。
 もっともこのあたりの小人ならではの物理法則に関しては原作『床下の小人たち』のメアリ・ノートンよりも 『だれも知らない小さな国』の佐藤さとるの方がセンスがあったようで、ジブリの小人描写もどちらかというと佐藤さとるに影響を受けていそう。
 拙作の小人童話『ティントーヌウガーミ』でもスケーリング則表現は頑張ったつもりですが、ジブリアニメの方が明らかに生き生きしててボロ負けだなぁ、とがっくり。

 ストーリーに関しては、舞台を日本に移してヒト側の設定を大きく変えたこともあって原作の面影は薄めです。ヒトのそばで暮らしながらヒトを避けるということの実感が薄く、アリエッティの失敗の重さは共感しづらかった。翔の親切が空回りしてしまっているのも理解はできたものの翔の気持ちを実感するまでには至りませんでした。惜しい。
 翔の抱える病気や問題も基本アリエッティ視点で話が進むため、いきなり翔が「滅び」を語りはじめる部分にはびっくり。小さな視聴者たちはあの部分、ついて来れたのかな。客席の子供たちは集中を切らしてざわざわすることもなかったのでOKなのかな。翔に関してはキャラ自体の印象が弱くて最後のシーンにあまり説得力を感じなかったです。
 一点だけ「異議あり!」と強く言いたいのは猫のニーヤ。ジブリアニメの伝統で猫にファンタジーを含ませたかったのだろうけれど、今回に限っては物わかりの良いヒト的な思考をする猫キャラにしてはいけない話であったと思います。小人が築いてきた生き抜くための“掟”の大切さと“掟”を逸脱したくなるような情の葛藤をアリエッティと翔の間に描いた(描こうとした)のに、小人が天敵そのものの猫と通じ合えてしまうのは「ヒトと小人が仲良く暮らす」甘いストーリーに改変してしまうのと大差がありません。小さなシーンが全体を否定してしまうもったいない部分でした。

 デテール描写やジブリらしい絵と動きには大満足。ストーリーは『木陰の家の小人たち』か『だれも知らない小さな国』のような国産物語をベースにした方が良かった気がします。特にスケーリング則や小人の論理というものを強く出したいなら佐藤さとるのコロボックルシリーズの方が向いていたのではないかと思ったのでした。

 『アリエッティ』とは関係ないですが、惜しいどころでなく残念だったのは映画館。画質イマイチ、音も低音ドンドコが変な部分で発揮されていてバランスが悪い上に高音ひずみまくり。音量も大きすぎ。素敵な音楽が台無しでした。スクリーンのピントも怪しく映写室の窓ガラスも汚れ放題。どこの映画館も似たり寄ったりなので“そんなもの”なのでしょうか、悲しくなります。今時のプラズマテレビとBlu-rayで見る方がよほどしゃっきりくっきり。

 そうそう。以前に見られなくて悔しい思いをしていたNHKのアリエッティ制作ドキュメンタリ「ジブリ創作のヒミツ 宮崎駿と新人監督葛藤の400日」の再放送が8/21にあって、見てみました。むぅ。映像面では文句はなかったのでドキュメンタリの中心であった作画よりもシナリオ作成の部分が見たかったんだけどな。『Cut』2010年 09月号のようなインタビュー誌にもアリエッティ特集が組まれていました。『MOE』2010年 09月号『キネマ旬報』2010年 8/1号にも特集が組まれていて、この中では『Cut』が一番読み応えがあった気がします。

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『百合姫Wildrose』vol.6

百合姫Wildrose 6
一迅社IDコミックス 百合姫コミックス
2010.8.18
890円

★★★★☆

 表紙はvol.5よりは多少買いやすくなった、なんて思うのは慣れのせいでしょうか。表紙も扉絵も抑え気味ながら良い雰囲気。成年マークはついていませんが内容的にはポルノ――成年漫画と考えて良いかと。男性向けのものほどえげつない感じじゃないですが。全編濡れ場ありの百合漫画。感想行きます。

夢の話 ロクロイチ

 校内で女子同士で付き合っているという例を見て「私だけじゃない」と大喜びの主人公。だけど――。とマイノリティの感覚に少しだけアプローチ。テーマ的には『百合姫』本誌の方でこういう悩みの部分にフォーカスした話があってもいいような気はします。カップリングされる神田さんも飄々とはしていても左手首を隠す格好しかしていなかったりで設定は重いのかも。濡れ場でないシーンでも隠微なエロスが漂うのは絵柄のためかな?

Love the World ピエール山本

 明るい雰囲気で前振りにもたっぷりページを使ってベッドシーンもしっかり。キャラも立っていて画面の使い方もダイナミック。さすがTLで活躍している作家さん。

gravity 百乃モト

 冒頭を見て「♪翼の折れたエンジェル」と歌いたくなると書くと世代がばれそうです。思春期を共に過ごして結んでしまった体の関係に気持ちが追いついていなくて、と始まる話。

放課後ベリーガール 再田ニカ

 vol.6は七月の一迅社モバイルでの新顔面々が幾人も。再田ニカはWildroseでも雰囲気明るいのでした。かぱーん。ベッドシーンでも空気感が健全というかあっけらかんというか。でも最後の「サカエちゃん(主人公)みたいだよね♥」というセリフでエグい連想が働いてしまいました。

Moment Like Fireworks 南崎いく

 おなじみりっちゃんと小夜のお話。今度は浴衣で花火。ふむ。りっちゃんは受け専門なのか。たまにはリバも見たいなーっと。

ベッドで夢中♥ 田中琳

 のっけからベッドシーンでキャラたちのしている行為もエロいはずなのだけれど可愛らしいというイメージが先に立ちます。

ハニーインフェルノ 井波はじめ

 今回一番印象が強かったのがこれ。悪魔っ娘キャラの設定とこの作者の絵柄のマッチングが良かったのか、前回掲載作より画力が増していたのか。作者のtwitterによると単行本予定であった作品からの切り出しのようです。続編の予定はないとか。もったいなーい。

夏のお嬢さんたち 三国ハヂメ

 はーらーまーきー。絵で見たかったっす。

海風が薫る 森島明子

 うわ〜ん。もっとページ数を〜。ベッドシーンではある種のイメージプレイが描写されるのですがこの部分もっとこってり描きたかったんじゃないかなーと思ってしまいました。いや、それは私の欲求か。こってり描いたバージョン読みたい。

5秒の恋 柚葉せいろ

 ページ数は少なめの6ページですが載っていて良かった。昔の純正少女漫画を思わせる雰囲気がお気に入りの作家さん。絵もお話もさらに磨きをかけて生き残って欲しいです。非エロのお話も読みたい。

 11月発売の隔月刊化第1号『百合姫』の掲載作家が固まってきたようで帯の紹介には23名がリストされていました。一番厚かったvol.16でも18作。リニューアルではかなりのボリュームになりそうです。楽しみ。

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『ロボット学論集』瀬名秀明

瀬名秀明ロボット学論集
瀬名秀明
勁草書房
2008.12.12
3150円

★★★★☆

 ロボット物の創作を志している人は読んでおくべき本です。2008年刊なので技術動向に触れた本としては少し時間が経ってしまっていますが、今後のフォローのためにも「ロボットという思想」を概観するのに必要な一冊であるはず。
 オレが好きなのスーパーロボットだもん関係ねーよ、とか思っているときっと既存のロボットアニメの形と名前を変えただけのものを作り続ける羽目になります。
 SFとして取り組むのであれば現実のロボット開発を導くようなポスト・アトム、ポスト・ガンダムたらんとする何かが必要なのでしょう。この本はそこへの手がかりを与えてくれる気がします。学問向けの専門書ではなく、専門知識の必要ない本です。言葉はちょっと堅めですが。

 前半は哲学に近い話、後半でテクノロジー動向にも触れられますがこれも思想面からのアプローチが中心となります。瀬名秀明が攻殻機動隊S.A.C.の脚本担当櫻井圭記やミステリ作家の法月綸太郎、デザイン論の鈴木一誌とした対談、大学で行われた瀬名秀明による講演、ロボット学関連の書籍に寄せた文章を集めたものです。あちこちの記事を集めたものであるために第Ⅰ部〜第Ⅲ部までと『岩波講座ロボット学』によせられた原稿の再録である第Ⅳ部には内容的に重複があります。全部を読むのは面倒臭い、という人は第Ⅳ部だけ目を通しておくのが手っ取り早いでしょう。でも対談も講演録も面白いですヨ。

 哲学の話がたくさん出てきますが哲学書のような難しさはなく整理された瀬名秀明の言葉として紹介されるので心配無用。ヒトの模倣機械として作られるロボットはヒトにとっての世界の認識をも模倣せざるを得ないため、その部分を扱っている学問である哲学に触れずにいられないということのようです。

 たくさんの刺激をもらった本書ですが、心にびんびん来たのは第Ⅲ部の第8章。SF小説史と境界知を絡めて語っていて瀬名秀明の創作に対する志みたいなものにワナビとしてはじーんと来ました。う〜ん。内容面ではあっちもこっちも紹介したくなって困ってしまいます。

 読み終えて思ったのは『攻殻機動隊』の存在感がいかに大きいかということ。瀬名秀明がこの本の中でロボット開発の問題点として語ったもののかなりの部分は『攻殻機動隊』のコミックですでに見えていたもの。『攻殻機動隊』にしても描かれた当時のサイボーグ論的なものの寄せ集めであって完全にオリジナルなアイデアや問題提起の塊であるわけもないのですが、ロボットとヒトの問題点もすでにこの時点で明確になり、ひとつのお話の中にまとめられていたわけでロボット研究者にとって象徴的な存在なのだろうと思えました。ポスト・アトムは『攻殻』ではないだろうか、と。

 私だったらどんなロボットが欲しいかな。
 CLAMPの『ちょびっツ』という漫画に出てきた“すもも”みたいな小人サイズが好ましいかな。等身大のは怖い気がします。

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『エナ』磯本つよし

エナ
磯本つよし
双葉社アクションコミックス
2009.6.12
650円

★★★☆☆

 百合漫画誌『つぼみ』掲載の二輪モノで知った磯本つよしのSFアクション漫画。サイボーグであるタフな女の子が暴れ回る痛快アクション。『攻殻機動隊』『鉄腕バーディー』、あるいはもっと古い例を引くならば高橋留美子の『ダストスパート』のヒロインや平井和正の「ウルフガイ」シリーズに登場した虎四フースーのような怪力少女イメージのお話。

 バウンティハンターのような探偵のようななんでも屋のような、どことなくお気楽な雰囲気の闇稼業で働く主人公・エナ。拳銃の弾にはびくともしない頑丈な体で犯罪者をぶっ飛ばし、上前をはねる。のだけれど基本どじっ子で任務達成率は低そう。そんなエナがなぜか賞金首になって追われる立場となり――。という近未来アクション。

 近未来とはいっても登場する乗り物がノスタルジックで60〜70年代テイスト。街の景色は現代とサイバーパンク的近未来のミックスくらいの感じでとても緻密に描き込まれています。すっきりとした線のキャラ。よく練られた造形のメカ。一発で理解できるわかりやすい画面構成と演出。間違いなく実力派。
 ちょっとだけ惜しいのは設定やストーリーの部分かな。マイクロマシンベースのサイボーグも怪力娘もフィクションでは定番となり、改造元の研究施設と対立するというお話は少々物足りなく思いました。

 メカ描写に関しては非常に好みのセンスなので登場するオートバイ的にも超ストライクっぽい『東京奥多摩のヒカリ』も探して読んでみようと思います。店頭在庫探しの旅になるのかな。

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『つぼみ』vol.7

つぼみ VOL.7
芳文社まんがタイムKRコミックス GLシリーズ
2010.8.11
1200円

★★★★☆

 帯の「少女+素足=めくれろスカート」って小学生男子ちっく。今号は値段も高めに設定されてカラー冊子のおまけ付き。

 掲載作個別に感想いきます。

しまいずむ その11・12 吉富昭仁

 すっかりヘンタイ漫画。遥&芳子の年長組はお笑いというか、ドリフ風味の味付けがされていて不思議な感じです。そういえば同作者の「BLUEDROP」も昭和の空気で染め上げられていましたっけ。

ロンリーウルフ・ロンリーシープ 第1話 水谷フーカ

 同姓同名の二人が同じ怪我をして同じ病院で鉢合わせ。ガテンキャラとフェミニンキャラで設定的には二十代半ばっぽいのですが、中学生くらいのてれてれ感。ガテンちゃんはバイク乗り設定だったりして『つぼみ』はまたもやメカ度アップの予感。裾バルーンワンピのフェミニンちゃんとワークブーツのガテンちゃんとのギャップがすごい。シリーズ物らしいのでフェミニンちゃんの正体や二人のギャップがこれから描かれていくのかな。

めとらば 前編 かずといずみ

 作家物。上り調子の女流作家は大忙し。そこで「お嫁さん」を派遣してくれるというサービスを頼んだところ――。きっとこれは作者・かずといずみの夢のサービス。絶好調の作家先生は派遣「お嫁さん」である小桃に頼り切り。後編は波乱の予感? かずといずみ節たっぷり。

レンアイマンガ 第2話 コダマナオコ

 黒井先生みたいな人がいたら美容院に放り込んで改造したくなりそう。主人公の編集・ハルカはすごく仕事できそうです。コワイです。きっと作者の周囲にもこういう編集さんが……。

タンデムLOVER #3 カサハラテツロー

 今回は海モノ。タンデマインパイロットたちが体操をしているシーンを見て太平洋戦争の頃の操練風景をイメージしたのかななんて思ったのでした。ザマス眼鏡のいかにもな教官。どこかノスタルジックなメカ。もっとロボが活躍しても、と思いましたが百合漫画誌でした。雑誌的にはメカ好き層も多そうな気がするのでさらにメカメカしくてもいいような気はするのですが。

なかよしにっき かがみふみを

 やきもきしてしまうような名前ネタ。てれてれ。

Green Episode:2 大朋めがね

 今回好きな感じのサイドストーリー展開。意地悪で打算で下心があって、でも想いは濁りなく、ってのはすごく好み。なんだけどキャラクタの印象が混乱したのが惜しい。

ニックネームアパート 三谷知子

 これはうまい。お話の流れづくりがすごくうまい。違和感や引っかかりが全然ない。なのにぐぐっても作者の情報が出て来ない不思議。有名な人の別ペンネームなのかな。

わんらぶ わんこその2! 杉浦次郎

 わはー。うちの犬もごろごろしてる人を布団にして、べーろべーろ顔中鼻の穴から口の中まで丹念に舐めて涎だらけにしてくれたっけ。これは正統派犬漫画。

ロンサム・エコー 中編 きぎたつみ

 ぉぉぉ。前編はなぞだらけでしたが今回はなぞのうちのかなりの部分が見えてきた気がする。後編が楽しみ。

エンドレスルーム vol.2 藤が丘ユミチ

 前回の日焼けエピはあまり好みでなかったのですが、今回は割と好きな話。落とせない汚れはないというスーパースイーパー客室係。人を殺してお金を奪って逃げてきた、と称するお客とのお話。

ガールズライド #3 磯本つよし

 今回は海イベント。そして脇キャラですが'86年型GSX-R750Rというちょーナイスなマシンも登場。ホイール、ブレーキ周り、ラウンドラジエター、リヤサス、デュプレックスの排気系、リヤサス、エアクリーナーにライトカバーにチタンっぽいクランクケースカバーとカスタムフルセット。昔のランクルといいこの人の選ぶメカは素敵だな。

ダーリン・ダーリン 後編 縞野やえ

 前回の終わり方がなんとなくドロドロの破綻コースっぽくて「どーするんだこれ」と思っていたのですがうまく収まったようで良かった良かった。

わたしの花 由多ちゆ

 この作者も情報少ないなー。「そばにいる」ことをテーマにしたワンシーン。雰囲気ありました。

プライベートレッスン #4 ナヲコ

 今回もたまごは困ったちゃん。はね先輩ととり姉の関係を知るたまご。長編体制に確定のようです。よしよし。

星川銀座四丁目 玄鉄絢

 今回はページ少なめの3ページ。お風呂イベント。

caterpiller&butterfly 玄鉄絢

 『コミックハイ!』掲載作の再録。美容師のお話。

 別冊付録は『つぼみ』と同判型16ページのカラー小冊子。吉富昭仁、玄鉄絢、宇河弘樹、鳴子ハナハル、黒星紅白、カトウハルアキ、西E田の七人がそれぞれ見開きで

それぞれの先生が考える「女の子・女性キャラのココガタマラン」という大好きポイントを、カラーイラストと手書き文字でしっかりたっぷり描いてもらっちゃいました。

つぼみvol.7付録小冊子「婦女子的艶麗着色読本」裏表紙解説より

だそうです。
 黒星紅白のページが好みでした。向かい合わせで二人羽織とはなんたる天才。この方は漫画は描かないのかな。

 『つぼみ』の公式サイト、画面上部右側のイラスト部分にマウスポインタを持っていくと掲載作のサンプルが見られるようです。一ページずつですが。

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『植物化石 5億年の記憶』

植物化石――5億年の記憶
INAX出版
2010.3.15
1575円

★★★★☆

 写真の印象的な本です。
 20センチ四方の正方形でフルカラー。巻頭12ページはつるつるした質感の印刷でフィルムっぽくて発色がとても鮮やか。文章は少なめで素晴らしく綺麗な植物化石の写真が並びます。文章はどちらかというと一般向け。マニア向けではなく、子供向けでもないです。古生物に多少の関心を持つ大人をターゲットにしている本だと思います。巻頭の素晴らしい写真でぐっと引きつけてくれ、古生代のシダ植物から新生代第三紀の広葉樹までを時系列準に紹介していきます。巻末には古植物学者・三木茂の業績もまとめられていました。総ページ数は……70ページくらいかな? 植物の進化史をたどるのはくどくなりすぎない程度の駆け足で、マイナーなジャンルをセンスの良いビジュアルで魅せてくれています。書店で手に取ってみると写真の良さに感嘆しちゃうはず。撮影は佐治康生という方。検索してみたところ、とても印象的な写真を撮る方でした。
 東京では2010年の6/30〜8/21、大阪では9/4〜11/18、この本の内容に対応する「植物化石―5億年の記憶」展というのが開催されているそうです。本に載っていた化石の実物が見られるみたい。

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『科学哲学』サミール・オカーシャ

科学哲学
著:サミール・オカーシャ 訳:廣瀬覚 解説:直江清隆
岩波書店
2008.3.25
1575円

★★★★☆

 どこで見かけたのか忘れてしまったのですがしばらく前に「最近の科学哲学は斉一性に否定的」というニュアンスの言葉を見て「何か革命的な哲学の転換でもあったのか」と入門書を探して読んでみたのがこの本でした。斉一性というのは科学の基本で、物理法則は誰がどこで試そうと同じように再現されるというもの。この科学の基本が否定されると工業社会は拠り所を失います。パソコンや自動車を作ってみても必ずしも動かないかもしれないのです。

 ところがこの『科学哲学』を読み通してみても私が学生の頃に読んだ科学哲学の本とあまり変わっていませんでした。斉一性は根本のところで保証されてはいませんがそれだけで、斉一性を否定するような科学の成果があって哲学に大きな転換が起きたわけではなさそう。断片になっていた言葉を誤解してしまった模様。「な~んだ」とがっかりしましたが、久しぶりに触れた哲学の本は思ったより楽しくて十分な収穫だったと感じました。

 この本は哲学に関心のある人よりも科学に関心のある人向きではないかと思います。大学で理学や工学を学んで理系の基礎メソッドを一通り体験した後に読むと、当たり前のように吸収したはずの知識の根本が揺らいでしまうことにくらくらできて楽しいはず。研究に用いるロジックが知らないうちに哲学の中の一派の考え方を採用していることに気づき「はて、自分はこの考え方のままでいいのだろうか」と不安になれるのではないかと思います。科学の訓練を受けた人こそ、哲学によって突きつけられる科学のあやふやさにリアルを感じられるはず。
 一応、念押ししておくと反科学――スピリチュアルや創造論の擁護じゃありません。人類の持つもっともまともな論理体系である科学でさえ、という感慨が得られると言うことです。

 科学の定義、科学の用いる方法論、科学的説明と次々と科学の足場の見直しを迫り、実際の物理、生物、心理学における問題点を具体的に紹介します。

 後半の実際の科学における哲学的問題はとても面白かった。一番ぐっときたのはライプニッツとニュートンの三百年越しの対立。絶対空間を想定するニュートンに対し、それを否定しようとするライプニッツ。加速度だけが系となる基準点を生む魔法。巻末の解説で関連書籍として紹介されていた『空間の謎・時間の謎―宇宙の始まりに迫る物理学と哲学』 も読んでみようと思ったのでした。

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火星―ウソカラデタマコト

火星—ウソカラデタマコト

 東京大学総合研究博物館にて「火星―ウソカラデタマコト」展というのをやっていると知って覗いてきました。ここを訪れたのは「異星の踏査〜アポロからはやぶさへ〜」展以来。

 展示はパネルが中心でMELOS——日本の次期火星探査計画へのアプローチが主力になっています。

  • 膨大な量の画像データ
  • MELOS火星探査計画案
  • 火星生命の痕跡が見つかったと言われる隕石
  • 火星飛行のCG
  • 火星に触れる

 以上、イベントのパンフレットからの抜粋です。

「火星―ウソカラデタマコト」展入口 会場は以前と同様、東大博物館の常設展示の奥にある特設展示室。会場の入口そばからすぐに文字ぎっしりのパネルが展示されていて、当たり前のイベントならばスルーされてしまいそうな展示スタイル。なのに皆さんきっちりパネル掲示を読んでいきます。強い関心を持った人が来ている模様。小学生もパネルに張り付いてメモを取っていました。夏休みの自由研究ネタにでもするのかな。土曜日でしたが混雑というほど混雑もしておらず、のんびりと楽しめました。

「火星―ウソカラデタマコト」展会場 入口からちょっと入って眺め渡すとこんな雰囲気。天井から下がっているタペストリの“PLAN A”、“PLAN B”、“PLAN C”というのはDまであってそれぞれ「表面探査」「生命探査」「空中探査」「地中探査」と探査案が示されています。これはこの企画展が今後行われる日本の火星探査ミッションMELOSの方針決定のための意見公募も兼ねているためです。
 写真奥はローバーによる地表探査案。サイズ的には“ソジャーナ”くらいの印象でしたがMars Science LaboratoryやMAX-C、ExoMarsといった欧米の大型ローバー計画が控えているとなると規模が小さくなりそうな日本は独自色の強いことをやって欲しい気がします。せっかく開発した月ペネトレータの技術を生かすようなものとか。

「火星―ウソカラデタマコト」展探査案投票 会場では右写真のように探査計画案に対する意見の公募が行われていて、壁には寄せられたメッセージがびっしりと張り出されていました。将来の火星探査に関われる貴重な機会です。意見を出すことを前提に展示に触れるとよりいっそう楽しめるかと思います。

「火星―ウソカラデタマコト」展3Dテレビ 空中探査「火星飛行CG」とパンフレットにあったものの紹介展示。大きな3Dテレビで火星の風景CGを流していました。この展示に限らず今回の会場にあった動画は立ち見するにはけっこうな長尺です。じっくり時間のあるときに眺めに行くのがお勧め。
 3Dは一応それらしく見えましたが最も立体感が豊かだったのは高度データと衛星写真から作ったCGではなく、ローバーの撮影した3Dパノラマ写真でした。これは『3Dで見る火星の絶景ポイント』という本でも同様でした。なんでだろ。

「火星―ウソカラデタマコト」展ALH84001 有名な火星隕石ALH84001。といってもNASAが大々的に「生命の痕跡!」と喧伝した部分ではなく同じ隕石の別の欠片のはず。ALH84001.XXXみたいにサブナンバーが振られていたのでピース分けされたものだと思います。見学したときには研究者や解説員が近くにいなくて確かめられませんでしたが。「火星—ウソカラデタマコト」展のサイトには研究者に説明してもらえるイベントの日程が記されているので気になった方は確かめてみてください。
 写真の外——右側には火星隕石の切片が展示され、実際に触れるようになっていました。明確に「触っていいよ!」と書いていないので「ほんとに触っていいの?」と思いながらコインくらいの窓の開いた切片を撫で回してきました。う〜ん。触っても何がわかるわけでもないのですがなんとなく楽しい。こちらは日本の調査隊が南極で集めた隕石なのかな?

「火星―ウソカラデタマコト」展中華鍋 写真左寄りでスポットを浴びているのが鉄隕石。右は中華鍋に火星の映像を投影したもの。画面には入っていませんがこの右にはものすごく敏感な地震計が置かれていて、近くでそっと足踏みをするだけでセンサーが反応しまくります。「地震計設置による火星内部構造探査」の紹介。私は、惑星の構造を先に明らかにして表面探査の必要箇所を見つけていく、という順番が良さそうに思えましたが得られる結果が地味で人気が出にくそうですね。

「火星―ウソカラデタマコト」展超音速風洞試験体 これなーんだ?
 ぶきっちょな縫い目でキノコのマスコットかなにかに見えますが、これは超音速風洞でマッハ7に晒された空力試験のサンプルだそうです。小型探査装置をキノコの傘型の“バリュート”で空(軌道上)から投入しよう、という案。パネル解説だと1mくらいの傘になる予定のようです。

 そうそう。会場には蚕や稲+どじょうの水槽も展示されていました。宇宙でのタンパク源ということのようでした。蚕の繭は黄色い繭でしたがこれは見慣れない感じ。クリキュラ(金色の糸を出すインドネシア産の野蚕)と掛け合わせた品種改良ができているという話をちょっと前に見かけたのでそれかも。

 大型化石イベントのように賑やかに眺めるお祭り的な展示ではなく、文字解説びっしりのパネルを眺め、地味〜な観測機器を見る類の展示です。特設展示室に至るまでには人骨ゴロゴロの展示などもあります。同時開催の昆虫展も(こちらはほぼ常設の気がする)も地味目ですが標本びっしり。
 写真撮影は可能なものと不可のものがあるので受付で確認を取ることをお勧めします。

場所 東京大学本郷キャンパス内 東京大学総合研究博物館
期間 2010.7.24〜10.30
開館時刻 10:00〜17:00
休館日 月曜日
入場料 無料

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『スワロウテイル人工少女販売処』籘真千歳

スワロウテイル人工少女販売処
籘真千歳
ハヤカワ文庫JA
2010.6.30
945円

★★★★☆

 のんびり読むつもりでしたが一気に読んでしまいました。面白かった。

 ミステリ仕立てのSF。「種のアポトーシス」なる現象を封じ込めるために作られた隔離地区での連続殺人を追うお話。裏表紙の「あらすじ」は読まない方がいいかも。かなーり読み進めないと判明しないことが書かれちゃってます。
 ミステリ仕立て、とは書きましたが本格風ではなくて殺人事件の謎を解こうと動き回る登場人物たちの人間模様がお話のメインです。SF的ガジェットがふんだんに投入されデテールたっぷりに作り込まれた世界観は魅力。複雑に絡んだプロット。そして描かれるのはヒロイン・揚羽。ひたすら揚羽。とにかく揚羽。
 実は「揚羽可愛い」というキャラクター小説だったのでした。
 ライトノベルというほどライトノベル的ではありませんが、キャラクター描写に注力されていて「マルドゥック・スクランブル」シリーズ「星界の紋章」シリーズなどが好きな方には楽しめるような気がします。

 不満を挙げるとすればまずは文章。リズム感の良い読みやすい文章ではあるものの単語の誤用や複数の慣用句をごっちゃにしてしまったような表現が散見されました。文責はもちろん著者に帰されるものですが、編集者のチェックが甘いようにも思えます。多用されるフリガナの組版ももっと工夫しようよ、と思うことしきり。投入されているイメージは「銃夢」や「攻殻機動隊」「ARIA」を連想してしまって全体に「どこかで見た」印象を受けたのも惜しかった。キーとなる「種のアポトーシス」の症状解説もないまま話がずんずん進んでいくのも「なんのお話だっけ」という混乱に繋がったかも。

 文句は並べてしまいましたが揚羽というキャラクターを描いた話として好印象でした。ライトノベルレーベルのようなタイプの萌えは用意されないものの十二分に魅力的なヒロインであったように思います。超特大フライホイール、人工生命、人工知能、地下好熱菌、太陽系探査と個々のギミックも良いネタが投入されていました。
 ふと思ったのですが、このお話に出てくる人工妖精たちってカレル・チャペックの『ロボット R.U.R.』に登場するタイプのロボットなんですね。うまく表現できないですが感慨を覚えました。種のアポトーシスの設定も近いと言えば近い。現代のR.U.Rを目指した話だったのかも知れません。

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『偽りの姫は騎士と踊る—ダブル・エンゲージ』渡海奈穂

偽りの姫は騎士と踊る―ダブル・エンゲージ
渡海奈穂
一迅社文庫アイリス
2010.4.20
590円

★★★★☆

 百合ライトノベルの感想です。

 面白かった。
 少女騎士エフィと姫君ディアナのさすらい道中記。父王を弑逆されたディアナは隣国の王宮に食客として滞在していた。ディアナ付きの騎士エフィとともに亡命生活を送るうちに父王を殺した簒奪者クレイグの余命が幾ばくもないとの連絡が入り……。
 中世騎士物ファンタジーの百合版です。
 お話が動き出すまでが長めかな、とも思いましたが見事な百合っぷりと「そう来るか」という捻り。叙述トリックに近い、でも伏せられた札は推理では明かせないタイプの(小さな)びっくりが仕込んでありました。
 姫の外面ツン、内面デレっぷりも見事で少女騎士は誠実に姫に仕えて振り回されながらも素敵に凛々しかったです。不満を挙げるならばメインになるはずの帰国道中が短めで旅立つまでが長かったことですが、苦難の旅路が続いては辛くなってしまうかな。

 

 王道的な中世風異世界少女小説に仕上がっているエンターテイメント。少女小説ファン兼百合ファンはこういうスタンダードな騎士物を欲していたのではないかと思います。安っぽくなりすぎず、堅くしすぎずで匙加減の利いた楽しいお話でした。

 同時発売の『企む王子は殺し屋と踊る―ダブル・エンゲージ』とは作中世界を共有している模様。

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『flower*flower 2』石見翔子

flower*flower 2
石見翔子
一迅社IDコミックス 百合姫コミックス
2010.7.17
900円

★★★★☆

 楽しみにしていた『flower*flower』第2巻。

 1巻では展開が派手でしたが2巻は陰謀劇がじわじわ進んでいきます。重めの雰囲気を中心に短いアクションシーンが点在するという形。シリアス展開も悪くないけどフラストレーションが溜まるぅ。ニナが精彩を欠いていて、こう、なんていうのでしょう。バチコーンと平手打ちフルスイングが決まって欲しいみたいな。作者の読者に対するオアズケプレイ的な。
 1巻の時点で怪しかった蒼兄貴はいよいよ怪しくなり、ニナもニナで微妙に陰謀に絡んでいそうで、朱の侍女もまた怪しい行動があり、過去を振り返っても宮廷陰謀の話が登場し、と朱とニナを取り巻く環境のきな臭さが目一杯強調されていく巻です。一人のほほんとした性格の朱が可哀想になってくるくらい。ニナと朱の間もなんとなくギクシャクして気持ちも擦れ違い気味ですが、通じ合うのは次巻ということになるのかな。
 表紙カバー下はカバーのネタばらし?的な。あとがきではキャッキャウフフ分の補充がありました。補充……?

 3巻が楽しみです。掲載誌の百合姫Sは次号で終幕となりますが続きがどこで掲載されるのかも気になるところ。

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