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2010年9月の12件の記事

『GAME OVER』水谷フーカ

GAME OVER
水谷フーカ
白泉社
2010.7.31
780円

★★★★☆

 百合誌『つぼみ』で印象の良かった水谷フーカの『楽園』掲載作を集めた単行本。恋愛物。念のため?ですが、男女カプの。

 感想。てれてれ。

 なんじゃそりゃって感じですが、表題作「GAME OVER」のこっぱずかしさが「てれてれ」なのでした。

 連作短編「GAME OVER」は全体の六割程度のボリュームで五話。読み切りの短編が三話。描きおろしは「GAME OVER」の結末編。白泉社の『楽園』発単行本はあまり出回っていないのか、店頭だとなかなか見つかりませんでした。
 表紙は布目っぽい表面仕上げで題字は金箔。表紙絵と合わせて確かにウェディングイメージの装丁です。カバー下にもカラーでイラストが印刷されていたり。同レーベルの『Girlish Sweet』もそうでした。

 表題作「GAME OVER」はバスの中での出会いから始まる歳の差ラブストーリー。「誘拐のすすめ」は家族愛テーマ、「けだまのケーキ」はがさつ女子×弱気男子のケーキ店経営話、「きのう けんかをしました」はごくごく短い女子の友情ワンシーン。「誘拐のすすめ」と「けだまのケーキ」はギャグよりのコミカルタッチでした。親しみやすいプレーンな絵柄とほのぼのシーンのうまさが合わさって強烈なアクはないのに個性が滲み出ている印象。

 この作者、挑戦者的キャラのヒロイン得意な気がします。「GAME OVER」のヒロインも『つぼみ』Vol.2の「オオカミの憂鬱」のエレベーターガールもおもしろチャレンジャーキャラでした。

 恋愛漫画もいいけどテーマや蘊蓄いっぱいの長編ストーリー漫画描かないかな。

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出版不況と『百合姫』リニューアル

 二ヶ月前の話題ですが。
 『百合姫』Vol.21には「編集長インタビュー」なる記事が掲載されていました。『百合姫S』の休刊・『百合姫』への統合の背景について語った内容です。

  • 売上部数の定常化
  • ライバル誌の誕生
  • 出版不況
  • リニューアル
  • 編集方針の維持
  • 若年層の雑誌離れ
  • 対象年齢の引き上げ
  • ポスト・マリみての不在
  • パッケージの変更
  • 映像化作品の輩出
  • 異ジャンルからのコミカライズ

 挙げられていた話題はこんなところでしょうか。これらを元につらつらと考えてみたいと思います。

ライバル誌

 筆頭のライバルは『つぼみ』ですが新書館の『ひらり、』もスタートから品質が高く、強力な競合誌になりそうです。『つぼみ』はVol.7以降隔月刊化するということで百合姫側もライバルと足並みを揃えたということなのでしょう。

出版不況

2009年12月百合姫S Vol.11ふ〜ふ連載開始
幼馴染と呼ばないで!連載開始
絶対少女アストライア連載開始
2010年3月百合姫S Vol.123周年の百合姫Sはなにかが起きる!?告知
marriage black連載開始
おっかけ×Girls連載開始
むげんのみなもに連載開始
2010年4月百合姫 Vol.20『百合姫』『百合姫S』統合隔月刊化発表
2010年7月百合姫 Vol.21編集長インタビュー

 2009年末にティーザー的な告知があり、『百合姫S』の『百合姫』への統合隔月刊化はこの時点で決まっていたと思われます。同号と前号では新連載を立て続けに六本も開始したタイミングだったので、方針変更はこの六本が引き返し不能になってから後、となります。
 これだけの急な大転換には決断のための決定的な材料があったはず、と漫画雑誌類の発行部数遷移をまとめてみました。

少女漫画誌出版部数変遷

 少女漫画誌を対象に適当に選んでネットから発行部数を拾ってみたものです。部数は一号あたりのもの。

少年/青年漫画誌出版部数変遷

 こちらは少年誌/青年誌。

 思ったより深刻でした。
 でも、ちょっと待った。『百合姫』の前身『百合姉妹』は2004年創刊。すでに漫画雑誌の不調が明らかであった時期。出版不況の渦中で創刊されたのが『百合姉妹』。逆風の中での運営は編集部もわかっていたはず。リニューアルの理由としてはちょっと弱い。
 2009末〜2010頭にかけても漫画雑誌の衰退は穏やかなままで変極点は見出せません。現場の人にしかわからない兆しを捉えたのかもしれませんが、『つぼみ』の隔月刊化をこの時点で察知したから、と考えるのが妥当でしょうか。

対象読者

今までの出版界は、「雑誌は読者層の中の若いほうにあわせて作る」ことがセオリーと言われてましたが、今それをやっていたらどんどん売れなくなると思います。

百合姫Vol.21 P.204 「編集長インタビュー」より

 編集長はこう述べて「若い子は読まなくていい」「今の読者を卒業させない」と続けます。出版物から若者が離れていく中で『百合姫』のような専門誌を読む十代は「知的好奇心に優れた」子なので対象年齢が上がっても内容について来られるだろう、と。
 確かに今『百合姫』を読んでいる十代にとっては13〜14歳にフォーカスした内容である必要はなさそうだと私も思います。
 それ以前に百合姫の読者層というのがよくわからない。一迅社の公式サイトには読者層も掲載されてはいるのですが……、

コミック百合姫読者層チャート 「一迅社WEB|広告について」より

男女比は『百合姫』誌で編集部側自ら正確性を揶揄していたので頼りにならないデータかもしれません。年齢層は偏りなく散っています。でもこの年齢構成が正しいとすると十代が四分の一強を占めているわけで、ティーンの感性に合わせなくていいの?という不安はやはり覚えてしまいます。

百合漫画誌ということ

 百合漫画を二つの側面に分けてみました。

  • エンターテイメント
  • 性的マイノリティのよりどころ

 『つぼみ』や『Lily』『百合少女』『ひらり、』は明確に前者、『百合姫』も現在の掲載漫画から判断すれば後者の要素は見出しづらいのですが、三浦しをんのエッセイや掲載漫画家たちのネット上の言動からすると単なるエンターテイメントとして作品を送り出している人ばかりではなさそう。
 『百合姉妹』創刊号では「乙女ちっくな学園生活のための学校選び 女子校へいこう 〜お姉様Get大作戦〜」なんて特集が組まれ、実際の校名を挙げ学校パンフの紹介をしていたりしました。これはマイナーセクシャリティを持つ、あるいは持ちかけている現実の少女たちへのアプローチだったように思います。『百合姉妹』時代にあったこの手の記事からは『アニーズ』や『カーミラ』のようなセクシャリティの固まった層向けではなく、少女期の定まらないセクシャリティを受け止める総合誌になれる可能性を見た気がしました。結果的に少女世代の読者は少数であったのかもしれませんし『百合姫』へ発展しほぼ漫画オンリーになりましたが、読者欄だけは少女たちのために開き続けて雑誌の姿勢を示していたように思います。
 そんな観点からすると若い読者を対象にした誌面作りをやめていいの?と不安になります。雑誌が真にコンテンツを届けたい層と、購入している層がズレているからといって、実際の読者層に内容を合わせてしまうのは既存の読者も望まないのではないでしょうか。実際の年齢層や性別とは別に、メンタルフィメール――ならぬメンタルガールに向けた発信する、というのは夢の見過ぎでしょうか。

ポスト・マリみて

 百合ジャンルの問題点となっている「ポスト・マリみて」の不在。編集長インタビューではポスト・マリみてが生まれず百合は浸透して落ち着いた、という話に続いて

——それがオチですか(笑)。ちなみに、現在のアニメ化最右翼作品はなんでしょう?
 現状だと一番近いのは『ゆるゆり』でしょうか。

百合姫Vol.21 P.205 「編集長インタビュー」より

と『ゆるゆり』が挙げられます。確かにアニメに合いそうたけれど、ポスト・マリみてかというと違う気も。
 ポスト・マリみてってなんだろう?
 一番近い位置にたどりついたのはおそらく『青い花』。準ポスト・マリみてが百合専門誌以外から出てきたのは皮肉です。『青い花』には迷いなく同性愛に踏み込んでいくキャラ、異性を想いながら同性から寄せられる憧れに合わせて己を装うキャラ、同性愛者として生きる道を選べずに“卒業”していくキャラ、と百合恋模様を描いただけではない思春期の少女たちの痛みを描いていて、百合というテーマそのもので専門誌をぶっちぎる深みを見せていると思うのです。
 ここにテーマ性で肉薄できそうだったのが金田一蓮十郎ではなかったかと私は思うのですが、一冊分を描いて登場しなくなってしまいました。残念。

 “萌え”を備えながら百合ならではの問題点を十分に深化させられ、かつ、フェミやリブの理論武装によって一般の読者・視聴者からも嫌われないような、そんな作品がポスト・マリみてなのではないかな、とあまり根拠なく思ったのでした。

異ジャンルからのコミカライズ

 『ハーモニー』を『百合姫』でコミカライズするという報せには驚きました。SF作家・伊藤計劃のトーンは「暗」で「鬱」。現状の百合ものとはかなり異質だったからです。『百合姫』の読者層の拡大というよりは『百合姫』読者の嗜好範囲拡大に貢献してしまいそうな予感。
 一方でSFファン層は百合を受け容れる素地も持っている気もします。SFはライトノベルやアニメ、萌えとも親和性の高いジャンルです。70年代少女漫画にはSF設定の作品も多かった。脈はあるはず――ですがSF読者はかなり規模の小さなパイのはず。
 そういえば『百合姫』で小説掲載の決まっている森田季節は九月末に『不動カリンは一切動ぜず』でハヤカワ文庫JAからSF百合新刊が出ています。
 ……ついでに古生物ファンにもアプローチしてみればいいのに、って楽しいのは私だけか。アノマロカリスの擬人化百合とかエビからイカにクラスチェンジしたネクトカリス百合とか。ウミユリとか。

まとめ

 Vol.22の予告によると、Brand-new Commersとして柏原麻実、紺野キタ、北別府ニカ、片瀬わか、テクノサマタの名が挙がっており、原点回帰――というよりもこれまでの『百合姉妹』『百合姫』をぜんぶ突っ込んでしまおうとでもするかのよう。

百合姫Vol.22 予告内容
コミック23本
小説2本
エッセイ2本

 Vol.21までは毎号コミック15〜18本のペースでしたのでVol.22は相当に厚くなるのではないかと思います。Vol.23以降もそのボリュームを維持するのかどうかわかりませんが、『つぼみ』に対して厚みでも勝負をかけてくるのかもしれません。

 ライバル誌と真っ向勝負の総力戦。
 個性派でちょっとオタ気まじりのつぼみちゃんと正統派美少女の姫ちゃんの雑誌擬人化ライバル百合とか燃えません? 姫ちゃんに憧れるひらりちゃんは清純派無邪気キャラで泣きぼくろ。(「、」をほくろに見立ててみました。) リリーは横浜育ちでちょっとバタくさい子。『百合少女』は……擬人化ネーミング難しいな。出版社名を取ってコスミちゃんとか?

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『百合姫S』Vol.14 2010 AUTUMN

コミック百合姫S Vol.14 2010年 11月号
一迅社
2010.9.18
880円

★★★☆☆

 『百合姫S』最終号の感想です。

死神アリス いづみやおとは

 一段落の日常編、かと思いきや。引っぱり展開で続きは百合姫ONLINE。真崎の過去に焦点が当たったけれど、ひなげしのいた組織も詳しいことがわからないまま。今後明らかになるのかな?

姫と魔法使い 直江まりも

 直江まりもは久々。学園ホラーやプール話以来でしょうか。好みの絵柄と作風。リニューアル後の『百合姫』でも読めるといいな。最後のコマはあれですね。乳落とし。襟ぐりの大きなスクエアネックは魔法よりも強力。

年の差マイステディ 谷村まりか

 年の差コンビは甘々で作者らしいのですがライバルがローティーン向け少女漫画的で強烈でした。

ふ〜ふ 源久也

 「ふ〜ふ」は毎回読んでてめちゃくちゃ恥ずかしい気分に。このシアワセ空間はなんなんだー。

むげんのみなもに 高崎ゆうき

 今回は二話掲載。みなもが子猫を拾ってきて一騒動。絵柄は愛らしいしするっと読んだ感じはライトですが、じっくり読んでみると「やばくない?」と思ってしまう。設定自体は「死神アリス」も同じ血みどろなのに「むげんのみなもに」に感じる危うさはなんなのだろう。

marriage black 速瀬羽柴

 むむむ。璐蝶ルーティエとリリスの二人はどうなったんだ。と引っ張って続きは百合姫ONLINE。大急ぎでまとめずに連載継続してくれて良かった。

flower*flower 石見翔子

 今回は朱はよく頑張った。へたれだけど頑張った。へたれなりに。へたれだけど。ここのところ陰謀展開で固着していた人間関係が久々に動いた気がします。そして蒼兄貴の思わぬ秘密が! 百合姫ONLINEに続く。

カシオペア・ドルチェ 高木信孝

 新キャラ登場でドールアイ職人のカレンのフォロー。ドールが動いてしまう件とエルザ師匠との関係とが綾となって織られている印象。こちらも百合姫ONLINEに続く。

絶対少女アストライア 東雲水生

 32ページとボリュームたっぷり。それでももう少しじっくり読みたい話でした。陰謀解明編とか伊織先輩の揺らぐ気持ち編とか用意されていたんじゃないかな〜という感じ。

おっかけ×girls 石田敦子

 急展開。アストライアとおっかけ×girlsの二本は再編のあおりをモロに受けてしまった気がするー。もったいない。

ゆるゆり なもり

 一挙8話100ページ。百合姫Sの四分の一はなもりでできているということに。

 『百合姫S』連載作品のうちのいくつかはリニューアル後の『百合姫』に移動する模様。でもそうなると無印よりも対象年齢が若干低めに感じられた『百合姫S』作品と、ターゲット読者の中の最年少層向けの誌面作りはやめるというリニューアル『百合姫』の方針とにギャップが出そうな気も。百合姫オンライン(仮)も始動するとかで大混乱の予感。
 創刊号から最終号まで読んできたものの未だ休刊という実感が湧きません。掲載作のうち八つが何らかの形で続くのがわかっているから、かな?

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『レンアイ・女子課』第一巻 森島明子

レンアイ・女子課 1巻
森島明子
一迅社IDコミックス 百合姫コミックス
2010.9.18
900円

★★★★☆

 百合姫連載の単行本化。連載作四話+掌編描き下し「可愛いひと」+あとがきが収録され、カバー下には撮影イベントで作成された設定っぽい蜜姫と白羽さんのイラスト。ウェディング会社を舞台にしたOL百合でウェディングドレスいっぱい、という印象の一冊。ドレスが出てくるのは三話と四話だけですが。
 キャラは『瑠璃色の夢』の「ハニー&マスタード」と地続きで中高生ヒロインの多い百合漫画の中にあって平均年齢高め。これは森島明子作品共通かな。今回はオフィスが舞台ですし、しっかりお化粧してるゾ、というマスカラ&付け睫毛感のあるキャラ多数。
 ウェディング会社で百合カプというのは、作中で白羽さんも呟いているように少し皮肉にもなってたかも。同性カプで結婚式というのはそう簡単ではなさそう。それだけに(仕事ながら)身につけた登場人物たちのウェディングドレスは切なかった気もします。いえ、直接「ウェディングドレスが切ない」シーンではないのですが。
 一巻のメインとなっているのは生真面目な白羽さんと肉食系女子アリス。これに「ハニー&マスタード」から活躍している蜜姫&香のエピソードが絡められます。略奪愛的な話が苦手な人は前半でちょっと警戒してしまうかもしれませんが、嫌な思いはせずに済むはず。

 二巻以降で活躍しそうなキャラは……城王主任と鐘古デザイナーかな? 巻頭のカラー扉にもいるし。この二人、ジュリアナ世代かよっ、と調べてみるとジュリアナ東京閉店は1994年。蜜姫や香とも歳はそう離れていないのかも。城王主任は好みのキャラデザということもあり登場回が待ち遠しいです。

 あとがき漫画、テンション高くて楽しそうでした。

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『ブルーフレンド 1』えばんふみ

ブルーフレンド 1
えばんふみ
りぼんマスコットコミックス
2010.9.15
420円

★★★☆☆

 『りぼん』に掲載された百合もの。
 思った以上にしっかり百合ものでした。そしてしっかり少女漫画。『りぼん』らしい、と思ったのでした。

 主人公は陽気なソフトボール少女・歩。中学二年に進級しとびきりの美少女・美鈴と同じクラスに。人を近づけようとしない美鈴だったけれど……と始まるお話。気さくな歩は壁を作ろうとする美鈴ともあっさり打ち解けることができたものの、問題だらけの美鈴の性格に見事に振り回されることになるのでした。
 その振り回しっぷりや設定されるトラブルイベントがくっきりはっきり少女漫画的。強烈な、インパクトのある障害を次々と設定してきます。あざといかな?とも思ったのですが、そのメリハリの付け方は『百合姫』や『つぼみ』『ひらり、』のような百合専門誌ではあまり見ないタイプで、久しぶりに「ああ、少女漫画を読んだ」という気分になりました。
 友情と友情以上の執着と周囲の目と異性と、と百合ものの要素と少女漫画の要素をがっちり押さえてきていて百合ファンには少女漫画の香りが、百合ものに触れたことのない少女漫画ファンには百合ならではの要素がそれぞれ新鮮に感じられるのではないでしょうか。

ブルーフレンド1帯 帯には“百合”を強調する文字。単行本は百合ファン向けにアピールされている印象。

 二巻が楽しみ。

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『青年のための読書クラブ 2』タカハシマコ

青年のための読書クラブ 2
タカハシマコ+桜庭一樹
Softbank Creative フレックスコミックス フレア
2010.9.11
600円

★★★★☆

 桜庭一樹原作、タカハシマコ作画による『青年のための読書クラブ』第二巻。
 やー。やっぱりこの原作+作画の組み合わせはいい。桜庭一樹も好きでタカハシマコも好きでという人間には一冊で二度おいしい。原作ファンが読んでも面白くて、タカハシマコファン的にも嬉しくて、コミックで気に入った人が原作を読んでも面白くて、と理想のコミカライズ。
 二巻は「聖女マリアナ消失事件」と「一番星」の二エピソード。「聖女マリアナ消失事件」のボリュームが大きいので表紙のロックンロール少女二人の出てくる「一番星」の話は導入部のみ。原作ではこの「一番星」のエピソードはお気に入りランク上位だったこともあり見事におあずけ状態。三巻が待ち遠しくてたまらなくなったのでした。

 一巻では扉も含めて2ページだった巻頭カラーが二巻では8ページ。一巻各話の扉でカラーで描かれながら白黒収録されたページが改めてカラー印刷で収録されています。

 挟まれていたアンケート葉書には裏表紙の背景キャラを抜き出したワンポイントイラストが可愛らしくあしらわれていて、アンケートを出してしまうのがためらわれます。一巻のアンケート葉書にもシルエットキャラがワンポイントで刷り込まれてましたっけ。

 連載はYahooコミックにて最新話のみ無料で配信されてます。この提供サイト、ブラウザ依存する上に漫画ビューワは使いにくいし、YahooコミックのトップからFlexComixフレアのページがなかなか見つからない混乱具合もどうにかならないものだろうか……。

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『スコペロ』カサハラテツロー



スコペロ 全三巻
カサハラテツロー
メディアファクトリー

★★★☆☆

 カサハラテツローは百合漫画誌『つぼみ』に掲載されていたロボット物で知り、他にはどんな話を書いているのだろうと読んでみました。メカメカしい作風の作者になぜ百合漫画誌から声がかかったのか納得。

 『スコペロ』はスペースコロニー丸ごとが学校という舞台に赴任してきたダメ教師と無重力スポーツ・カプセルボール少女たちの話。一巻はほとんど舞台説明とメインキャラ紹介、二巻の半ば近くになって本格的にカプセルボールが描かれはじめます。そして三巻に入ると展開急加速。ヒロイン・サキの抱えた問題点が少しばかり急ぎ足でクリアされていきます。まとまり方に唐突さはなく、当初単にエキセントリックで嫌なやつっぽかった主人公の教師・文平にも共感を持てる締めくくりとなるのですが、もったいないなあ、というのが三冊通して読んだ感想でした。カプセルボールパートだけで五巻分くらいはスポコン話作れそうながっちりした設定なのにー。

 SF設定は突飛ではないリアル系でオリジナリティも高いです。監修にSF界では馴染みのある福江純。こういうガッチリしたSF背景のお話を作ってくる漫画家は今では稀少かも。サイバーパンクやバイオテクノロジーネタはどこでも見かけるようになりましたが、『スコペロ』のように低重力環境や人工重力環境を舞台として有効に活用した漫画は少ない気がします。
 作中には少女いっぱいで際どいアングルの萌え構図?やサービスシーン(お色気というわけではないけれど)もあるのですが、主人公教師のアクの強さとSFの香り、ギャグ調のキャラの振る舞いと描き込まれた絵柄に萌えよりも“濃い”印象が先に立ちました。

 カプセルボールは長編シリーズ化していればさらに深く広く展開させることができたのではないかと思います。例えば、変化球を活用するとか。
 無重力球技では恐らく変化球のバリエーションが増えます。ボールの自転と飛行速度のバランスによって起こされる空力効果が歳差運動とジャイロ効果を伴ってまっすぐに飛んでいたものが急に曲がったり、曲がりはじめてからさらに螺旋に近い動きをしたり、球場の壁による地面効果を併発したりするはず。これは上級者が投げる特殊なブーメランの軌跡が参考になるはず。最初は緩やかに螺旋上昇し、途中から急角度での上昇に転じ、最高点で宙返りをし、逆の弧を描いたり8の字を描いたりしながら降下してくるなんてのがあります。ボールの密度分布も不均一にすると面白い飛び方をするポイントが見つかるはず。空力のボールへの影響が強くなりそうなので、人の移動した軌跡にボールを通すことで変化を呼んだりもできそう。

 SF設定がイイ!と思った半面、読む人を選びそうにも思えました。ゴツゴツしたSFがお好みの人にはお勧め。一読するとハマる人もけっこういるはず。上で『つぼみ』云々と書きましたが、脇役に百合設定自体はあるもののあくまで背景。百合方面の期待はしない方が良いです。

 作者は『RIDEBACK』というシリーズで近未来バイクロボ+学生運動のお話も描いている模様。アニメ化もされています。▷公式サイト。また、年明けからコミック@バンチにてザッドランナーなるマシン・スポーツ物を連載する予定のようです。

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『世界の化石遺産』P.A.セルデン J.R.ナッズ

世界の化石遺産―化石生態系の進化
P.A.セルデン
J.R.ナッズ
訳:鎮西清高
朝倉書店
2009.11.15
5145円

★★★★☆

 読みはじめてすぐは「読みづらい。目が滑る」と思ったのですが「序論」を読み終え「Chapter 1. エディアカラ」の「エディアカラ化石群の層序的位置とタフォノミー」の項まで読み進めて一気に面白くなりました。具体的な地層の話の中で化石が生まれた状況を推測しています。これだ!と感じました。化石はそれぞれ環境ごとに生まれるプロセスに違いがあるだろうなとは思っていたのですが、産地・地層ごとにタフォノミー(化石成因論)を詳しく解説した本はあまり見かけません。タフォノミーに触れている本もあるものの検証を受けた説ではなく筆者独自の推測が多い印象で、この本のように柱のひとつに据えてしっかり解説しているのは珍しいように思います。もちろん成因専門の本ではなく、産出する化石の紹介や生態の推測、当時の環境、進化史の中での位置づけなどが説明されるのですが、地形、地質、成因、産出化石、古環境とセットで結びつけられ、具体性を帯びていて生々しく感じられました。
 もっともタフォノミーの核となっているのは産状や産出化石の種類などの状況証拠で、土壌の化学的分析や実験によって無酸素状態や急速な埋没、急速なノジュール化が直接実証されているわけではなさそうです。

 化石そのものの紹介は比較的コンパクト。産地を代表する化石の解説と写真に軽く触れている程度なので『ゾルンホーフェン化石図譜』のような産地別のタイトルのつけられた写真主体の解説本とは相補的に使えると思います。

 巻末の「訳者あとがき」にはタフォノミーに関する参考文献として『古生物の科学 5 地球環境と生命史』が紹介されていたので該当部分を図書館で読んできたのですが、う~ん、『世界の化石遺産』に書かれているのと詳しさの程度は変わらない感じでした。むしろ具体的である分『世界の化石遺産』の解説にアドバンテージがあった気がします。

 原題は“Evolution of Fossil Ecosystems”。Chapter1のエディアカラからChapter14のラ・ブレアの哺乳類化石まで時代を追って進んでいきます。化石の作られ方、古環境に関心のある人にお勧め。産出する化石そのものにより大きな関心のある人は『〜化石図譜』のような個々の化石コレクションを詳しく解説した本の方が楽しめると思います。

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『吉田式球体関節人形製作技法書』吉田良

吉田式球体関節人形制作技法書
吉田良
ホビージャパン
2006.9.16
2800円

★★★★☆

 球体関節人形の制作ガイドです。

 長らく買おうかどうしようか迷っていた本。実際に自分自身で作る時間は取れそうにないものの、こういうものを自作してみたいという欲求だけはあって買ってしまいました。写真集の類は数冊手元にありますがドルフィーにさえ手を出していないのでこのまま憧れで終わるかもしれません。
 が、こうして制作ハウツー本を読んでしまうとふつふつと粘土いじりがしたくなります。
 webだと球体関節人形 -黒耀の鏡-という人形制作サイトが説明も細かく写真も多く作業のイメージが得られました。

 この『吉田式〜』は大きめの帯のようなカバーがかけられていて136ページ。A4フルカラー。印刷も良く、作業解説のために入れられた写真もビシッと決まっていて、作りかけの人形の写真そのものが作品のよう。この本はタイトルの通り「技法書」であることに間違いはないですが、人形の作り方そのものを魅せる本でもあると思います。スーパードルフィーが欲しい、とカタログを眺めている人がこの本を読んでしまえばたちどころに「作りたい」に変わってしまうかも。2800円も高いとは思いませんでした。
 吉田良の人形たちの写真も巻頭、巻末、章の変わり目に入れられ目を楽しませてくれるミニ写真集にもなっています。撮影は吉田良本人の手によるもの。

 人形作り、思い切って始めちゃえばなんとかなる、のかな?

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『東京奥多摩のヒカリ』

東京奥多摩のヒカリ
磯本つよし
少年画報社ヤングコミックコミックス
2007.7.4
580円

★★★☆☆

 これはなんというか。
 ドカティ天国。

 イタリアのオートバイにDUCATIというのがあります。車で言うとフェラーリ……ほどは高価ではありませんがスーパーカーっぽいイメージの二輪車ばかり作っています。motoGPやスーパーバイク選手権のようなレースでも活躍しているパフォーマンスイメージの強いメーカー。日本にも熱狂的なファンがいます。

 作者も自分でMikeHailwoodReplicaという1980年代のモデルに乗っている熱烈なドカティファンであるらしく、この『東京奥多摩のヒカリ』はドカティだらけ。750F1改、ベベルギア駆動カムの900SS、排気量不明のSL PANTAH……。こんなにドカティオンパレードな漫画は他にないでしょう。ただひたすらドカティを描くために作られた漫画であると思います。
 BRAVO!

 作中ではオートバイアクションがトライアル車のような非常にアクロバティックな走り方に脚色されています。現実離れした派手な走りっぷりで乗り物がドカティでも金田のバイクでも大差がなくなってしまっているのが残念。
 また、ポップなノリのオートバイアクションを中心に話が組み立てられているためかストーリーが「オートバイを走らせる絵面を作るため」っぽくなっていた感じも強かったです。「ドカティを存分に描きたい」というのとポップなSF的アクションの作風の融合ということで必然かな?とも思ったのでした。ストーリー漫画としては以前読んだ『エナ』の方が楽しかったのですが、とにかくドカが走りまくるというだけでドカファンには嬉しいはず。ドカティファン、もしくは60年代〜80年代の二輪・四輪ファンにお勧め。

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『ひらり、』Vol.2

ひらり、 Vol.2
新書館
2010.8.25
998円

★★★★☆

 Vol.2でのトータルの印象は「少し対象年齢下がったかな?」でした。読んでいて気恥ずかしくなる話が増えた気がします。「ピュア百合アンソロジー」といううたい文句にはぴったり。あらすじは公式サイトで紹介されているので割愛。

カバー 遠田志帆

 めっちゃ好みの絵柄。大判ポスターとかあったら欲しい。和服の腰の線いいなあ。

口絵 今村陽子

 大きなサイズで見るともっと映えそうなタッチ。

あさがおと加瀬さん。 高嶋ひろみ

 百合漫画でストレートに「好き!」とモノローグ表現するのは新鮮でした。繊細な表現が好まれるので回りくどくなっちゃってることが多いジャンルなのかな。

指先の声 前田とも

 熱くなれるものを持たない主人公といつもスケッチブックを持ち歩いている子の話。学校という日常と、さぼって得た日常の延長と。白黒だけど廃墟の空の青さが目に浮かぶよう。モデルにした廃墟はどこだろう。三井三池炭坑の万田坑跡あたりかな。

箱庭コスモス 桑田乃梨子

 ふしぎ研究会なるものを求める転入生の主人公。ふしぎ研究会よりあんたが不思議だよ!と言いたくなる桑田乃梨子キャラ。百合なのかと考えると微妙なところですが、ジャンル:桑田乃梨子、で納得できてしまう。

ビスケット心中 三島くるみ

 36ページで割とボリュームのあるお話。不吉な夢に亡くなったおばあちゃんに幽霊に仲の良い相棒に。材料も豊富で組み合わせも良くて。

ほんのともだち ささだあすか

 これは甘酸っぱい。ほんのともだち、いいなぁ。

夏が終わっても暑い 仙石寛子

 前号では大正ロマン風味の作家ものでしたが今回は掌編腹肉物語。このギャップは一体。

雨降れば 湖西晶
 雨女と相合い傘。『かみさまのいうとおり』で四コマギャグの印象が強い作者ですがしんみりしっとりの8ページ。でもオチのおまけはやっぱりギャグっぽい軽妙なノリで締めくくり。

ピンク×ラッシュ TONO

 読み切りかと思いきやVol.1の続編が来たTONOのアイドル話。確かに百合ストーリーなのだけれど元々の作風が性別も種族も割と自由だったりする人なので桑田乃梨子同様こちらも、ジャンル:TONO。

七海先輩とありさちゃん 石堂くるみ

 読み応えある34ページ。お話が好みでした。学園ものの日常話で特別派手でもアクの強い話でもないのですが面白かった。

あなたといれば 朝丘みなぎ

 絵も設定も好みで漫画としてもいい感じ。スケートを辞めてしまう理由が現実的だったのがお話のトーンからすると少し違和感あったかな。

マイン スカーレット・ベリ子

 これも好き。面白かった。最後のシーン、首の曲げ方で攻め受け逆転して見えてしまった。もったいなーい。

泣いて笑ってまた明日 藤沢誠

 Vol.1に載せたお話のが好み。野球と作者の絵柄というか作風に距離感を感じてしまった。

Even 未幡

 幼馴染。成長とともに生じたギャップ。好きなタイプの話だ。

純粋セカイ培養 榊花月

 主人公のダメな現状。追い討ちをかけるように現れた過去。文章であることで刺さる痛さになってる気がする。

 Vol.1から完成度高めで登場してきた『ひらり、』。Vol.2ではVol.1に漂っていた危なっかしい部分が見えなくなったように思います。「ピュア百合」が今後どんな方向に向かうのか楽しみです。

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『Papa told me ~カフェで道草~』榛野なな恵

Papa told me ~カフェで道草~
榛野なな恵
集英社クイーンズコミックス
2010.6.18
440円

★★★★☆

 榛野なな恵のPapa told meシリーズ。六月に出ていた最新刊。27巻まで出ていたヤングユーコミックスの後は少し判型が小さくなり、『Papa told me ~街を歩けば~』『Papa told me ~私の好きな惑星~』とおよそ年に一度のペースで続刊が出ていました。掲載誌も『ヤングユー』から『コーラス』へと移りましたし、一時期再録の再編版や完全版ばかりを出していた時期があって最新話をフォローできていない人も多かったのではないかと思います。

 PTMのシリーズはサザエさん時空でスーパー小学生の知世は大きくなりません。大きくはなりませんが、1987年から継続されているだけに雰囲気も少しずつ変化してきました。母親が居ない、ということを軸に展開された初期の話。マジョリティ故の無神経さに立ち向かうエピソードが増え、“俗物”と闘い、個を重んじる気高さを訴え、と振り返ってみると時代を反映してきたようにも思えます。
 コミックスがナンバリングされなくなり、小さな判型で出されるようになって知世は幼く、おおらかになりました。お話自体からも尖った面は目立たなくなり、穏やかな童話調に。
 これは何を意味するのでしょう。
 榛野なな恵にとっての“敵”がいなくなってしまったのでしょうか。今の時代に生きている身には歴然たる敵のいなくなった的場一家が時代を映しているようには感じられないのですが、あるいは十年後にこのナンバリングされなくなったPTMを振り返れば「ゼロ年代末は確かにこうだった」と思えるのかもしれません。

 『ピエタ』や怒れる知世に代表されるような、榛野なな恵の紡ぐささやかな闘いの話もまた読みたいのも確か。『百合姫』あたりで単なる百合礼賛ではない尖った榛野なな恵を見せてくれたりしたらそれもまた嬉しいのだけれど。

 今回の『Papa told me 〜カフェで道草〜』の袖に並んだ既刊一覧を眺めてみたら『ピエタ』も『パンテオン』もリストされていませんでした。なんでだろう? 一度PTMでイメージできちゃうと他のものは売りにくいのかなぁ……。

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