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『世界の化石遺産』P.A.セルデン J.R.ナッズ

世界の化石遺産―化石生態系の進化
P.A.セルデン
J.R.ナッズ
訳:鎮西清高
朝倉書店
2009.11.15
5145円

★★★★☆

 読みはじめてすぐは「読みづらい。目が滑る」と思ったのですが「序論」を読み終え「Chapter 1. エディアカラ」の「エディアカラ化石群の層序的位置とタフォノミー」の項まで読み進めて一気に面白くなりました。具体的な地層の話の中で化石が生まれた状況を推測しています。これだ!と感じました。化石はそれぞれ環境ごとに生まれるプロセスに違いがあるだろうなとは思っていたのですが、産地・地層ごとにタフォノミー(化石成因論)を詳しく解説した本はあまり見かけません。タフォノミーに触れている本もあるものの検証を受けた説ではなく筆者独自の推測が多い印象で、この本のように柱のひとつに据えてしっかり解説しているのは珍しいように思います。もちろん成因専門の本ではなく、産出する化石の紹介や生態の推測、当時の環境、進化史の中での位置づけなどが説明されるのですが、地形、地質、成因、産出化石、古環境とセットで結びつけられ、具体性を帯びていて生々しく感じられました。
 もっともタフォノミーの核となっているのは産状や産出化石の種類などの状況証拠で、土壌の化学的分析や実験によって無酸素状態や急速な埋没、急速なノジュール化が直接実証されているわけではなさそうです。

 化石そのものの紹介は比較的コンパクト。産地を代表する化石の解説と写真に軽く触れている程度なので『ゾルンホーフェン化石図譜』のような産地別のタイトルのつけられた写真主体の解説本とは相補的に使えると思います。

 巻末の「訳者あとがき」にはタフォノミーに関する参考文献として『古生物の科学 5 地球環境と生命史』が紹介されていたので該当部分を図書館で読んできたのですが、う~ん、『世界の化石遺産』に書かれているのと詳しさの程度は変わらない感じでした。むしろ具体的である分『世界の化石遺産』の解説にアドバンテージがあった気がします。

 原題は“Evolution of Fossil Ecosystems”。Chapter1のエディアカラからChapter14のラ・ブレアの哺乳類化石まで時代を追って進んでいきます。化石の作られ方、古環境に関心のある人にお勧め。産出する化石そのものにより大きな関心のある人は『〜化石図譜』のような個々の化石コレクションを詳しく解説した本の方が楽しめると思います。

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