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2012年6月の9件の記事

『NOVA7』大森望編

NOVA7
扇智史、小川一水、片瀬二郎、壁井ユカコ、北野勇作、谷甲州、西崎憲、藤田雅矢、増田俊也、宮内悠介、編集:大森望
河出文庫
2012.3.20
★★★★☆

 NOVAシリーズ、毎回気に入るものとあまり好みに合わないものと分かれてしまいます。今回は気に入ったもの二本、次点が二本。全十本中で。

Nova7

スペース地獄編 宮内悠介

 NOVAシリーズに載った「スペース金融道」の続編。債券回収屋主人公のスペオペといった雰囲気のお話。宮内悠介は作風の幅が広い人なのだと感心してしまいました。好みとしては『盤上の夜』やSFMに掲載された「ヨバネスブルグの天使たち」を書いた宮内悠介が好みかな。

コズミックロマンスカルテット with E 小川一水

 小川一水は微妙に波長が合わないのですが今回もあとちょっと……というところで馴染めず。でも文句なしに面白いハズ。楽しめなかったのが悔しい。宮内悠介が金融スペオペならこちらはある日突然現れた美少女宇宙人が結婚を迫ってくるといううる星型スペオペ。ラノベっぽい設定で四角関係を楽しく展開させます。

灼熱のヴィーナス 谷甲州

 『NOVA3』掲載の宇宙土木シリーズ。今回は金星大気中に浮揚させたプラント建築のお話。ああ、これが読みたかったのよの甲州節。谷甲州が書くならこれからもなんやかんやと言いながら読むと思います。たーだーし。今回はちょっと不満も。けっこう派手な誤植があることと、浮揚プラントの形状・構造を思い浮かべるのに苦労したことの二点。後者は『NOVA3』の「メデューサ・コンプレックス」でも感じたことなのだけれど、図解を入れてでも説明が欲しかった。読み進んでいけばわかることではあるのだけど……。今回の話ではプロジェクト管理をする上層部の話にも触れられていて、この部分は東日本大震災での政府や東電の対応を連想せざるを得なかったかな。今回一番のお気に入り。

土星人襲来 増田俊也

 うーむむむむ。主人公であるヘルス嬢と自称・土星人のコメディ。コミュニケートできているのにディスコミュニケートが生じる通じない会話のまだるっこしさとその繰り返しがギャグになっているのだけれど、途中を読飛ばしたくなってしまった。この話、数枚のショートショートでも成立しそう。第二回創元SF短編賞に応募して選に漏れた人が読むと「これに負けたのか……」と頭に土星の輪っかが浮かぶんじゃないでしょうか。

社内肝試し大会に関するメモ 北野勇作

 非常に掴みどころのないお話でした。職場での肝試しが行われます、と始まる話でイメージは「バイオハザード」シリーズのようだったりするのだけれど、ええと、これ以上説明するとネタバレになっちゃうかな。ストーリーは明確にあって、なるほどという構造が与えられていて、でも何を描こうとしたお話?みたいな。思えば北野勇作は『かめくん』からずっと掴みどころがなかった気がします。

植物標本集ハーバリウム 藤田雅矢

 すごく良かった! 植物愛溢れる作品で本物の植物オタクであることがひしひしと伝わってくるとっても植物なお話。SFとしては素朴な部類の話ではあるかもしれませんが、専門家ならではのセンスを感じさせてくれたのが楽しかった。幻の新種植物が収められた植物標本集ハーバリウムにまつわる物語。オススメ。

開閉式 西崎憲

 「扉」のイメージを描いたお話。主人公だけに見える扉が生き物にはついていて――という不思議な世界が描かれます。これもなんとも掴みどころのないお話ではあるのですが「扉」のイメージをただ描きたかったのかな、と思えたのでした。割と好印象。

ヒツギとイオリ 壁井ユカコ

 読み進めるのが辛かった。『原色の想像力2』での「花と少年」と共通する種類のストレスを感じる話でした。素材は「サトラレ」で、触感が周囲に漏れてしまう少年と、痛覚や温感を持たない少年の関わりを描きます。

リンナチューン 扇智史

 ライフログの未来を描いた話。詳細な複合現実AR技術で復元した死んだ恋人の記録を慈しみながら過ごす主人公。うーん。これはですね、ワタシ的には非常に趣味に合うというか素敵だなと思ったのですが、どこがどう素敵なのかを書くとネタバレてしまうという。いえ、重要なネタではないのですが。学園物の瑞々しさが読んでいてとても心地良かった、とだけ紹介しておきます。

サムライ・ポテト 片瀬二郎

 ハードSF苦手な人にもお勧めしたい。素朴な感じのロボットもの。チェーン店の店頭に立つコンパニオンロボットたちのお話で、ちょっと切ないです。「花と少年」のストレスフルないじめネタとは打って変わったほのぼのストーリー。ハードSF好き的には意識や人工知能という点でもう一歩踏み込んだアプローチが読みたかった。

 あとがきも面白かったです。掲載予定作が間に合わないかもしれない、ということであらかじめ代原を手配していたということなのですがそのいきさつに笑ってしまいました。昔であれば内輪ネタであったろう編集の内幕があとがきになってしまうのも“今”なのかもしれません。

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『かのじょなメイド』かねだなつみ

かのじょなメイド
かねだなつみ
一迅社百合姫コミックス
2012.6.18
★★★★☆

 一冊丸ごとオール描き下しの百合漫画です。百合姫コミックスのタイトル数が少ない頃はこうした完全描き下しの単行本も続きましたが久しぶりかも。作家さんも初めて知った方で、発売前の情報もタイトルくらいしか告知がなく、予備知識ゼロで読みはじめました。

 絵は表紙の感じのままで少女漫画寄りの印象です。タイトルに“メイド”とあるのでいわゆるメイド物かな?と想像したもののメイド服でご主人様〜なノリではなく、お金持ちのお嬢様がヒロインで、主人公は学校での世話係バイトという設定。百合姫コミックスの完全描き下しはえっち描写アリのものも多いのですが、このお話ではキス+αくらい。

 お嬢様学校が舞台の学園物。世間知らずなお嬢様の天真爛漫っぷりに主人公が振り回されまくるというパターンで、八つに区切られてはいても一繋がりのお話です。ドラマは設定されていますがあまり重くなりすぎないのほほんとした雰囲気でストーリーも重過ぎず、軽過ぎずな感じ。もう少しストーリーのアクが強くてもいいかな、とも思いましたが絵が割と好みで好印象と鳴りました。表紙の絵柄でぐっと来た方にお勧め。

 あとがきはないのかな?と表紙カバーを外してみたらカバー下にたっぷりありました。

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『つぼみ vol.18』

つぼみ vol.18
芳文社 マンガタイムKR GLシリーズ
2012.6.12
★★★★☆

 今回最終回のものが二本、次で終わりのものが一本。

菊花の園 黒田bb

 表紙との連動漫画。二ページ。制服の魔力。

星川銀座四丁目 玄鉄絢

 星川銀座、長く続いてきましたが次回最終回予告ありました。湊先生との生活が危うくなった乙女。どうする!?という今回のお話。ぉぉぅ。とても良い回でしたが原稿が未完成稿でした。単行本を楽しみにしてますっ。

総合タワーリシチ あらた伊里

 新キャラ投入だ〜。元々人数が多い漫画でさらに人が増えて――って総合友だちタワーリシチってタイトルからして人が増えそうな感じだったっけ。

キャンディ 鈴木有布子

 最終回です。前回どうなるのえええ〜という引っ張り方でしたがきれいに解決編。絵柄が好みでキャラもバシバシ立ってストーリーも毎回きちんと見せ場があって納得の行く展開という全部揃った実力派。他の作品も探してみようと思います。面白かった。

ベツキス 百合原明

 Dolceに載った短編も素敵だった百合原明。今回は新キャラ投入ですよ。フリル&レース度アップですよ。

前略、百合の国より 須河篤志

 前号からの続きでリンク度高いです。なんというSキャラ。今回もノートのお話作ったのは金髪ちゃんのツレの眼鏡さん……なんですよね? けっこうややこしい状態のような。

魚の見る夢 小川麻衣子

 絵柄と話の雰囲気に少しギャップのある感じのするシリーズ。今回はじっとりと重い呪縛のぞわぞわ感のあるお話でした。

むすんでひらいて イコール

 このお話も今回最終回。卒業をテーマに作者独特のぷに感?濃厚な雰囲気で締めくくりました。単行本も八月予定の模様。

エデンの東戸塚 袴田めら

 いつもの袴田めら……ですが今回は日吉の爆弾発言で次回に引っ張りました。

女王蜂のジレンマ コバノ

 画力の高さは一目瞭然。ストーリーもぐっとくるものでこれはイイ人連れてきたな、他にはどんな本を出しているのだろう、と検索してみたものの見つからず。黒髪メガネの優等生さんのキャラの立ち具合とかちょっとツンなところのあるチャラい系ルックスキャラの凛々しい一面とか非常に印象が良いです。どう見ても実力派……なのに正体不明の作者。

神さまばかり恋をする 一花ハナ

 縁結びの神様の出てくるほのぼのしたお話として始まったシリーズですが、面白そうな部分に踏み込んできました。百合漫画、というか恋愛漫画は基本的に共感のお話になるのですが共感にフォーカスすれば断絶もまたクローズアップされてしまうわけで。神様たちとヒトとのギャップ、神様同士ヒト同士のギャップも描かれていくのかなと楽しみ。

花と星 鈴菌カリオ

 ハルとチカの回。この漫画は暴走キャラの主人公がいないとこうもしっとりというかシリアスになるのか、と頷いたのでした。これは次回の展開が楽しみ。

少女サテライト はみ

 星の名のつけられた少女たちを愛でるシリーズ。今回はちょっと変化球。

あたしの妹ちゃん 麻友紗央里

 横暴姉×天然妹。姉の横暴さを駆動しているのは妹愛であったり、天然素直キャラだけど微妙にズレたとこもある妹であったり。そして全体に忍び込んでいる不条理感。

しまいずむ 吉富昭仁

 マリのお宅訪問回+催眠術ネタの二本立て。マリの部屋オタクっぷりがすごかった……。

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『悪戯ちょうちょ1』綾瀬マナ

悪戯ちょうちょ
綾瀬マナ
双葉社 Highアクションコミックス
2012.6.12
★★★★☆

 クラシック音楽+百合テーマの漫画です。

 正直、難しいジャンルを選んだな、と思いました。クラシック音楽テーマでは『のだめカンタービレ』という巨大な壁が存在します。『ピアノの森』という継続中の名作もあります。
 クラシック音楽テーマ、プラス、百合でどんな世界になるのか――。

 主人公・さくらは型破りのピアノの弾き手。音楽ものの主人公では定番といってよい設定ですが、どう型破りなのかというと感情の激しさを音にのせてくることのできる“歌う”ピアノが特徴である模様。そしてさくらのピアノを歌わせるキーとなりそうなのがヒロイン・なのはの存在。精確さや堅苦しいアプローチを求められるクラシックの窮屈な世界にあってさくらの音を踊り出させるのはなのは、という百合ストーリー。
 演奏シーンも頑張っていて音を絵で表現するという方向でも好感が持てました。

 百合漫画としてのブレはなさそうで、さくら視点の切ない思いが綴られます。百合専門誌以外での掲載ではあるもののあとがきで作者が「百合漫画」と書いてもいるのでそのつもりで読んで良いものなのでしょう。
 続刊が楽しみです。

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『盤上の夜』宮内悠介

盤上の夜
宮内悠介
東京創元社
2012.3.22
★★★★☆

 はじまりと終わりの物語でした。

 囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋。ボードゲームを素材に織りなされる人間模様を濃厚な個性で描いた連作短編集。人間だるまにされた少女が手足の代わりに得たのは囲碁の盤面を身体感覚とする力だった――、と始まる第一回創元SF短編賞山田正紀賞の受賞作を先頭に、様々なボードゲームを様々なアプローチで描きます。チェッカーと完全解の物語「人間の王」では情報処理の話を交えて。異様な顔触れで囲まれた幻の麻雀王者戦を描いた「清められた卓」、古代インドを舞台にチェスの起源を追った「象を飛ばした王子」、将棋と歴史を特異な兄弟を通じて描いた「千年の虚空」、原爆の投下されたまさにその日に打たれた実在の本因坊戦との対比ですべての話を締めくくる「原爆の局」、の全六編。

 私は将棋はコマを動かすルールだけ、麻雀も囲碁も知らないので局面の具体的な描写を読んでも何が起きているのかわからなかったものの、問題なく楽しめたと思います。局面を具体的に説明しているシーンは控えめで、麻雀の一部と囲碁の棋譜が示されたくらいだったからかな。

 読み終えて、いえ、読んでいる最中から「すごい」を連発したくなりました。何がどうすごいのかわからないし、あるいはハッタリにしてやられたのかもしれませんがそのハッタリかもしれないものまで含めて作者の強烈な個性を感じます。

 ボードゲームの起源と終焉。歴史の決着。抽象的な描写、幻想の比喩、科学の言葉。ありきたりな凡人の文章では、絶対にない。けれども才気を迸らせた天性だけのものでもない。文章の背後に控えたイメージが強力で非凡なのだろうと思います。海外を放浪したり麻雀のプロを志したり情報処理技術者になったりといった著者略歴が付されていましたが、そういった様々な体験へと飛び込んで行ける人であることが作品の力の源にもなっているのかな、なんて思いました。

 SFらしさ、ということに関しては「らしさ」と「らしくなさ」が混在していて、実在感を備えつつも特異であるキャラクターたちを軸にした話の肌触りはあまりSFを感じさせないし、情報処理知識に由来する要素と時代を飛び越えて行く視程はSFらしさを支えているし、で「SFらしくないけどSFらしい」です。

 まあ、とにかく。

 読め。

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『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』ジョー・マーチャント

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ
ジョー・マーチャント
訳:木村博江
文芸春秋文庫
★★★★☆

 面白かった!

 エーゲ海のアンティキテラ島で海綿取りの潜水夫が発見したギリシア時代の沈没船。壷や大理石像とともに見つけ出された青銅の塊。それは精巧な歯車が組み込まれているかに見えたのだが――。

 トンデモ本ではオーパーツ扱いされているらしい古代ギリシアの遺物・アンティキテラの機械。その機械の発見から機能解明までの過程を解説した本です。地中海の海綿取り文化や潜水服・潜水病の歴史、機械史、天文観測技術史を交えつつ古代ギリシアの機械に迫ります。レントゲン技術の発展とともに進展するアンティキテラの機械の分析。二十世紀初頭に発見された機械の正体は、デッドヒートの研究合戦の果てに明らかになっていきます。なんてドラマを秘めた機械なのか。

 残念なのは訳に少々難があること。私の読んだのはハードカバー版なので文庫版では修正されているかもしれませんが、メカの説明やエピソードの繋がりがおかしく、誤訳を含んでいるように思われました。でも、そんなことは些細なこと。二千年以上前に作られた奇跡の機械のことを詳しく知るための貴重な本です。オススメ。

 アンティキテラの機械、インテリア的にデザインされた復元モデルがあったら魅力的な気がします。

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『Sis 秘密の恋心』

Sis 秘密の恋心
光文社
2012.6.4
★★★★☆

 百合漫画アンソロジーです。とても印象の良かったエッセイ的百合漫画集『女の子のナイショの話』と同じトコの本です。編集担当も同じ顔触れのよう。『女の子〜』参加作家で『Sis』に描いてる方もいたりして嬉しいアンソロでした。
 百合的には友情以上は確実、概ねキス程度までの描写で全年齢向け。

表紙 神葉理世

 『百合姫Wildrose』Vol.6でも表紙イラストを描いていた方。今回のも素敵なカラー。公式で表紙壁紙配布とかないのかな、と思ったけど光文社のサイトには書誌情報しかなかったのでした。

かげふみおに いづみやおとは

 『死神アリス』シリーズで『百合姫』読者には馴染みの作者。少し歳の差のある幼馴染との再会とキスをテーマに。

キスの魔法 卯崎ひとみ

 勤務先の薬局の化粧品研修に参加してみたらかつての同級生とばったり再会。ちょっとした出来事で疎遠になってしまっていたのだけれど――。

フキゲンなフォトジェニック 夏目

 古い写真で憧れた姿と似た印象の転入生。主人公はとても気に入って近づくのだけど当然転入生にはわけがわからず。話の流れが「理由不明で馴れ馴れしい謎の子」に戸惑う転入生寄り視点に合いそうで、なのに視点は主人公側で、ちょっとだけ戸惑ったかも。絵も雰囲気もすっごく好みです。他にも作品あるのかな、と検索してみたのですがペンネームだけでは絞りきれませんでした。

やめるときも 四位広猫

 主役二人の親が結婚して義理の姉妹になった……のかな? わずか四ページなので設定面の詳しいことはわからないのですがそんな感じ。短いけれど雰囲気があってぐっと来ました。アンソロ『百合少女』でも描かれていた方。

あかねさす紫のゆき 千歳あさひ

 兄の彼女が大好きな主人公。ある日、結婚すると聞かされて――。20ページの読み応えあるお話。区切りを付けるためのしっとりストーリーをコミカルタッチで。

不適切な彼女 江成いちこ

 とても好みの話! OLモノ。何かと噂話の種になる秘書課の美人が技術職の主人公の下に配置されてきて、という話。この作者、『女の子のナイショの話』でも面白かったです。

Broken Doll 香月稜

 可愛らしい絵柄。少女漫画というよりは萌えな感じで、ストーリーはちょっぴりヤンデレ味。

メガネトユルフワノソンナコンナ 石見翔子

 久しぶりの石見翔子。四コマ誌では一足先に復活を果たしていたようですが単行本組なのでこの話が私にとっての石見翔子復活第一作。や〜、無事戻ってきてくれて良かった。内容は……タイトルまんまです。占い大好きなユルフワにツッコミメガネが振り回されるお話。22ページあって読み応えもあります。『かなめも』の続きも楽しみ〜。『flower*flower』も復活するといいな。

イラスト

 単発イラストでは森島明子、袴田めら、水上カオリ、あきづき弥が参加。イラスト、というかイラストエッセイかな。

 アンソロも粒ぞろいで面白かったけど、この編集部には『女の子のナイショの話』の第二弾を期待してしまいます。ヨソではやってないことをやって欲しいな〜。ストーリー漫画のアンソロ第二弾をやるならば『女の子の〜』で気になったam.、とろしおという作家さんのを読んでみたい。

 先日の『Dolce』ともども単発の百合アンソロで良いものが続いて嬉しかったのでした。

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『コクリコ坂から』高橋千鶴

コクリコ坂から
高橋千鶴
角川書店(文庫サイズコミックス)
2011.6.23
★★★☆☆

 『コクリコ坂から』のコミック版を読んでみました。以前に書いた映画版の感想記事もあります。

 ページを開いての第一印象は「えっ。こんなに時代がかってたんだ」でした。1980年の少女漫画誌『なかよし』に掲載された、との初出情報を見ても「80年ってこういう絵だっけ」と時代のイメージが一致しません。『パンク・ポンク』や『キャンディ・キャンディ』よりちょっと後ということになりますが……。ふ〜む。学生による制服の自由化運動がイベントに折り込まれていたりして、今からは想像しにくい時代かも知れません。ジブリの映画では時代設定が少し古くなっていた気のする1960年代半ば。原作漫画には映画のおんぼろクラブハウス・カルチェラタンのエピソードもガリ版のエピソードもなく、設定の一部が共通しているだけでした。もちろん徳間社長ヨイショもなく。
 原作漫画とジブリ的なお話との一番の違いは風間×水沼コンビが生徒会費の使い込みを穴埋めするためにあれこれ奔走してるという、今の視点で見るとどうしても読者(視聴者)の共感を得られないであろう設定がされていたこと。このあたりは「漫画だし穴埋めしたんだし丸く収まればおっけー」とおおらかに笑える時代と今との倫理観の違い、でしょうか。

 風間・水沼の切れ者生徒会コンビに海と基本的なキャラクター配置はジブリ映画も原作コミックも変わらず、風間と海との関係設定もそのままです。禁断設定がストーリーの要で、このテーマがどうしても浮いてしまいがちな気がします。作中であまり早くに設定をバラすと居心地の悪い葛藤がストーリーの中心となってしまうし、原作漫画やジブリ映画のように終盤で開示されるとストーリーがそこで分断されてしまう。映画では時代も小イベントもジブリ的なものに変えられますが、それでもなお映画と原作とで共通設定は「あれ? ここからお話別物になっちゃった」感となりました。宮崎駿がシナリオを組んだならばカルチェラタンの件と風間×海の件を完全にシンクロさせて解決しちゃう力技もできただろうになぜそうしなかったのだろう、と不思議に思いました。

 映画版『コクリコ坂から』のDVD/Blu-rayももうそろそろ発売ということで予復習としてコミック版を読んでみたのでした。
 NHKで放映されたドキュメント「ふたり/コクリコ坂から」も録画を見返したりも。

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Real Racing 2 HD

 たまにはゲームの話など。

 iPadでReal Racing 2 HDというゲームを買ってみました。新しいiPadのRetina対応レースゲームです。iPad2向けにリリースされたものですがマイナーチェンジでRetina対応もしているようです。

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 モバイル端末で2048×1536なんて解像度の3Dゲームがまともに動くのだろうか、と思ったのですが動きました。十数台のマシンが並んでいても問題なく。動きも滑らかです。PS3のようなスペックのゲームが持ち歩ける端末――しかもゲーム専用機ではないタブレット端末でできるようになっちゃったんだ……と感心してしまいました。この大きさの画面が持ち運べて遊べるってのはインパクトがありました。

 遊んでみるとiPadを傾けるハンドル操作がイイ! 傾きセンサは敏感過ぎず鈍過ぎずで操作しやすく、ハンドルコントローラーで遊んでいるようでした。アクセルとブレーキは画面左右端をボタン代わりにタッチしての操作で、これは普通のゲームコントローラーのようなオン/オフのみのデジタル操作。

 面白いのは対戦です。複数のiPadを一つのWiFiに繋げばそれぞれのiPadのそれぞれの視点で遊べて、家庭用ゲーム機のように画面が分割されて見づらくなったりしません。ただ、iPadを持ち寄らないと始まらないので少し敷居が高いでしょうか。ゲームソフト自体は(セール期間中だから?)170円と気軽に購入できたのでiPad/iPhoneユーザが複数集まった際に気軽にみんなで遊べるはず。(iPhoneやiPod touchはReal Racing 2

 一人で遊ぶためのCareerモードはクリアするのに十時間以上必要だとか。難易度EASYで始めてみましたが確かになかなかコンプリートしません。コース数も多くてとても覚えきれない……。

 アクセル/ブレーキのサポートがフルだと難易度が下がりすぎて楽勝になってしまうのですが、ブレーキのサポートを切るといきなり難易度が跳ね上がります。

 シミュレータ的なリアルさではなく、マリオカートのようなゲームっぽさでもなく、“車”がカッコ良く走っている感じのする楽しいゲームだと思います。

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