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『コミック百合姫』2012年9月号

コミック百合姫 2012年9月号
一迅社
2012.7.18
★★★★☆

 リニューアル以降紙質が薄くなってスマートになった『百合姫』ですが今号は540ページ超でボリュームも増えてきました。そして特別定価440円でいつもの半額。TwitterのTL上でこれまであまり見かけなかった百合姫の感想をちらほら見かけるように。「ゆるゆり」パワー?

表紙 なもり

毎号続き物のストーリーのあるなもりイラスト。初回からどろどろした関係が盛り込まれていましたが、今回はそのどろどろが登場キャラ全員に共有されるシーンとなりました。「ゆるゆり」アニメ→440円半額キャンペーンで初めて『百合姫』を手にとった読者には「百合ってこういうのなの?」とびっくりかもしれません。森島明子や竹宮ジンはガチな同性愛描写のある回でもありましたし。

巻頭カラー

ゆるゆり特集。アニメ収録やライブイベントのレポート、全員サービスプレゼントの告知etc。

少女惑星 柏原麻実

巻頭カラー。マット仕上げの紙に彩度の高い印刷でカシマミの鮮やかな色遣いとあいまってとてもインパクト。友情としての独占欲から一歩踏み出す少女二人を描きます。連作の予定なのかな? 次回以降も期待できそうな滑り出し。

きものなでしこ 八色

今回は合宿で和ネタは寝巻きの浴衣。もう一話はアンジーと雀の休日編。帯クルクルがないのはな〜ぜ〜。あと浴衣の寝起きの惨状?もぜひ絵で見たかった!

ダブルバインド 大沢やよい

今回は大人な雰囲気のお話。重めです。二人は新たな関係を築き直さなくちゃいけないのだろうけど日々を積み重ねて行くことの辛さばかりが想像できてしまうのは読者として歳をとっちゃったから……かな。そんなしんみりな読後感でした。次号からヤギーのスピンアウトっぽい新連載が始まる模様。期待!

ゆるゆり なもり

お茶をこぼしただけで面白おかしい一エピソードが作れてしまうとは恐るべし「ゆるゆり」。

ロケット・ガール 田仲みのる

うう〜。なんというか、もったいない。挫折の、屈託の原因は以前に示されているのだけれど前々回くじけたきっかけと今回立ち直ったきっかけの印象が弱くて、いや、わからないわけじゃないけれどバチコーンと来ないのが惜しい。「星とつばくろ」の詠唱シーンみたいにぐっとくるシーンの描ける作者なので期待してしまう。十分に面白いけどもっともっとと思ってしまう。頑張れ〜。

恋愛遺伝子XX 影木栄貴×蔵王大志

ふと思ったのだけれど、この恋愛遺伝子XXの世界ではヘテロの性指向しか持っていない人はどうなるんだろう。ノンセクシュアルとして生きるしかないのかな。作られた文化として男女恋愛が当然、という現実へのアンチテーゼ設定に思われるのだけれど、女性だけの社会でのドラマはむしろ特例として投入する男性に合ってしまうような。あ、それだと『アマノン国往還記』か。

名前はまだない2nd かずまこを

前号とは逆の委員長視点。餌付け回。淡々としたかずまこをもいいなー。

ふ〜ふ 源久也

浮気性というか博愛主義というかのカナナさんも年貢の納め時?

犬神さんと猫山さん くずしろ

シモネタというかセクハラというか刺激の強いそっち系ギャグ四コマ。「きものなでしこ」とは好対称なのが面白い。

あまいゆびさき 宮木あや子

前回クライマックスで今回エピローグ?と思っていたけれどもう一山ある模様。ぅぅぅ。なかなか落着しない〜、と思い切り作者の思惑にはまっていると思われます。

私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた

『百合姫』大人部。このシリーズ、流されキャラや無責任な面白がりキャラが集まっていて苦手なタイプの話ではあるのですが、読んでいて毎回唸らされます。人と人との必ずしもうまく噛み合ない関係。好き嫌いの感情とは別に相性や巡り合わせというものがあって、というのがじんわりきます。

Leave hickey 竹宮ジン

今回は竹宮ジンも大人部。キスマークをテーマにしたお話。『楽園』誌での竹宮ジンと『百合姫』掲載作とのギャップが縮まってきたかな?

レンアイ女子探偵ファイル・後編 森島明子

森島明子の漫画は幸せがあっていいな。恋愛女子課のシリーズには辛いシーンだってあったけど、でも基本のトーンがハッピーでコミカルで。探偵ファイルの話もクリスの陽気さと黄実のちょっとドジっぽいとこも楽しくて。

溺れる金魚 黒霧操

作画がパワーアップしてきた気がします。キャラ設定もスタンダードな少女像と残酷であったり利己的フェチであったりするイケナイ部分とのコントラストが良い感じ。

クモリトキドキアメノチ ちさこ

友人のおせっかいでセッティングされた合コン。そこで知り合ったのは……。ちさこも毎回うまくなってる気がする。

ウタカイ 森田季節

今回は短歌バトルお休みでラブレターをお題に。このシリーズ、プラトニック的な意味でのいちゃこら度は今の『百合姫』掲載作ではトップの気がする。一人称描写で小説のアドバンテージがとても有効。短歌もおもろい。

ショートヘアの似合う女 さかもと麻乃

かつての憧れの先輩とスキーに来て、過去の想いを整理する話。と書くと淡白な感じですがしっとりとした心地良い読後感のお話でした。『リスランタンプティフルール』の頃はぎこちなさも感じたけれど『パイをあげましょ、あなたにパイをね』でぐっと印象が良くなってただいま絶好調な感じのさかもと麻乃。

sunny rose 慎結

なんかっ、可愛らしいっ、お話がっ。8/18発売予定の『ミズイロ、ソライロ』が楽しみになりました。描き下しもあるらしい(Twitterより)です。

Dr.Lunchbox 井村瑛

器用貧乏さんとまじめ不器用さんのお話。以前の“ふよ”のお話でもそうでしたがこの作者は日常的な設定でもどこか異世界の物語のよう。

しあわせにしてほしい 大北紘子

この作者的には珍しい?ごくごく普通な感じの日常話。DVもなく家族の諍いもなく異世界設定でもなく。最後のページは間宮さんが驚く表情でもう一ページ分欲しかった感じ?

サーク・アラクニ 再田ニカ

今回はロッテの回想&葛藤回。アクション中心でかつ百合という条件がつくとアクション側の比重がどうしても少なくなる感じ? もっとサーカスアクションみたい気持ちとロッテ&テティの進展をみたい気持ちで読者的にも揺れるな〜。

百合男子 倉田嘘

いよいよ何の漫画なのかわからなくなってきた百合男子。今回はヤンキー漫画風に展開してます。これまでも格闘漫画っぽく爆発エフェクトをどかーんとやってましたが、「湘南爆走族」か「北斗の拳」かという雰囲気に。これ、収集つくのでしょうか……。そうそう、以前イベント後に思わせぶりに出てきて「わかってない」的なことを呟いた女性キャラがいましたが、もしかして今回のイベントのミラクるんコスのキャラだったりしないかな、となんとなく期待したり。

 次号予告では新連載が三本だそうです。
 「センチメンタルダスト(仮)」は第7回百合姫コミック大賞紫水晶賞の人。大抜擢。
 「月と世界とエトワール(仮)」は『なかよし』で活躍の高上優里子。初見の人なのですがいじめテーマと思われる単行本がある方のよう。予告イラストがものっそい好みです。
 「ストレンジベイビーズ(仮)」はブラックヤギーからのスピンアウトと思しき大沢やよい。いかにも面白くなりそう。

 というわけで次は9月発売。楽しみです。

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