« 『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ | トップページ | 百合とSF 2012 »

『NOVA8』大森望編

NOVA8 書き下ろし日本SFコレクション
編集:大森望
河出文庫
2012.7.20
★★★★☆

 今回は山田正紀の「雲のなかの悪魔」がカッコよかった。すごく。

 先頭に掲載されていた北野勇作「大卒ポンプ」の紹介文にてバチガルピの『第六ポンプ』の影響を挙げていて『NOVA8』を読もうとして『第六ポンプ』から読むことになったりと多少回り道もしたけれど、楽しく読めました。

大卒ポンプ 北野勇作

 タイトルで出オチじゃん!と思いつつも楽しく読めました。北野勇作らしいまったり?感もありました。

#銀の匙/曠野にて 飛浩隆

 飛浩隆は二話寄稿。両編とも共通した設定のお話で『NOVA1』収録の「自生の夢」とも同ワールド。複合現実ARやライフログ的なものに生まれた瞬間から囲まれた世代の詩人の話。〈夢字花ムジカ〉といったこのシリーズの造語の語感が面白かった。

落としもの 松尾由美

 とんがったSFじゃないけど、ほのぼの可愛い話でした。ケモノ好きと眼鏡好きにはとても楽しい、両者を兼任していればなお楽しい。ビジュアルは水玉螢之丞のイメージが浮かびました。砂浜で拾った眼鏡に関する謎解きのストーリー。

人の身として思いつく限り、最高にどでかい望み 粕谷千世

 田舎村に自称・カミがやってきた! しかも次から次へと願いを叶えてくれる。さあ、どうなる? 産業革命以前的な世界や人々のデテールの濃さといった違いもありますが星新一を思い出させてくれました。

激辛戦国時代 青山智樹

 タイトル通り、戦国の歴史を演出したのが激辛料理だったらどんなだろう、というギャグもの。バカSFに分類されそうな気はするのだけどもっとバカでもOKですよ? これは唐辛子をアメリカ新大陸から持ち帰ったワールド編も読みたい。

噛み付き女 友成純一

 ううむ、ううむ、ううむ。エロさや怖さが合わさったグロでもあるはずなんだけどのほほんとした「バカネタですよ〜」という雰囲気もあって直前に載っていた「激辛戦国時代」ともどもB級SFの雰囲気。

00:00:00.01pm 片瀬二郎

 『原色の想像力2』の「花と少年」、『NOVA7』の「サムライ・ポテト」に続いて新たな側面を見せてくれる片瀬二郎。今回は突然静止した世界を描く……のですがちょっぴり嗜虐というか残酷描写もあったり。「花と少年」で扱われたいじめの描写も含めてそういうイメージを描くのが得意なのかな。

雲のなかの悪魔 山田正紀

 今回一番印象が強かったのがこれ。流刑星からの脱獄モノで量子力学ネタをふんだんに散りばめてカッコイイという以外にない仕上がり。主人公は李兎リーユイなる革命特化のサヴァンの少女。
 山田正紀は第1回創元SF短編賞の選考座談会にて「量子力学的な話にはうんざり」と述べていました。(『原色の想像力』所収) 万能ツールとして安易に使われすぎるようになったのが不満であったのではないかな〜と。量子力学の前はナノテク。その前はバイオテクノロジーがそんな便利な物語の枠の破壊ツールでした。
 ところが当の山田正紀が量子ネタを引っさげてばばーんとインパクトのある作品で登場。しかもシビレルくらいカッコイイ。自身で貼った“陳腐”のレッテルを吹き飛ばそうという意気を見事に具現したように思えます。
 今回イチオシ。

オールトの天使 東浩紀

 「クリュセの魚」からの連作シリーズ完結編。シリーズ一通り読んで“絵”を描写したかったのかな?という印象になりました。紹介文によると“『ほしのこえ』への遠い遠いアンサー”だとか。

 次回『NOVA9』は十一月予定だそうです。

|

« 『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ | トップページ | 百合とSF 2012 »