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『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ

第六ポンプ
パオロ・バチガルピ
新☆早川・SF・シリーズ
2012.2.9
★★★★☆

 『ねじまき少女』の冒頭がぴんと来なくて放置していたバチガルピ、短編集から読んでみました。

 面白い!

 SF的にはあまり尖ってはいなくて、デテールと物語で読ませるタイプかな。『ねじまき少女』に繋がりそうな世界はスチーム・パンク的な古めかしさを備えつつ、でも、バベッジの差分機械と蒸気機関から分岐した浪費だらけマッチョなスチーム・パンクとは相容れなさそう。エネルギー枯渇設定が中世を思わせる停滞や衰退の香りを漂よわせます。
 印象に残ったものだけ個別に感想を。

ポケットの中のダルマ

 中国のストリートチルドレンがひょんなことから手にしたデータキューブのために辿る運命。スラム描写とアクションと明かされて行く謎のバランスが良くてどんどん先に読み進んでしまいました。アイデアの突飛さはないけれど組み合わせの妙がありました。

フルーテッド・ガールズ

 特異な改造を施された脆弱な体を持ち、パトロンの元で生きることを運命付けられた少女・リディア。双子の妹ともに金持ち連中へのお披露目のときが迫っていたのだけど——。
 『S-Fマガジン』掲載時に話題になっていた作品。この短編でハートを鷲掴みされました。“少女”らしさを色濃く綴った幻想とエロスが素晴らしかった。収録作品の中でこの「フルーテッド・ガールズ」が一番気に入りました。

第六ポンプ

 面白かった。面白かった!
 ウィットを含んだ描写と設定はちょっぴり不謹慎な笑いも呼んでにやにやしてしまいました。下水処理場のポンプの修理に奔走する主人公の誠実さが好ましい。でもこの世界、実は割と幸せそうだよね、とも。

 「フルーテッド・ガールズ」みたいな話をこれからも書いてくれるといいなぁ。『ねじまき少女』も改めて取りかかってみようと思います。

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