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2012年9月の10件の記事

『オトメの帝国03』岸虎次郎

オトメの帝国03
岸虎次郎
集英社ヤングジャンプコミックスGJ
2012.9.19
★★★★☆

 待望の『オトメの帝国』第3巻。女子高生たちのちょっとおばかな生態を描いたオムニバスシリーズ。

 シリーズが始まったばかりの頃は登場するキャラたちも通りすがりの女子サンプルみたいな感じで相互の関係も希薄だったのですが、話が進むにつれ登場するキャラが定着していき、キャラ同士の関係が変化してきた気がします。中でも亜衣&ちえ組は今や随一の嬉し恥ずかしらぶらぶコンビ。この3巻でも初々しいところを見せてくれます。リアリティと夢が適度に混ざり合っていて、生々しいようでいて乙女チックな要素もあって、と割と読み手を選ぶかもしれない……。好きになる人は「すごく好き!」な作風だと思うのでweb連載のチェックがオススメ。岸虎次郎のコテコテ感にぐっと来る人、けっこう多いと思います。『MAKA-MAKA』シリーズも『オトメの帝国』よりアクは強いですが面白かったです。

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Apple Time Capsule 2TB ベンチマーク

timecapsule

Apple Timecapsule ベンチマーク / OSX

 Time Capsule共有ディスクのベンチマークを取ってみました。

Time Capsule 2TB Disk Xbench ver.1.3
有線 WiFi 内蔵
Sequential
Write 5.75 1.56 63.20 MB/sec [4K blocks]
Write 47.59 11.84 51.69 MB/sec [256K blocks]
Read 5.90 1.87 12.36 MB/sec [4K blocks]
Read 79.65 15.82 60.37 MB/sec [256K blocks]
Random
Write 4.65 1.49 1.74 MB/sec [4K blocks]
Write 48.02 12.00 31.43 MB/sec [256K blocks]

Read 4.35 1.53 0.50 MB/sec [4K blocks]
Read 53.32 16.26 21.13 MB/sec [256K blocks]

※ 有線はギガビットイーサ接続。WiFiは5GHz帯。

 Mac miniからTime Capsuleのディスクにアクセスした結果です。家庭用NASとしては優秀な部類かな? Mac mini内蔵ドライブのデータも参考に付してあります。

Apple Timecapsule ベンチマーク / Windows XP

 同じMac miniのBootcamp Windows XP環境からアクセス速度のベンチマークを取ってみました。GbE接続です。

Benchmark of Timecapsule on bootcamp's Windows XP

 SMB接続だとTimecapsuleは性能が出ないみたいですね。Windowsユーザーにはあまりお勧めできないようです。

リンク

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Apple Time Capsule 2TB MD032J/A 購入

 2013年6月にTimecapsuleは新型に更新されました。旧型の記事です。

これは、なに?

 Time Capsuleはよくわからない製品。Appleの製品紹介ページを見ると、

  • Macのバックアップ
  • 無線LANルーター

という二つの機能がアピールされています。HDDを積んだ無線LANルーターであればNAS的な機能も搭載できそうに思えるのですが機能紹介には特に言及はないようです。共有プリンタやHDDを繋ぐためのUSBポートはある、と謳ってあります。

 Appleの公式サイトでは設定ガイドが公開されていました。

  • Windows、Mac両方とファイル共有できる記憶領域
  • Internet経由で自宅Mac環境にアクセス(どこでもMyMac)

なんて機能もあるようです。

  • iTunesサーバとしては?
  • メディアサーバは?
  • NASとして利用する際に同居するバックアップ(TimeMachine)領域のサイズ制限は?
  • web(http)サーバは?

等々、わかりませんでした。Apple製品にありがちです。購入するまで細々とした「あれができてこれができない」がわからない。購入しても、よくわからなかったりもしますが。

購入/導入

Time Capsule開梱

 21日の金曜日にネット通販て注文。日曜日には届きました。

 設置と配線は普通のルーターと同じ。設定は無線LANルーターとしてはシンプルで、ネットワーク名(SSID)とパスワードだけ入力してやれば機能しはじめます。無線接続端末のみでも仮接続で繋がり、無線ネットワークの設定が行えました。
 うちのADSLモデムにはルーター機能(NAT)が搭載されていたのですが、Time CapsuleはこのNATを検知して自動的にブリッジモードに設定されたようです。

 Time Capsuleはけっこう熱い、という噂でしたが実際ほんのり以上に暖かい……どちらかというと熱い印象で振動も3.5inchHDD相応です。日常生活をしていて騒音が気になることはないですが、寝室などには設置しない方が無難そう。

TimeMachine容量制限

 NASとしても活用したいのでバックアップ領域の容量に制限をかけることに。

App in the air

を参考に作業してみました。たぶん、これでNASの容量をバックアップが圧迫してくることはないはず。Apple公式でサポートしている方法ではないので今後のファームウェア変更に追随できるかわからないです。あまりあまりお勧めできないかも。Apple製品はこういう裏技めいたことをしない方が無難な気はします。

NASとして

 AFP(Apple)とSMB(Windows)の二種類のプロトコルでアクセスできるシンプルなネットワーク上のドライブとして使えます。iCloudの「どこでも My Mac」と組み合わせるとインターネット経由で利用できる巨大記憶領域に。Macでモバイルするユーザにはすごくお勧めの機能。
 ネットワーク共有領域はマウントポイントが/Volumes/Dataだったり/Volumes/Data-1だったりと毎回違うので、Macのエイリアスからは使いにくかったりも。

 しばらく使っていて気づいたのですが、Mac→Timecapsuleへのデータコピーでfinderを使用すると失敗することがあります。ファイルサイズが0byteのままでコピーされていないことが数回。rsync系のツールを使用するのが確実かもしれません。

Spotlight

 Spotlightで検索するとき、メニューバーのsearchアイコンからだと結果一覧にはTime Capsule内のファイルが表示されず、あらためてFinderで表示してから“共有”を選択してやらないと見つけ出せないのはちょっと面倒。「なんで検索されないの?」とSpotlightの設定や動作状況を確認し一時間ほど悩んでから気づきました。また、検索結果が出てくるまでちょっと待たされます。

メディアサーバ

 購入前にはよくわからなかったのですがメディアサーバ的な機能は一切なし。
 Apple的にはMacにHUB——ホームサーバとしての役割を与えているようなのでTime Capsuleの記憶領域は単なるバックアップメディアという位置づけなのでしょう。

導入の感想

 公式サイトでアピールしている「無線LANルーター+バックアップ」というシンプルな使い方が合う気がします。無線LANの構成はどうしてもそれなりの知識が必要になってしまいますが、不必要に難しい設定には触れずに済むはず。TimeMachineによるMacのバックアップも設定は簡単ですし、バックアップデータが必要になったときの操作も非常にわかりやすいもの。
 新鮮な「楽しい」を体験させてくれる類の機器ではないので積極的にオススメするようなものでもなさそうですが「NASやらルーターやらごちゃごちゃして邪魔だなぁ……」というときにひとつにまとめて置き換える候補として悪くないような気はしました。
 今だと単体の同等製品がそれぞれ、NAS:15000円、無線LANルーター:9000円くらいのようなので「無駄に高いApple純正品」ということもないと思います。

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『コミック百合姫』2012年11月号

コミック百合姫 2012年11月号
一迅社
2012.9.18
★★★★☆

表紙 なもり

 一年かけての仕掛けが炸裂。表紙だけじゃなくてそのまま中身に続く展開です。発売前からネットでは「ドロドロ」と話題になっていたようですが、ただの修羅場で終わらない? 一昨年のカズアキ+深見真のイラスト+ストーリーの表紙も良かったし、次号からは浜弓場双が表紙だそうですがどんな趣向で来るのか楽しみ。

センチメンタルダスト 河合朗

 百合姫コミック大賞から出た方で、これまで掲載なしの状態からいきなり連載です。幼稚園からいっしょの幼馴染二人が同じ高校に進学したところから始まるお話。予告イラストでは「癖のある絵柄かな?」と思ったけれど漫画になってみると馴染みやすく読みやすい作風で、濃いめに揺れる感情となかなかややこしくなりそうな想いの交錯が描かれてとても印象が良かったです。素直に面白かった。

犬神さんと猫山さん くずしろ

 牛若先輩も変態でした。まる。
 いや、ほんとに。今回はこれに尽きました。そしてもう一話では素敵アイテム投入。

少女惑星 柏原麻実

 柏原麻実は百合姫出身作家たちとはちょっと違う空気。絵柄自体に清潔さと王道の雰囲気があって。「少女惑星」というシリーズタイトルはついていますが登場人物固定の続き物ではなく連作短編の模様。今回はちょっと切なく、同性のパートナーを欲している主人公が自分を一番に見てくれる相手を求めて……というお話。

ふ〜ふ 源久也

 今回は前回で一段落した新vs.白雪のフォローから。この作者のお話は波乱を作りつつ、納得の行く形にきちんと収集を付けてくれる丁寧さが心地良いです。

彼岸の境界 黒霧操

 なかよし三人組から一人が欠け、時が過ぎても残った二人の時間は動き出さないまま。そこから一歩踏み出せるだろうか、という重めのお話。

六花にかくれて 大北紘子

 近いけれど少し違う世界の話。コントラストが高くぱりっとした緊張感のある絵柄に演劇の一シーンのような独特の情感と淡々とした空気。少しエグい設定。大北紘子独特の作風が今回も全開です。

ショコラと 慎結

 髪の毛テーマで。最近は以前ほど女性性の象徴という印象ではなくなってきましたが、それでも重い気持ちは髪に宿るというイメージはぞっとくるものです。今回の慎結の話も髪と鋏というひやりとするイメージが描かれます。

欲望パレード ちさこ

 物欲まみれと無欲無感動が出会って起こる化学反応。
 黒霧操とちさこの二人は『なかよし』系タッチ&ちょっとダークな内面や関係を描く作家で百合姫コミック大賞から出てきた時期は一年くらい違うようですがライバルな気がします。どちらも少しぎこちない感じが残ってて、それぞれうまく脱皮していくといいなぁ、と思いながら読んでいたり。

天使なカノジョ 森島明子

 今号でカメラマン設定のお話が二つあるのは『彼女とカメラと彼女の季節』の影響だったりするのかな。写真ネタ大好きなのでウェルカム。
 作者曰く「ちょっとワイルドローズ風味」というTwitterでの紹介通り、冒頭からベッドシーンが展開します。アニメの「ゆるゆり」から『百合姫』に辿り着いた読者が上のタイトルたちを読んで来てここで初めてダイレクトなラブシーン、しかも森島明子の表現力で、となるとインパクトもあったのではないでしょうか。マジメなのに男子高校生みたいな煩悩キャラ、というのもぐっときました。
 目次では読切にカウントされていますが、全三話予定だそうです。続きが非常に楽しみな話でした。

ロケット★ガール 田仲みのる

 単行本『ロケット☆ガール 1』も今号と同時発売の「ロケット★ガール」、今回は前回の盛り上がり回の余韻と次展開への橋渡しでした。

ゆるゆり なもり

 今号はなもり充。表紙漫画+「ゆるゆり」合わせて四十ページ以上。京子に向かって揃って「頭」のシーンは笑ってしまいました。

あまいゆびさき 宮木あや子/ロクロイチ

 百合ジャンルでは希少な小説。字が小さくて読みづらいけど今回も面白かった。前々回山場シーンから「えっ、ここにきて雲行きの怪しい展開に?」とハラハラさせられ今号でもまさかの展開。『雨の塔』の宮木あや子らしさも炸裂。鬱屈したところからの爽快な展開は『百合姫』という媒体にぴったり合わせて来た印象です。『百合姫』掲載小説はネットであまり話題にならないけれど良作揃いだと思うのです。百合小説好きの人にはお勧めしたいな〜。

月と世界とエトワール 高上優里子

 『なかよし』誌でいじめテーマの作品が印象的な高上優里子の『百合姫』初登場&初連載。紙の質感を出したカラーイラストは美麗そのもので、絵柄も『なかよし』誌で活躍している作者らしいもの。エンゲージ、騎士シュヴァリエ歌姫エトワール北極星ポラリス恋人たちル・クプルといったルビ付き単語、修道院のような校舎に夜更けに王子様よろしく窓から現れるボーイッシュキャラ、とコテコテの伝統的?学園物少女漫画要素テンコ盛り。コテコテで固めた設定は陳腐になりそうなところですがそんな風には感じさせずに作品世界に引っ張り込んでくれます。

step by step 竹宮ジン

 二組の教師×生徒連作シリーズも今回で一段落、かな?

私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた

 登場人物が多くてややこしいですが単行本『私の世界を構成する塵のような何か。 (1)』も出てまとめて読むとな〜るほどとキャラ同士の関係がわかりやすくなります。それにしても“鹿”Tシャツ……。

きものなでしこ 八色

 タイトルページ、今回の十七着目を読み終えてからもう一度チェックしましょう。

感情的日常 井村瑛

 シリアスで重くてウザい話なはずなのに、最後のページでつい「ぶはっ」と笑ってしまいました。いや、笑うシーンじゃないんだけど、でも。

ストレンジベイビーズ 大沢やよい

 「ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ」のシリーズ化連載。予告イラストではUSB端子や山積みモニターが目立っていて「まさかのサイバーアクション?」「serial experiments lainみたいなのだったりして」とちらりと連想。いざ始まってみるとブラックヤギーの続編っぽさが濃く、暴走気味のライバル・ネットアイドルも登場でいい感じ。
 “ヘルズキッチン”の生放送見てみたい……。

恋愛遺伝子XX 影木栄貴/蔵王大志

 非常に期待通りの展開でありつつ、こう、いちゃこらしているシーンを見ていると微妙にBLモノを読んでいる気がしてきたりもするのでした。女性だけの世界でありながらジェンダーが二分され、男性ジェンダーを担う二人がらぶらぶで、えっちぃシーンでは女性ジェンダー的表現が強調され……という不思議なものを読んでいる目眩のような感覚。そして今回も見事な引きで次回へ続くのでした。

世界の終わりとケイコとフーコ さかもと麻乃

 テニスのダブルスペアのお話。お話はとても好み。ネタがスポーツで強豪選手ということになると体の故障との戦いみたいな側面が思い浮かんでしまうタイプの読者なのでうまく入り込めなかったのが残念でした。

Cirque Arachne 再田ニカ

 再田ニカの話はすごく健全感というか明るくて前向きな感じがして、今作だとテティがその代表みたいなキャラで。ここに来て関係が進んでいくロッテとテティが自然に思えます。

百合男子 倉田嘘

 百合男子が熱い。ジャンプ系格闘漫画みたいだ。そして、その熱さがホモい気がする
  啓介の「これは××の分」と暴れるシーン、ぜんぶ身勝手極まってるじゃないか、とお腹の皮がよじれました。そして今回はなんと64ページ。前回は不良漫画っぽい展開で「どこいっちゃうの〜」とちょっと不安でしたが、今回は色々ぶっ飛んで突き抜けて、でもちゃんと納得するところに戻ってきて一安心。

ウタカイ 森田季節

 異能短歌バトル小説、今回も面白かった。
 面白かったのだけれど、ひとつ辛い点が、私の素養の問題で。短歌にはあまり馴染みがないせいか、作中バトルで詠まれる短歌の出来というのがよくわからない。どういう情景・心情を謳ったものなのかは、(合っているかどうか自信がないけれど)一応想像できてると思う。けど、その短歌の楽しみ方がわからないのです。技術の巧拙、詠み人の個性。そういった漫画や小説を読むときであれば当然のように味わい分けられていることが、短歌だと私にはできていないみたいで悔しい。この「ウタカイ」でキャラやストーリーに編み込まれる短歌を読んでいくうちに、短歌入門的なプロセスを辿れているといいなぁ……なんて都合の良いことをちょっぴり思ったりもしました。

 今号の『百合姫』はページ数も多くて670ページ超。内容面でも充実していたように思います。

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『星界の音楽』ジョスリン・ゴドウィン

星界の音楽 神話からアヴァンギャルドまで―音楽の霊的次元
著:ジョスリン・ゴドウィン
訳:斉藤栄一
工作舎
1990.3.20
★★★★☆

 気に入りました。とても。

 この本を知ったのは『宇宙の調和』(ヨハネス・ケプラー)を読んでのことです。巻末の広告ページにこの本の紹介がありました。ケプラーの本も、オクターブと惑星の軌道要素を照らし合わせているという話を知って読んでみる気になったのです。『星界の音楽 神話からアヴァンギャルドまで―音楽の霊的次元』というタイトルが気にならないわけがありません。

 1990年刊の本です。さすがに手に入らないだろうと図書館に当たってみたところ保存庫にあり、借りることができました。Amazonにも在庫があるようです。(2012年8月現在) 工作舎は長く読まれる本を出す出版社のようですね。

 音楽と神秘主義の関係を分析する本です。ギリシア時代から現代まで、人々にとって音楽がどんなものであったのかを、広範な知識と神秘主義の視点から綴ります。

 目次の引用をしておきます。

  • 第Ⅰ部|昇りゆくパルナッソス
    • 第1章◉音楽の驚くべき効果
      • アムピオーンの竪琴——鉱物が聴く
      • 旋律とハーモニーの森——植物が聴く
      • アリーオーンとイルカ——動物が聴く
      • スピトゥスの理論
      • アレクサンダーの饗宴——魂が聴く
      • タラントラの毒
      • 音楽療法とシュタイナー
      • 孔子とプラトンの郷愁
      • 崩壊した帝国
    • 第2章◉秘められたハーモニーを聴く
      • 妖精たちの音楽
      • 蓄音機の罪
      • ヴァイオリン弾く悪魔
      • 水晶柱
      • 天球への航海
      • 沈黙した星界
      • 太陽の音
      • 暗黒の中世と賛美歌
      • グノーシスとしての音楽
      • イスラムの共感覚
      • ヨガと天使
      • トールキンとC.S.ルイスの神話
  • 第Ⅱ部|偉大なる仕事
    • 第3章◉音楽の錬金術
      • ムネーモシュネーとアポロン
      • 「失われた時を求めて」
      • 錬金術の伝統
      • インスピレーションの三つのレヴェル
      • 聴き手の経験
      • 隠された構造
      • 鉛の自我と純金の自己
    • 第4章◉音楽と時間の流れ
      • デミウルゴスとしての神
      • ゴシックの大聖堂で
      • モテットとマニエリストたち
      • 音楽にルネサンスはあったか
      • ソリストになった人文主義者
      • ムシカ・ムシカーンス
      • ルソーとラモーの対立
      • 予測不可能な形式
      • ヨーロッパのカースト
      • ポップ・ミュージックの罪と可能性
      • 開拓された第一質料
      • ブッダとケージ
      • 作曲家時代の終焉
  • 第Ⅲ部|天球の音楽
    1. 宇宙論的な枠組み
    2. 惑星音階:タイプA
    3. 近代の諸体系——ティティス——ボーデとゴルトシュミット
    4. 惑星音階:タイプB
    5. 惑星、音、曜日
    6. 惑星音階:タイプC
    7. 可動音をともなう諸体系
    8. ケプラーと惑星の音楽
    9. 諸音程と占星術の星相
    10. 音の黄道一二宮
    11. 天使の位階とミューズたち
    12. 三つの平均値
    13. グルジェフのオクターブの法則
    14. 調和級数とそのシンボリズム
    15. 下方倍音列
    16. ラムドーマとピタゴラス表
    17. 顕現の彼方に——1/1および0/0

ジョスリン・ゴドウィン「星界の音楽」目次より

 オカルト色が強い本で、著者も音楽とオカルトの分野での著作がいくつもある方、なのですがこの著者の扱うオカルト——神秘主義は形而上的であると同時に合理主義的です。自然現象から神秘の法則を見出す研究者の側の視点であって、実効性を謳う儀式やオマジナイを求めておいでの方には明らかに向きません。オススメなのはケプラー、デカルト、スピノザetcといった西洋哲学・思想・科学の歴史に関心のある人。作曲技法についても突っ込んだ話がされるので調や和音についての基礎知識もあった方が理解に繋がるのではないかと思います。私は音楽の知識が不足していて咀嚼できない部分があり悔しい思いをしました。
 1990年刊の古い本ですが、内容は古びるようなものではないので今でもオススメできると思います。

 少し残念であったのは現代の科学の成果が反映されていないこと。宇宙に関する知見は二十世紀初めとは比べものにならないくらい充実しています。ケプラーが緻密な観測データから星界の音楽を見出したように、現代の科学の成果から占星術・神秘主義のアップデートがあっても良いのではないかと思いました。(単に科学風味の言葉を散りばめただけのエセ科学カルトなんぞはおとといきやがれと思いますが)
 そして、科学に後ろ盾を得た神秘主義が新たな音楽——宇宙を統べる法則を体現する星界の音楽を生み出すようなことになったら素晴らしいのにな、と。

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『〈少女〉像の誕生―近代日本における「少女」規範の形成』渡部周子

〈少女〉像の誕生―近代日本における「少女」規範の形成
渡部周子
新泉社
2007.12.12
★★★☆☆

 明治から大正にかけての“少女”ジェンダーが造り出される過程を追った本です。
 富国強兵策を取り、欧米列強に対抗できる近代国家を目指した時代、社会を主導する男性の手によって“少女”というイメージが形作られてきたことを示します。カタい記述の本で一般向けの読み物ではなく、近代ジェンダー史議論の一部として書かれたもののようです。
 面白いか否かといえば正直あまり面白くない本でした。女学校文化の分析的なものを期待して読んだために「予想と違う」となってしまいました。
 それでも細かく“少女”が成立する過程を追ったこの本は明治・大正期の少女文化を理解するための一助になるような気はします。

関連書籍レビュー

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『ぼくらは都市を愛していた』神林長平

ぼくらは都市を愛していた
神林長平
朝日新聞出版社
2012.7.6
★★★★☆

 世界を襲った“情報震”。情報処理技術を破壊し、人類を滅亡の縁に追い込んだとされる“情報震”とは何なのか。戦闘機は出てこないがもうひとつの『雪風』であり、もうひとつの東日本大震災である物語。

 『いま集合的無意識を』において伊藤計劃への追悼ともに“宣戦”を布告した神林長平。かつては観念に偏重していた“言葉遣い師”が時代と思想を糧に立ち上がる。『いま集合的無意識を、』で呪いと認識された伊藤計劃の言霊が言葉使い師の筆に宿り紡がれ、円城塔の手による『屍者の帝国』 ともども“Project Ito”の呪いを伝播する。

 二つの視点のストーリーが綴られます。ひとつは、情報震なるものに襲われ人類滅亡寸前の世界で生きる情報軍女性士官・ミウの視点。もうひとつは、近未来的世界で体間通信なるものを仕込まれた公安警察官・綾田あいでんによる殺人捜査の視点。神林長平得意の実在/非実在、虚実入り交じった世界が展開されるのですが、そこに現れるのはこれまでの神林長平作品の全エッセンス+伊藤計劃的なガジェット&陰鬱さに思われます。現実世界と創作物とに距離をおく作風であった印象の神林長平ですが、今作では“都市”を軸にこれまでになく現実に寄り添います。“情報震”という言葉に代表される東日本大震災の影。あなたの経験したことは真の客観的現実か?と突きつけてくるのと同時に現実の全体像と個々人が遭遇する狭い現実の対比。さらにはメディアを通じての体験とそれらとのギャップ。SF作家・神林長平の業といわずなんといえばよいのか。あの震災を、直接、間接に体験してなお、この問題提起を行えるのかと溜息がでました。

 「いま集合的無意識を、」で示された志が形となった入魂の一作と思います。単体の小説としても面白いけれど、SFシーンや現実の出来事と対比させながら読むとさらにじーんと来るはず。

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『僕の彼女は女子が好き』門地かおり

僕の彼女は女子が好き
門地かおり
新書館 WINGS COMICS
2012.8.25
★★★☆☆

 百合漫画ファンに評判が良いらしい、と買ってみました。

 収録作品は2002年から2008年に描かれたものをまとめたもの。連作シリーズです。

 私にはちょっと合わなかったです。
 設定はかなり好み。レズビアンを自覚する主人公・小世子に惚れてしまったイケメン・山切。小世子は当然のことながら♂山切には関心がなく……。という感じでうまく行くはずのない二人を軸に、ドタバタギャグ展開。
 ぱっと見でキャラの判別がつきにくいことがあったり、説明なしでキャラ間の状況が変化していたり(掲載誌が変わった際に状況設定が変わる模様)、心理描写と言動とが混乱したりが重なって置いていかれてしまいました。じっくり読めば混乱も解消するのですが。ギャグの下ネタ度は高めですが好みの範囲。それだけにわかりにくさが惜しい〜という感想になりました。
 試し読みコーナーもあるので(単行本を買ってから気づいた)好みに合うかチェックしてからの購入がお勧め。

 山切さん「ごくん」は頑張り過ぎだと思います。ひとしきり笑った後に同情してしまいました。

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『あさがおと加瀬さん。』高嶋ひろみ

あさがおと加瀬さん。
高嶋ひろみ
新書館ひらりコミックス
2012.8.15
★★★★☆

あらすじ

 加瀬さんは陸上部のイケメン女子。園芸部で花壇の世話をするくらいしか取り柄のないどんくさ主人公はさりげなく交わした会話で加瀬さんに憧れてしまうのでした。と、文章にするととても少女漫画な感じですし、絵柄も演出も純正少女漫画調ではあるのですが、定番設定にありがちな陳腐感とは無縁で瑞々しさが魅力的です。加瀬さんは爽やかでかっちょよくて、でもときどき視線がむっつりスケベでもあったりして。ドジでどんくさい主人公もテンションの振り幅がはっきりとした面白キャラで魅力的。そんな二人のささやかな日常がテンポよく描かれます。出会いを描いた「あさがおと加瀬さん。」。登下校にまつわるエピソード「自転車と加瀬さん。」。カラオケネタの「ラブサングと加瀬さん。」。校内マラソン大会を前に一緒に買い物にでかけた「スニーカーと加瀬さん。」。加瀬さんに選んでもらった靴でのマラソン大会編「春風と加瀬さん。」ではちょっと意外な進展も。
 「加瀬さん」シリーズは「ピュア百合アンソロジー」というコピーのつく『ひらり、』の少女漫画的なところど真ん中の印象です。


ひらり、掲載時との違い

 『あさがおと加瀬さん。』を一読し初出時の「春風と加瀬さん。」後半ってこうだったっけ、と首を傾げました。巻末の初出一覧を見ると「加筆」と添えられています。むむ、と思って『ひらり、』vol.7掲載分と見比べてみると……。
 お〜! 加筆というか、ページ構成からして変わってます。ページ数自体も増えていて、重要な違いが。描き下しの追加エピソードこそありませんが、掲載時から気になりつつ単行本の購入を迷っていた方は“買い”な気がします。
 他にも

自転車と加瀬さん。

 下校時の加瀬さんの鞄が肩掛けから斜め掛けに変わっている。コマ単位、キャラ部分丸ごと描き直されている部分もいくつも。

ラブソングと加瀬さん。

 加瀬さんが音楽購入しているらしいコマ〜次のページまで、カラオケルームに加瀬さんが飛び込んでくるシーン、川原シーン。

など、大きく手の入れられているエピソードもありました。
 仕切りページのワンポイントイラストも可愛い。描き下ろしのあとがきは2P。巻頭カラーには『ひらり、』vol.7の扉に使われたプリクラ風カラーイラストがアレンジされて掲載されてます。

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『僕らはみんな河合荘 3』宮原るり

僕らはみんな河合荘
宮原るり
少年画報社YKコミックス
2012.8.30
★★★★☆

 紹介するときに例を挙げてイメージを伝えるのが難しいのがこの『僕らはみんな河合荘』シリーズ。下宿モノで高校生主人公でひとつ屋根の下にヒロインがいて、というと『ラブひな』的なハーレム物がイメージに浮かびますが、『めぞん一刻』的なギャグ要素も強く、そのギャグが下ネタで一の瀬おばさんや四谷さん的な役柄を(一見)キレイなお姉さんたちが担います。
 さあ、どんな漫画かわからなくなってきたはず。
 作者は人間関係を描くのがとてもうまい人。下ネタ満載であってもハートフル。ダメ男・ダメ女も登場しますがそれは世間のレッテル的にダメなだけで心底イヤなヤツではない——どころか内面的には真っ当すぎるくらい真っ当なキャラたちで作中世界はある種の楽園になっています。
 そう。楽園。奇跡的なバランスの上に成立する理想の人間関係がこの漫画の中にあるのです。プー太郎っぽいM男のシロさん、男にだらしがなくちょっとしたことで周囲を巻き込んで大騒ぎする酔っぱらい女の麻弓さん、男という男の気を惹かずにはいられない彩花。どうしてこれで楽園になるのか不思議な感じですが、それは同作者の『みそララ』でも同じ。職業モノの『みそララ』もキレ者のビジネスマンが大活躍する話ではまったくなく、なのに、こんな働き方ができれば幸せだなと思わずにはいられない。そんな漫画を描くのが宮原るりという人なのです。

 三巻は

  1. 真弓さん不幸リサイタル
  2. ムカデdeドキ♡
  3. ヘンショリ後日談
  4. どS小学生再登場
  5. 彩花の弱点!?
  6. 律ちゃん脱ぼっち?
  7. おいしい梅酒の楽しみ方

という感じのお話たちでした。シモネタはあるけど不快に感じられることの(たぶん)ないタイプのおおらかな笑いで読者を選ばないと思います。オススメ。

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