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『彼女とカメラと彼女の季節(2)』月子

彼女とカメラと彼女の季節(2)
月子
講談社モーニングKC
2012/12/21
★★★★☆

 印象の良かった1巻に楽しみにしていた「カノカメ」の2巻。

 明確にユキへの恋愛感情を自覚したあかり、相変わらず謎キャラのユキ、あかりに一途な凛太郎の三人の関係がそれぞれの思いのギャップを伴い、進路や写真を絡めながら進展して行く第2巻です。ユキは感情面でのニブさ……というよりディスコミュニケーション度の高さから無自覚に周囲を強烈に振り回すキャラであるために、あかり視点で進むお話に「うわ〜、どーゆーこと」と読む側も一緒に振り回されます。

 百合漫画好きな方の中にはあるいは「凛太郎じゃま!」とヘテロアレルギーを起こす人もいそうな展開ではあるのですが、普通に読めば凛太郎の立ち位置は非常に切なく思えるのではないでしょうか。こんなにまじめで誠実でイイ男過ぎて薄幸フラグだろうこれ、みたいな。
 この先どのキャラがどのキャラとくっつくのか先の読めないお話ですが、この漫画で描かれるのは 写真≫恋愛 あるいは写真で感情を捉えることを優先するユキだろうと思うので、恋愛感情描写最優先の典型百合漫画のようにはならない予感がします。そういう意味では百合モノとして期待している人たちには向かないんじゃないかな。
 「のだめカンタービレ」がのだめ×千秋の恋愛も盛り込みながらもけっきょくは音楽なしにはのだめも千秋も成立しなかったように、ユキはカメラとアイデンティティの切り離せないキャラであるのでしょう。こういう骨太の「写真ってなんだろう」みたいなものの詰まったお話が好物である身には、同性/異性への感情の揺れまでを備えた「カノカメ」は待望のお話なのでした。

 「カノカメ」は写真がキーとなる漫画ではありますが蘊蓄最優先漫画でもないはず。単焦点である上に動く被写体を追うのには向かない二眼レフで動き回る高校生を写し、自家処理現像の恐らくはモノクロであろうプロセスが描かれはするもののカラーページに登場するのはカラー写真。今は避けて通れないデジタル機材も登場しないようです。写真やカメラの蘊蓄そのものを描くための漫画ではなさそう。けれど作者が写真に不案内かといえば正反対で、相当な写真好き——ユキのように写真学校に行くような、あるいは高校・大学で写真部に入って本格的に勉強したのではないかと思えるレベルでの写真好きであると思います。ストイックに写真に接した人だけが備える写真に対するスタンスがヒロインであるユキに反映されているのです。わかりやすく「写真マニア漫画でーす」という記号はありませんが写真をキーにしか発想することのできないキャラが説得力たっぷりに描かれるというあたり、検索ひとつで知識が拾えてしまうゆえに知識面での見せびらかしだけでは見向きされなくなった現代の漫画ならではの濃さがあります。『ちはやふる』なんかもそうですね。作者が明らかにマニアックなレベルの経験を持っていて、それを武器にしている。そういう種類の漫画です。

 百合面ではどうか、というとこちらも私にはとても好ましくて、「同性が好きかもしれない」という戸惑いや周囲とのギャップ、定まりきらないセクシャリティ、同性愛ということ以上にギャップとなる自分と他人の溝が描かれていて百合漫画専門誌が霞んで感じられました。「カノカメ」を読んでいると専門誌という約束の中にないがゆえに描ける百合がある気持ちが強くなります。たとえこの先ヘテロエンドになったとしても百合漫画オタの端くれである私が「カノカメ」を大切に思えた気持ちは確かにあったのです。そしてこの印象が過去完了とはならないであろう続巻が来ることも確信が持てます。紛れもなく2012年の収穫のシリーズとなりました。

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