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2013年1月の7件の記事

百合アンソロジー『Dolce due』

Dolce due
エンターブレイン・マジキューコミックス
2013.1.25
★★★★☆

 前回印象の良かった『Dolce』の第二弾。今回の執筆陣は、

表紙:ひびき玲音、小梅けいと
カラーイラスト:茉崎ミユキ、ぷれあ、らぐほ、柿月イナ
漫画:真西まり、ぴかち、ナヲコ、百合原明、水瀬るるう、飴沢狛、みずのもと、やまもとまも、水本正、ひげなむち、渡まかな、すいみゃ、Peg、黒井みめい&稀周悠希、うた、ベンジャミン

 ボリュームは前回より少し増えて274ページ。今回のお気に入りは、ナヲコ、百合原明、水瀬るるう——と前回と同じになりました。イラストに力が入っているのも前回同様で巻頭カラーで4ページ。表紙カバー下もカラーイラストがあったりします。短めの話が多いので「ワンシーンで萌える百合アンソロ」的な感じでしょうか。好み、と挙げた作家さんたちの作品は割とページ多めでした。

 今回も試し読みができます。

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『ウタカイ』森田季節

ウタカイ
森田季節
一迅社
2012.1.18
★★★★☆

らぶらぶだよぅ〜

 『百合姫』の2012年5月号から2013年1月号に連載された長編小説の単行本化です。帯には「コミック百合姫連載作を大幅に加筆修正、描き下し超短編も収録。」とありました。どのくらい変わっているのだろう、と連載分と照らし合わせてみたところ短歌も文章も相当に手が入っていました。短歌では言葉の選び直しが徹底され、文章もストーリーの大筋に変わりはないものの細かくあちこちが見直されていました。

 体裁はB6版ソフトカバー。表紙は金色でキラキラで、その金の色味が「和」の感じ。重厚感があります。表紙イラストは雑誌掲載時の茂田家からえいひに。本文イラストはなし。表紙と扉絵で小さな仕掛けが施されていて最近の『百合姫』の表紙の作りを連想しました。
 『百合姫』掲載時には字が小さめでしたが単行本では1.3倍程度のフォントサイズになっていて読みやすくなりました。一行文字数も増えて短歌が途中で改行されなくも。改行位置によってはぶった切り感がでちゃいますもんね。フォントが短歌のみ毛筆体になったのも読む側のモード切り替えが働いて良い効果が出た気がします。
 装丁や体裁も含めて、電子書籍が出てきている時代を反映して紙ならではの良さ・質感に訴える本作りをしてきている気がします。実物を見ると欲しくなるはず。なりました。

 異能バトル+短歌+学園百合でライトノベル寄り。短歌を詠む際に“歌垣うたがき”なる特殊効果的なものが生じ、詠み手たちは炎や氷や霞や龍の歌垣を伴う短歌で勝敗を競います。この歌垣の設定があまり細かく説明されないので「これは複合現実ARみたいな技術を利用してるの? 伝奇的な超能力バトルなの?」と軽く戸惑いますが、読み進めば「とにかく歌垣というものがある競技短歌なのだ」と引きずり込んでくれます。ニュアンス的には熟練者同士の共同幻想……みたいなものかな?

 単行本を読んでいて気づかされたのは、この『ウタカイ』が少し前からの『百合姫』の路線を反映しているということ。二年ほど前の“再誕”リニューアル以降、『百合姫』では表紙連動イラストノベルでガンアクション百合をやり音楽ものやサーカスものの連載をするようになりました。2013年3月号の編集部座談会記事でも「百合+α」について触れられているように、百合恋愛のみでなく他のテーマを合わせ持ったものに注力されているようなのです。
 『ウタカイ』はそこにぴたりとはまります。短歌という“α”を異能バトル化し、けれど本筋である百合は恋の歌でたっぷりと。短歌の扱いも本格的で「歌のためにすべてを擲つ」キャラが自らの恋愛をも歌の素材にしていくという“業”を背負わせ、歌を詠みまくる。しかも難解さもなく「読めばわかる」。これは『百合姫』の求めるものがそのまま——以上に良い形になった作品だと思うのです。

 短歌、ということで素養のない私は連載開始時にちょっと身構えて読みはじめました。
 でも短歌も慣れます。慣れました、簡単に。各キャラの立場で詠み分けられているのもわかりましたし、まっすぐな主人公の詠む短歌もまっすぐです気持ちよく通じます。短歌もお話も素直に面白い!と思えたし、単行本で改めて読み直しても面白かった!です。

 単行本を読み終えて強く思ったのは「『ウタカイ』について誰かと話したい」でした。あと「身近な本好きに勧めたい」。短歌好きな人にはこの話は、話の中で詠まれる短歌は、どう映るのだろうと気になります。この一首はいい、これはイマイチ、この歌のここがいい、みたいな議論や評が聞いてみたいし、「これ萌えたよね」「うんうん」というのをやりたい。
 私が気に入ったのは甘雪の

地下五階飛び降り自殺できなくて屋上着けば気分晴れゆく
虫刺され刺されるところ見たことないほんとに虫かほんとうに虫か
皿を割れ一時間後を考えず皿を割るのだ十七歳なら

森田季節『ウタカイ』P.155より

といったあたりで読んでいて鼻水が出ました。ぶはっ。

背の高いあなたのために背伸びする努力を褒めて、でなきゃ縮んで

森田季節『ウタカイ』P.157より

こういうのも好きです。笑いオチのあるものが好み……なのかな。

 オススメのポイントはもちろん短歌ものであるということですが「らぶらぶ」なところも推しです。
 といってもラブシーン描写があるわけではないです。主人公には先輩兼ウタカイ・ライバルである同性の恋人がいて、作中のほとんどすべてが恋人への思いから生じる行動と短歌で占められているのです。描写としてはせいぜいが手を握る程度なのに、最初から最後まで言葉でいちゃついていて、でもベタベタした感じじゃなくてきりっとして甘々。恋ってなんだろう、というところをこれでもかこれでもかと描いてくれます。らぶらぶ度高いです。

 読書メーターでも反応良さそう。

 鏡霞先輩と主人公・伊勢を描いた前日譚も作者ブログで公開されています。『ウタカイ』単行本作中とも呼応するシーンや歌がありました。

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『コミック百合姫』2013年3月号

コミック百合姫 2013年3月号
一迅社
2013.1.18
★★★★☆

 今回も待ち遠しかった発売日。買ってすぐにファーストフードに飛び込んでたっぷり堪能しましたですよ。

表紙 浜弓場双

 窓が開いていたり、折り返しに仕掛けがあったりとギミックに凝った表紙の多い『百合姫』ですが今回は繊細な小技で来ました。マットの白ベースなのは雪のイメージでかつ今回の「氷」部分のUV印刷のツヤツヤを生かすためのようです。しかもよく見ると、ツヤツヤ盛り上げ印刷部分、表紙ど真ん中以外は水滴の滲みっぽい表現になっていて、雪が溶けたもの?あるいは「初恋を振り返って涙を落としている」シーンだったり?とか思ってしまうわけで。表紙も見返しも幸せそうな二人ですが。

犬神さんと猫山さん くずしろ

 巻頭カラーから始まるのは単行本発売との連動かな。今回は新キャラ登場。このまま動物大集合漫画になっていくのでしょうか。

citrus サブロウタ

 これでもかという恋愛ドラマ風波乱たっぷり展開はTL誌で鍛えてきた作者らしい、というべきなのかな。イケイケ展開が新鮮です。主人公が破天荒キャラで次から次へと見せ場を作ってくれます。前回は連載初回だから特別に盛った展開だったのかなと思いきや今回もばっちり盛り上げます。次回への引きもガッチリ。トラブルメーカーの主人公はパワフルで魅力的。なのに攻められると弱いとかもう可愛いな〜。

好きの海の底 大北紘子

 日常モノ16ページ。いじめネタ、ですが百合誌ということでいじめネタはメインではなく。大北紘子の漫画は読者視点での一人称感がなくて少し距離のある感じで、そこが独特の明るさのような底の知れない感のようなものがあります。また異世界設定のものも読みたいな。

キラキラの中身 井村瑛

 ここ数作、絵柄というか雰囲気が可愛らしい方向にシフトしてきている井村瑛。今回はアイドルモノ。アイドルとしての仮面キャラが重荷になっていた主人公はある日素顔で勝負できるきっかけをもらったのでした。そのきっかけをくれた人は……というお話。

スノーフレイクス 百乃モト

 百乃モト久々だ〜。そして小ネタなのに、じわ〜っときました。こういう話こそが百合だったんだよ、という読後感。

センチメンタルダスト 河合朗

 表紙の水滴エフェクト、涙なんじゃないだろうかと思ったのはこの「センチメンタルダスト」の扉絵がそれっぽかったから。このシリーズ、この形にしかならないというところにカチリとはまる展開でかつジーンと来る感じがずーん、じわ〜っと来ます。百合姫の新人賞から出たばかりの人がいきなりの連載で描いているというのがびっくり。次号が楽しみ。

ゆるゆり なもり

 やばい。この結衣×綾乃駄洒落空間体験した井の頭公園。

ないしょのかいじゅうちゃん ちさこ

 OLモノだけどどこか女子校モノっぽいところがあったりするのもこの作者らしいところかも。

ジュリエット×2 慎結

 憧れの上級生への想いと現実にはギャップがあって、慎結の得意な心の痛くなる状況もあり。百合というのが必ずしも恋愛だけを描くものでなく、少女を描くという純正少女漫画としての側面を強く持ちますが慎結の作風はまさにそこにどストライクだと思うのです。

きものなでしこ 八色

 毒キノコの代表みたいなテングタケの仲間はほんとにおいしいらしい。

少女惑星 柏原麻実

 それぞれ独立したお話の連作短編シリーズ。今回は写真ネタ。最近は『カノカメ』『東京シャッターガール』など写真漫画が人気の模様。今号の『百合姫』でも森島明子がやはり写真部ネタ。こちらはデジタル一眼レフの動画をテーマに。明るくハイテンションな主人公と大好きな部の先輩と、というお話。

ふ〜ふ 源久也

 堂々の最終回。堂々のというか、いつものげろ甘の、いつものままの「ふ〜ふ」らしい終わり方でした。

雪バラ紅バラ タカハシマコ

 久々のタカハシマコ。今回は割とストレートなお話しだったかな。やっぱりタカハシマコのおかっぱは見ているだけで嬉しくなってしまうのです。何気ない話に見えるけど今回のモチーフの薔薇のようにトゲはやはり潜んでいて。でも『それは私と少女はいった』や『(ニコ)』ほどには恐ろしくは見えなくて。巻末の予告によると次号もタカハシマコ掲載ある模様。やったぁ。

月と世界とエトワール 高上優里子

 王道だけど陳腐じゃない。定番設定山盛りだけど退屈じゃない。「なかよし」で描かれている作家さんの地力をひしひしと感じさせてくれます。だって問答無用で面白いもん。一言、一言だけ。「や〜い、岸辺世界攻めなのにへたれ〜」

めかくしのこい(後編) 竹宮ジン

 前回の(前編)から不吉な感じが漂っていた「めかくしのこい」。今回はそれが露わになってザクザク心に刺さるお話に。白泉社の『Girlish Sweet』で全開になっていた作風に少し寄せてきた印象。

散華ノ傷跡 黒霧操

 ぉぉぉ。いい感じ。描こうとしたものと結果にはたぶんまだギャップがあるのだろうけれど、でも伝えたいものはわかる気がする。ぐっとくる。今回のモチーフになった植物はたぶんナンバンギセル。面白い形の花がつきます。

カノジョと彼女 森島明子

 ヨクボウと恥ずかしさと思春期と。ネガがおうちに月宮さんをお招きするまでのとこ、もうちょっと読みたかった。押し倒すシーンも好きだけど恥ずかしがり屋さんが頑張るシチュはより好物なのに〜という意味で。今回は写真でしたが、マニアックなネタのお話なら森島明子は江戸オタクという側面を生かして歴女百合漫画とか濃いのが作れそうなんてちらりと思ったり。ほら「日本百合戦」とかいかにも百合向(ry

百合姫編集部座談会

 この手の編集部記事、好きです。今回は編集者たちの百合モノ年間ベストで挙げた作品たちを振り返りつつの百合界分析、『つぼみ』休刊について、これから、と語られていました。『つぼみ』についてはなぜ休刊になってしまったのか未だにぴんと来ない……。
 この記事の司会役、誰だったんでしょうね。

ロケット★ガール 田仲みのる

 おお。少しお休みしている間に作中で三年が過ぎて。いきなり展開もハードというか重め。ノリノリでいけそうなエスカレーション部分をすっ飛ばしちゃうのはもったいな〜いと思ってしまいました。

恋愛遺伝子XX 影木栄貴×蔵王大志

 新キャラで新展開。このシリーズ、毎回見せ場ががっちりあって、大きな転回が節目節目で入る強力シナリオと強力な連載ですが、いよいよ大詰めに入ってきた感じがします。

私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた

 むむむ。これも心に痛い展開で今号の『百合姫』は全体にヘビーな印象に。この作者のお話は読んでいると昭和的な香りを感じます。バブルよりさらに前の、テレビドラマの黄金時代の頃のおおらかなキャラクターみたいな。

ストレンジベイビーズ 大沢やよい

 おおお? ヤギー様が迷走してる。で、ようやく確信が持てました。読切り短編の設定はヤギーとまどれーぬがコンビを作ったところまでが同じでその先は連載独自展開の模様。なんで恋愛物はすぐそっちへ行くんだー、いや、ぐぎぎぎぎとなるのも楽しいけど。連休合宿ではココットの料理動画ネタをやったりするのだろうか。

百合男子 倉田嘘

 わははー。前回の感想で書いた予想というか期待が当たってた。そうだよね。やっぱり百合男子側の「百合とは」が一段落したら女子にとっての「百合とは」も描かなければ。タイトルこそ「百合男子」だけどこの漫画は「百合ってなんだろう」というお話なわけで。しかし、思わせぶりに登場していた謎女子があの人だったり、百合女子開眼一番手があのキャラだったりと意外な展開に。

 今回は「ニコニコ百合姫」の告知も。オンラインコミックがニコニコ静画で。「ゆるゆり」からのスピンオフ「大室家」、八色、くずしろ、ねこ太、すこやかが挙げられていました。『百合姫』本誌が発売されない偶数月の18日に更新の模様。
 真っ白い紙のページは前号までは小説掲載枠だったのにな、と少し寂しくなった号でもありました。

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『NOVA9』大森望編

NOVA9
大森望編集
河出文庫
2013.1.9
★★★★☆

掲載作

眉村卓ペケ投げ
浅暮三文晩夏
斉藤直子禅ヒッキー
森深紅ラムネ氏ノコト
田中啓文本能寺の大変
小林泰三サロゲート・マザー
片瀬二郎検索ワード:異次元/深夜会議
宮内悠介スペース蜃気楼
木本雅彦メロンを掘る熊は宇宙で生きろ
谷甲州ダマスカス第三工区
扇智史アトラクタの奏でる音楽

感想

 今回のNOVAは好みの作品が多くてお得な一冊でした。
 印象に残ったものの中からコミPo!で漫画にしやすそうなものを感想or紹介漫画にしてみました。

Nova9/斉藤直子「禅ヒッキー」Nova9/森深紅「ラムネ氏ノコト」Nova9/小林泰三「サロゲート・マザー」Nova9/扇智史「アトラクタの奏でる音楽」

 谷甲州の「ダマスカス第三工区」の宇宙土木シリーズも面白かった。これはいずれ単行本にまとまるかな? エンケラドゥスで水採掘プラントに起きた事故の話。
 スペース金融道シリーズは宮内悠介の書くものの中ではちょっと苦手な題材なのですが、今回はカジノでゲーム理論っぽく展開するあたりが面白く引き込まれました。

 今回の出色は小林泰三「サロゲート・マザー」と扇智史「アトラクタの奏でる音楽」。前者は代理母もので素材の良さと筆力とお話の仕立てがもう完璧! 後者は百合+複合現実SFの音楽モノで百合好き兼SF好きにはたまらないお話だと思います。百合にはあまり関心を持たない人にもサイバーパンクが一周して日常になりかかっている時代のお話として、カオス理論による大衆行動の分析にリアリティが備わってきた感が味わえるんじゃないかな〜と思ったのでした。

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第四回創元SF短編賞応募

 第四回創元SF短編賞向けの原稿、無事完成し応募することができました。

 タイトルは「ルビィ・ドロップス」。
 学園が舞台の百合的な設定で紅茶をネタにしてみました。SF度は薄め、かな。言語学の要素をちょっぴり入れてみました。

 大雑把に文字数だけ見ながら書き上げたら規定フォーマットで29枚になってしまって25枚に縮めた、つもりだったのですがエディタの設定をミスっていて21枚相当にまで縮まってしまったりとバタバタしました。ネット投稿では受付番号240番台でしたがトータルではどのくらい集まったのかな。四月下旬の「はるこん2013」にて最終選考会が行われるようです。投稿作、頑張ってくれるといいなぁ……。

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『専門家の予測はサルにも劣る』ダン・ガードナー

専門家の予測はサルにも劣る
ダン・ガードナー
川添節子訳
飛鳥新社
2012.5.28
★★★☆☆

 この本のタイトルを見た人はきっと「ああ、外れた予測を列挙して専門家がいかに頼りにならないかをあげつらう本なのだな」と思うのではないでしょうか。私もそんな内容を予想しました。読んでみると、実際その通りの外れ予測のオンパレード。でも、予想と違ったのは「専門家など頼りにならない」と扱き下ろすだけではなく、社会心理学の成果を元に、ヒトという生物の特性として予測はうまく働かないのだ、と説く本であったことです。

 読みやすい本です。ほぼ、日常的な語彙だけで書かれていて登場する“予測”やその批判についても専門用語は抜きです。「キャリブレーション」や「判別」、「ヒューリスティック」、「バイアス」といった言葉も登場しますが、それらは挙げられた例に付された記号のような扱いで、きっちり把握していないと先が読めないということもありません。

 この本で紹介されるのは主に社会心理学の視点で浮き彫りにされるヒトの習性。とにかく予想は当たらないんだよと例が示されますが、あくまでも「そういうもの」として習性を示すだけで理屈付け、シナリオ付けをしていません。それはこの本で示される過ちの原因=物語を避けているということなのでしょうが、どうしても説得力という点で不満が残ります。ヒトが騙されやすい/間違いやすいのは××な構造が頭の中にあるからだ!という仮説をばばーんと提示してしまうと読んでいる側も「おお!」と思えますが、それはこの本が警戒対象とする“認知バイアス”にはまってしまう道なのでしょう。
 それにしてもこの本でいうところの「キツネ」路線(曖昧さを曖昧なまま認める戦略)の華のなさったら。

 この本を読む前に読んだ『心は実験できるか―20世紀心理学実験物語』ともども、何らかの法則や真理が導けるわけではないですが、ヒトという生物の行動をそれなりに浮き彫りにしてくれる心理学実験というのは面白い、と思わされました。

 一方で科学は未来を予測するための手段でもあります。鉄砲の弾を狙った場所に飛ばすということはニュートンの運動方程式から始まる工学によってごくごく小さな範囲ではありますが、未来を予測・想定した範囲に収める方法です。経済学だってそんな未来予測や未来制御のひとつ。頼りにならないのは自称専門家たちの直感による未来予測であって、計算と検証で導き出す科学がまったく完全にダメなわけではないはずです。まっとうな科学はその手法がどの程度頼りになるかも示すことができます。「科学は万能ではない」ですが、有効な範囲と有効な度合いが示せるのも科学。このあたりももうちょっと取りあげられていればな、批判により過ぎの本だっかな、という感想になりました。

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『はしっぽ花星1』こがわみさき

はしっぽ花星1
こがわみさき
電撃コミックス
2012.11.27
★★★★☆

 帯の裏表紙側には「“百物語”の恋話バージョン“花物語”」という言葉があり、吉屋信子が好きな私は「おや?」と引き寄せられました。中身を読んでみると帯の文言通り、順繰りにする恋バナのことでした、と紹介すると雅な話っぽいですが導入部のイベントがスカートめくりであったり、千人めくりなんて言葉が飛び出したりとやんちゃなノリもありました。絵柄はシンプル系少女漫画風で可愛いくも萌え絵という印象ではないです。好みの絵。
 舞台は共学校で主登場人物は女子ばかり。主人公・小梅のキーパーソンが男子っぽい女子であるということから百合的な方面にも期待はしてしまうものの1巻時点ではそういう種類のお話ではなく、高校生の日常と友情を丁寧に描いています。
 掲載誌は「電撃大王ジェネシス」で休刊ということで「電撃大王」に移行だそうです。少女漫画誌に掲載されていても違和感がなさそうな作風かな。ちょっとズレたところのある“若”が凛々しくカッコ良くキマる絵があちこちにあってギュンと来ました。こういうキマるシーンを持っている作者の漫画に滅法弱い身としては続刊も購入決定となったのでした。

 戦闘も魔法もない学園友情もので地味と言えば地味。でも、とても好感の持てるお話です。おすすめ。

 試し読みもありました。

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