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『コミック百合姫』2013年5月号

コミック百合姫 2013年5月号
一迅社
2013.3.18

 Amazonで「百合姫」を検索すると2012年11月号以降の号に「人気」マークがついていたりする今日この頃。巻頭カラーが「ゆるゆり」グッズの通販告知や「ゆるゆり」イベントのレポートであったり、アイマス漫画の「ゆるゆり」アニメ曲のカバー付録の宣伝であったり。一番くじフィギュアとか画集とかも告知があって、アニメで続編シリーズができるというのはこういうことか〜と。

表紙

百合姫リューアル前との比較  今回はキリトリ線があって「自分で細工してね」表紙。にゃるほど。その手が使えるなら今度は「飛び出す絵本」を読者に切り抜き&のり付けで作らせるのも……。表紙と同じくらいの固さのカラーページを組めば、って手芸誌みたいになりますね。
 浜弓場双の表紙は今回もとてもキュートでマット仕上げの質感ともよく合っていて春色のパステルカラーが素敵です。リニューアル前の百合姫も表紙はマット仕上げでしたが印象がまったく違うのはデザインの力なのでしょう。単に表紙のデザインが違うだけでなく、掲載作一覧で表紙を埋めずに裏表紙(表4)に持ってきたり、それを可能にするために広告を全廃したり、編集部特集記事の体裁や多種の紙質の配置まで含めてトータルでデザインされていることを感じさせます。巻末に小さな文字で記された表紙デザイン・本文デザインの方たちの仕事なのでしょう。画像は今号とvol.18の比較。どちらも550ページ程度ですが紙が変わって厚みが薄くなっていることがわかります。裏写りの度合いは変えずに紙を変えて、という部分もきっとデザインの一環。
 表紙は1月号から浜弓場双になりましたが各号のキャラは全員別キャラなのかな? 1月号と5月号の黒髪キャラは髪型も似てる気がします。

ゆるゆり なもり

 71話目の結衣がキャラが違っていて「あれ? あれ?」と大いに惑わされました。長期シリーズだからこその技が。

星や菫のことばかり タカハシマコ

 タカハシマコは「タイガーリリー」でも前号の「雪バラ紅バラ」でも中年以降の女性や老女を出してきていて、今回はそこに『女の子は特別教』 収録の短編や『(ニコ)』で描かれたゴシックな要素が何気なく加わります。少女漫画的な華やかさを備えた少女主人公のどうということのない振る舞いのあちこちに自然に毒が盛り込まれてくるタカハシマコ感。今号はhimecafeもタカハシマコで幸せ。

月と泥 大北紘子

 今回はエグい要素のある方の大北紘子。「ゆるゆり」に続いてタカハシマコと大北紘子で畳み掛けるのは一見ソフトで華やかな絵に含まれた毒で新規読者を染め上げてしまおうという戦術なのかもしれません。都合の良い未来などとても予感することのできない展開ながらも、それがこのお話の中での一瞬が輝くことを感じさせつつ。

キミにあいたい 蕗

 新人賞受賞後第一作。「百合姫」を読んで育った年代が描く側に回るくらいの年月が過ぎつつあるのかなとなんとなく思えました。友情から、の初々しさあるお話。

見つけちゃ、ダメ 井村瑛

 とてもとても可愛らしい方向にシフトしてきている井村瑛。今回は一言にするとツンデレなのですが、テンプレートなツンデレではなくてこっぱずかしさ爆発の甘々ツンデレ。これは融ける。ホイップした生クリームを温めたかのごとく。

インモールドガール 黒霧操

 今回の黒霧操は作画で一皮むけた印象。絵そのものは(キャラ絵自体は)変わっていないかもですが、変化がどばっといきなり豊かになって置物のお人形さんみたいな印象が消えました。これは大進化中かも。マニュアル人間の脱マニュアル話、とまとめると一言ですが演出の洗練が加わってぐっと来る話になってます。

犬神さんと猫山さん くずしろ

 作中では六月を先取りだそうで透けブラ回。破壊力バツグンでした。後半は犬×猫喧嘩回でやっぱりこれはお約束の展開に。

サクラフル 慎結

 現代の身分違いの恋。格付けは学校にまで及んでいて、恋した男子に学校のブランドを理由に否定された主人公。なぜかブランド校の女の子と知り合いになり――。

きものなでしこ 八色

 今回のきものなでしこは一気にかの子×紗綾の仲が進展。ここしばらく恋愛よりに話を振ってきてはいましたがちょっとびっくりの展開です。

himecafe

 タカハシマコのゲスト回。このコーナーは毎回楽しみなのだけれど、今回は格別。しまった。前号のアンケ葉書にhimecafe向けのメッセージ書いとけば良かったー。

yurinote 峰なゆか

 文章とイラスト1ページずつのこのコラム、今回は(食べ物の)肉話から見事な話の流れで百合話に。『アラサーちゃん』も読んでみようと思ったのでした。

百合ソムリエになろう 復習編

 も、文字が見えない。背景が薄い黄緑で文字がちょっと濃いだけの同系統の色で刷られた部分があるのですが、ソムリエ向けのオススメ理由が書かれているらしいのに読めなくてヤキモキ。
 百合ソムリエのガイドに反するようですが、趣味モノのオススメは経験上非常に難しいです。まずは相手の好みに合わせたものを勧められるように相手のことを知る――のはこの特集記事の通りなのですが「百合モノを勧める」という前提は捨てた方がいい気がします。相手に勧めて喜ばれる本や漫画はきっとたくさんあって、それは必ずしも百合モノではないはず。百合に染まる人は染まるべくして染まる人だけ。百合トハ無為自然ナリ。曷! というわけで明らかに染まる人を見つける百合レーダー(ユレーダー)を磨くのがオススメだっ! ……なんだこのノリ。

月と世界とエトワール 高上優里子

 海百合様との歌姫エトワール対決ももちろん……とネタバレしても面白さが伝えられないと思うので内容紹介はナシにしますが、40ページ掲載で読み応えたっぷりな上にとてもとても大切なシーンがありました。このお話は作者のホームグラウンドである少女漫画誌の読者にもオススメしたいなー。単行本1巻も「初夏」予定だそうです。

ナクシモノオクリモノ 竹宮ジン

 前号に続いてさとみと那奈のお話。ドロドロ要素が増えてきていて(前回はもっと濃かったけど)天野しゅにんたと竹宮ジンが人間関係ややこしい系双璧になっている気がします。

citrus サブロウタ

 芽衣の行動の動機はまだまだ謎のままですが今回も一波乱ある36ページ。偶発的な出来事がターニングポイントになって芽衣と柚子の関係が一転したような気がします。1月号から始まった新連載はどれも『百合姫』の外の風を吹き込んでくれているよう。「citrus」も初夏には単行本出るのかな。楽しみ。

さかさまブランコ ちさこ

 酔って記憶をなくして片思い?中の先輩に何かやらかしたっぽい、というところを軸にした読切20ページ。

不自由セカイ コダマナオコ

 こちらは先行した描き下し単行本からのPR企画、なのですがちょっとゴージャスにマット紙のカラーページが割り当てられて、単行本よりも大きなサイズでカバーイラストが見られます。見返し?ページもかっちょ良い帯のデザインを反映させたもの。単行本『不自由セカイ』もとても良かったのでオススメです。次号にはコダマナオコの読切も載るとか。楽しみ。

世界を構成する塵のような何か 天野しゅにんた

 Twitterでは「しゅんにた」とか「しゅたにん」とか「にしゅんた」newとか色々名前を間違われているのを見かける作者。作品世界の方も非常にややこしいことになっていてやきもきするのですが、このやきもき感は覚えが……。ええと「すくらっぷ・ブック」や「軽井沢シンドローム」の頃の日常系漫画で感じた泥沼感に近いような。

センチメンタルダスト 河合朗

 最終回でした。ボリューム的には短期集中連載といった感じですがこれがいきなりのデビュー作で初連載でってスゴイ。大きな流れはもう見えていての最終回で落ち着くところに落ち着いた、のだけれどずーんと読ませるこの手腕。ウェットな感情にぐいぐいと引っ張り込んでいくパワーがあります。

ストレンジベイビーズ 大沢やよい

 思うに『百合姫』読者は想い人を持ってかれた話が続く連載みたいな話に対する耐久力のないタイプが多い気がします。私も含めて。ヤギー様をココットに取られたまどれーぬが不憫で不憫で。読切短編で一度ハッピーエンドを見ているだけにやきもきさせられて今回で最高潮。でもきっと次回からはまどちゃんのターンになるはず。打倒ココット!と思いつつ、ココットのような役回りも好きだったりして。

百合男子 倉田嘘

 百合女子編は百合ソムリエ養成ターンのようなのですが、ああ、なんという啓介。ダメな百合オタクの完璧コンボをかまします。しかもまだパワーアップするっぽい気配もあります。啓介は『百合姫』の特集記事を引っぱってきたりしていますが、啓介本人が「百合男子」を読んだらどんな反応をするのかなどと想像してプププとなったり。

 次号予告では河合朗のツイートから発した「アホっぽい百合」

のコミック化告知がありました。連載陣の単行本発売も。百合姫コミック大賞の発表もあるはず。「ロケガ」と「XX」が休載であったのは残念でしたが予告にはあって一安心。
 四月は百合姫コミックスが四冊と小説「あまいゆびさき」の単行本が出る予定のようです。五月には森島明子の単行本が二冊同時発売らしいですが雑誌上にはお知らせはまだのよう。これは「ニコニコ百合姫」が正式告知場所になるのかな。夏からは1月号以降に増えた掲載作の影響でコミックス発刊ペースも上がりそう。

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