« 2013年3月 | トップページ | 2013年5月 »

2013年4月の7件の記事

『夜の図書館』ソウブンドウ

 ソウブンドウ様の『欠落少女コレクション』というサークル誌に寄稿させていただいたご縁で同サークルのバックナンバー『夜の図書館』を読む機会をいただきました。その『夜の図書館』の掲載作の紹介&感想です。

ソウブンドウ「夜の図書館」表紙

 『夜の図書館』の体裁はA5版で、1ページが25字×23行×2段組の78ページ。黒々とした文字がくっきりとした印刷で読みやすい仕上がり。収録は5作品。タイトルの“図書館”通りお話の集まりという雰囲気で、テーマは“夜”で統一されていました。

トリップ・クラップ・ガール 神尾アルミ

 一迅社文庫アイリスで活躍中の神尾アルミ氏。お話の内容はどこまで紹介しようかな。オススメしたいジャンル読者がいるのです。でも、そのジャンルを明かしてしまうとネタバレになってしまうというもどかしさ。う〜む。伏せたままにしておこう。私の好みの設定であったとだけ。
 主人公・聡子は身の上や境遇を軽く妄想する癖のある少女。読みやすく洗練された文章で聡子の妄想と現実を繋ぎます。秘めた恋と友人に対する顔と友人には見せられない顔。そのギャップが、噴き出してくる内心に“少女”を描いたお話なのだと感じます。そこからさらにもう一種類の“少女”が見出せもするのがまた素敵です。

夜方の夢 若本衣織

 『夜の図書館』という本の中でさらに小さな夜のお話四つが入った、いわば入れ子の夜の図書館とでもいうべきお話たち。水族館、博物館、大使館、映画館と館in館の構造を思い浮かべずにはいられません。それぞれ異なる雰囲気を作るお話たちは様々な味のキャンディが詰め込まれた小箱のよう。

遊園地のよるに 木々津伊織

 警備員の怪談話かと思いきや……の掌編。『攻殻機動隊』の影響もほのかに、冒頭とはちょっと違う種類の怪談的な、ケヴィン・ケリーやレイ・カーツワイルの言う特異点が密かに横たわっていると感じさせます。

女郎花織る蛛将 空木春宵

 第二回創元SF短編賞で佳作に輝いた空木春宵氏の「繭の見る夢」(『原色の想像力2』収録)を読まれた方はご存知の、平安の香り漂う雅な文章がここでも読めました。平安末期を舞台に、蛛将ちゅうじょうと呼ばれる変わり者の貴族を語ります。“蛛”の文字の通り蜘蛛が絡むお話ですが、読んでいて連想したのは18世紀に実在したらしい蜘蛛の糸の手袋やストッキング、ドレスの逸話でした。「コロボックル物語」で小人たちが愛用していたロープ代わりの糸も思い出しました。いえ、そういうものが登場するお話ではないのですが作中で描かれる美しくオリジナリティあるイメージが蜘蛛にまつわる記憶を掘り起こすのです。文章から香り立つ色気、タイトルになっている女郎花のシーンが引き出すビジュアルなイメージの美しさ。すごい!があります。

サクラの木 平山翔

 桜の樹の下で出会った幽霊のお話。梶井基次郎的なイメージからスタートする時代を越える想いを描きます。桜花の舞い散るイメージに情緒スイッチが入りました。

 全体としてはウエットよりの、叙情に訴えるお話で構成されていたかなという印象でした。ソウブンドウのサイトでは「創作初心者からプロまで」のサークルとありましたがソウブンドウとして二冊目であるからでしょうか、いかにも初心者的な作品はなかったように思います。もちろん、商業小説の短編集のようにはいかないのも確かですが。
 評価の定まった名作だけを読みたいのであれば本屋に並ぶベストセラーで十分。でも同人誌を、とあえて手に取る方であればキラメキみたいなものを感じられる作品がある本だと思います。

 残部もあまり多くないそうですが、4/28の超文学フリマ【キ-35】での販売もされるそうなので気になられた方は覗いてみてはいかがでしょう。

|

『欠落少女コレクション』に「自由意志」寄稿

小説創作サークル・ソウブンドウ様の新刊『欠落少女コレクション』に(400字詰換算で)50枚ほどの小説を載せていただくことになりました。

配布: 超文学フリマ(ニコニコ超会議2の二日目4/28)
スペース: キー35
執筆者: 神尾アルミ
空木春宵
サモト
七木香枝
志保龍彦
enu(装画)
藤あさや

※5/5のコミティア104にも委託販売されるそうです。

 すごく素敵な表紙です。ここの要素は私の話かな?などと表紙イラストを眺めつつイベント当日を楽しみにしています。

 宣伝用に作ったCGイラストも貼っておきます。

短編小説「自由意志」宣伝イラスト by touasa on pixiv

短編小説「自由意志」宣伝イラスト2 by touasa on pixiv

短編小説「自由意志」宣伝イラスト3 by touasa on pixiv

短編小説「自由意志」宣伝イラスト4 by touasa on pixiv

 CGとともに詠んでみた作中シーンやキャラ心情の短歌なども。Twitterに投稿したものです。作中に短歌やCGイラストがあるわけではありません。念のため。

黒髪が欲しいと独りごちる手が見えない刃物求めさまよう

眼球と手足散らばる工房に石粉の香も甘いたそがれ

人形と置き去りにされ君の部屋人目なくともカーテンを引く

「好きだよ」とファインダ越しに囁いた恋の相手は実像だろうか

人形を削る刃に染む黒はひとかたならぬ身の上を告げ

ゴス謳う君の書棚に並ぶのは無垢の手首に透ける傷跡

消えぬ傷残した君の蒼い目を捉える術はもはやなくとも

ラドールを盛った厚みはうつしみと反比例する逆二乗で

|

Dell U2713HM 購入レビュー

 パソコンのモニタを新調しました。

Dell U2713HM購入

購入

 DellのU2713HMです。NTT-Xストアで購入。44980円でした。セールということになっていますが3月くらいからこの値段で購入できたようです。27inch以上のモニタもLEDバックライトになり、昨年あたりから値段も手頃になってきたということで購入に踏み切りました。27inch/WQHD(2560×1440)です。Mac miniでの使用。I-O DATAのLCD-AD202Gという20inch/UXGA(1600×1200)からの置き換えです。

接続

 Mac miniとの接続はmini Displayportを使用することにしました。Mac mini late2009標準のDVIアダプタとU2713HMの組み合わせでは1920×1080までの表示になってしまいます。(miniの標準アダプタがSingle Linkのため) Displayport―mini Displayportのケーブルは『Mini Displayport (Thunderbolt) ⇔ Displayport 変換ケーブル 1.8m 白 【A0203B】』というものを購入してみました。廉価ケーブルですが表示には問題がありません。コネクタのロックがちょっと押しづらいということはあるものの、これはモニタ側の作りも一因の気がします。ケーブルの品質はトラブルが出てみないとわからないのがやっかいですね。かといって市販品だと「これを買えばまず大丈夫」というブランドもない気がしますし。Dell純正オプションでもあれば無難なのですが。また、mini Displayport←→Displayportのケーブルは通販だと端子のオス・メスもわからない製品が多く買う時に戸惑いました。

表示

U2713HMカラープロファイル

 WQHDで広さはほぼ期待通り。横は1600→2560ドットと明らかに広くなり、縦は1200→1440ドットで微増程度。ドットピッチが細かくなったこともあり縦の実寸は20inchスクエア型と変わりません。2560×1600のWQXGAだと買いづらいお値段になってしまうので縦160ドットの妥協ということになります。
 冷陰極管バックライトの30inch/WQXGAだとモニタと向かい合っているだけで「暑い」という話はよく見るのですが、U2713HMは消費電力も低く暑苦しさとは無縁のようです。本体上部の通気口に手をかざしてもI-Oの20inchより明らかに温度が低いです。表示する解像度・リフレッシュレートによっては極微かなハム音が聞こえることがあります。

 輝度の調節範囲は広く、照明が控えめの部屋+テキスト編集中心の私の用途でも眩しくて目が疲れてしまうこともありません。これは融通が利いて良かったポイント。安物のLEDバックライトでは輝度を落とすと画面がちらついてしまいがちですがそれもありません。比較的目に優しいという評判であった置き換え前のI-O DATA LCD-AD202Gよりもざらざら感が少なく、ギラつきも感じられず良い印象です。
 表面はノングレア(艶消し)仕上げ。発色はフツーのsRGB……より少し広いようです(上図参照。グレー部分がsRGB。) 特性も素直で十分にキレイではありますがiPad3との比較では色域・階調ともに負けていてグラデーションでは微かなトーンジャンプが確認できます。動画も特別にキレイということはなくテレビと比較すると「しょせんパソコン用」ですが見づらいというほどでもありません。27inchワイドで端っこはそれなりに角度がついて見ることになるものの中心から両端まで色味も安定して見えます。輝度を高めにしたときにはグレー部分等にごくごく薄く干渉縞のような斜めの縞が見えることもありますが気になるほどではないです。個体差もありそう。

 デジカメ写真の編集やドキュメントスキャナによる電子化での利用は多画素表示で快適です。画面サイズが大きくなったことに併せ、ドットピッチが0.233mm/108dpiとこれまで使っていた20inchより細かくなったのが効いてます。iPadの250dpi超のRetina画面を体験してしまうと多少物足りなくもありますが。

 画素数が増えたことでMac mini late2009のビデオ性能が追いつかないのではないかと心配したのですが2560×1440画面でも目立って表示が重くなったりはしていません。1080p動画も再生してみましたが問題なく再生されました。

 U2713HM×Mac mini 2009lateでのDisplayport接続には多少の問題があるようです。使用中にケーブルを抜くと再度挿してもスリープから復帰せず、一度パソコン自体の電源を落として起動し直さないと表示が回復しないことがあります。

縦表示

 ピボット回転で縦表示が可能です。物理的に回転させても表示変更は手動です。16:9のワイド画面の縦表示は短辺が狭過ぎる印象で試しておしまいになりそう……。

筐体

 スタンド部分や筐体は高級感まではなく、台座の裏側などは雑な仕上げに見えもするのですが実用性では文句なし。梨地プラのOA機器でよくある表面です。背側は黒/銀のツートンですがパソコン使用中は黒い枠しか見えません。重量が軽い――本体のみで5.6Kgしかないこともあって高さ・向き調節は使いやすくとても気に入りました。
 ベゼル周辺の作りはユルめ。スキマが大きいとか噛み合わせが食い違っているとかはないものの、ベゼル上側を軽く押すとギシギシ鳴り、変形します。電源を切ってモニタが冷えて行く時にも熱収縮によるものでしょう、ピシ、パシと軋み音がすることも。
 電源インジケータのLEDがやや眩しく、スリープ時に緩やかに点滅するので、不使用時にスリープのまま放置すると暗い部屋ではやや目障りです。

OSD

 表示設定の変更メニューは表示位置・デザインとボタンの位置関係に違和感があってあまり使いやすいとはいえないですが設定内容は必要十分。プリセットモードを切り替えできるのは便利、かな。

 Macで社外品のモニタを使っていて残念に思うのは輝度調節などをコンピュータ側から操作できないこと。U2713HMではDDC/CIというVESA規格に対応しているためDVI接続のみですがコンピュータ側から輝度やコントラストを調節することが可能です。“Controlling Your Monitor with OSX:DDC Panel”にMac OSX向けのツールがあります。惜しいことにmini Displayport経由では機能しませんでした。

 4/24追記。Mac側からモニタの輝度調節ができるというツールを知り、試してみました。Shadesです。
 mini Displayport接続であっても確かにモニタの輝度調節ができる、のですが望んでいたものと少し違いました。液晶モニタはバックライトの強弱で輝度調節をするはずなのですが、Shadesは「白をグレーにする」ことで液晶パネル側は一切制御せずに、Macから出力する色を調節します。見た目には輝度調節ができていますが、輝度を抑えても消費電力が減っていないことに。

端子類

 左側面にUSB3.0端子が二つ、背面下部にやはり二つあるのでパソコン本体を少し離れたところに設置してもキーボードやマウス類の接続で困ることもなさそうです。残念なのはこのUSB端子ではiPad3が充電不能であったこと。スピーカはなし。Dell本家通販には外付けのオプションがあるようです。

Macにて

 市販のモニタ全般にそうなのですがDell製品もWindowsPCを主眼に置いているためかMacでは細かなところで面倒です。

  • mini Displayportのケーブル類は選択肢が少ない。
  • Mac用モニタ制御ツールが(あまり充実して)ない。
  • MacとWinではγ値が違いbootcampで切り替えた時に色味が違ってしまう。

 MacとDellのモニタの組み合わせについては「MacからDELLのディスプレイにきれいに画面を出力させる方法」という記事を見つけました。Displayport経由ではモニタ側の補正機能でシャープネスや色域補正がかかってしまうようです。上の記事にあった対策を適用してみましたが、シャープネスが少し低くなり、文字のアンチエイリアスがMacらしくなりました。

まとめ

 見えないところはやや大雑把であるものの表示品質・実用性はしっかりしていてDellの公式通販でも49800円、楽天のセールやNTT-Xでは四万円台半ばで買える価格性能比の良い27inch/WQHDモニタであると思います。広いデスクトップはウィンドウをいくつも開いて作業する人には便利。発色もまともですし目の負担も良好。格安液晶では短期間で暗線が走ったりしがちですがそのあたりは時間が経ってみないとなんともいえない、かな。一応「デジタルハイエンドシリーズ」を銘打っているので27inch/WQHD最廉価モデルといえど大丈夫そうな気はします。
 これといって不満もなく悪くない買い物でした。

|

電子書籍蔵書点数グラフ

 このグラフはITmedia eBookUSERが2012年末まで行っていた各電子書籍書店の蔵書点数定点観測記事を元に、2013年1月以降独自に集計したデータによるものです。Garapagos Store、Sony Reader Store、楽天Kobo、Amazon Kindleを対象に電子書籍のタイトル数を比較するグラフを作成していますいました。

電子書籍書店蔵書点数比較

 各電子書籍書店のwebサイトで表示されるタイトル数を集計・比較したグラフです。

※日本語書籍の総タイトル数を比較しています。
※koboやKindleは個人出版物(pubooやKDPの登録作品)も含みます。
2013.7.12にKindle本の集計方法を変更しました。書籍以外の小物類まで含んだ点数であったのを書籍のみの集計としました。7.12時点で2万点程の差がありました。6月あたりから純書籍点数が表示できるようになったことに対応しました。

Galapagos Store蔵書点数内訳

Sharp Galapagos Storeのタイトル数です。電子書籍店webで表示されるセーフサーチOFFのタイトル数を元にしています。

Sony Reader Store蔵書点数内訳

 Sony Reader Storeのタイトル数です。電子書籍店webで表示されるセーフサーチOFFのタイトル数を元にしています。

Kobo ebook Store蔵書点数内訳

 楽天Kobo eBook Storeのタイトル数です。電子書籍店webで表示される日本語書籍のタイトル数を集計しています。

※Pubooとの連携による自主制作作品もタイトル数に含みます。

Kindle Store蔵書点数内訳

 Amazon Kindle Storeのタイトル数です。

 全世界Kindleタイトル数−洋書タイトル数
 2013年7月に集計方法を変更しました。

※自主制作本(KDP)も含みます。
※2013.7.12にKindle本の集計方法を変更しました。書籍以外の小物類まで含んだ点数であったのを書籍のみの集計としました。7.12時点で2万点程の差がありました。

コミック率

 各電子書籍書店のコミックの占める割合を示します。

コミック率=コミックタイトル数/全タイトル数
で計算しています。

コミックタイトル数比較

データ

 上掲グラフはGoogleドキュメントを利用しています。スプレッドシートデータも閲覧可能にしてあります。単なる公開データの寄せ集めなのでパブリックドメインとして利用いただければと思います。

 つれづれ調査記というサイトではより綿密な電子書店別・ジャンル別統計を取っておられるようです。

|

『ひらり、』vol.10

ひらり、 vol.10 2013 SPRING ISSUE
新書館
2013.3.30

 百合アンソロジー『ひらり、』vol.10、352ページ。今回も読み応えありました。

表紙 紺野キタ

 コミックスと同時発売の紺野キタの表紙。淡いトーンが春っぽく、耳打ちをする制服姿の女子が視線を引きます。背景のフワフワはなんだろう。白い合歓木ネムノキかな? 帯も「その秘密は蜜の味。」だったりして秘めやかなエロスがテーマなのかもと思ったり。

扉絵 くみちょう

 『コミックブレイド』でバスケ漫画を描いてる方で『ひらり、』別冊の『ほうかご!』にも熱いマネージャー話がありました。

大人の階段の下 雨隠ギド

 やばい。これは。可愛い。
 萌えとかそーゆー方向の可愛いじゃなくて、意外な方向に持っていかれてきゅんとくるというか。意外といっても奇想天外なわけでもなく、主人公と一緒の方向を見てたら主人公共々ガツンと食らってしまったというか。『ひらり、』にすごくぴったりな話。

真っ赤なブーゲンビリア 袴田めら

 袴田めらのお話は読む側とは独特のディスコミュニケーション感があって、でも、それがけっして悪い方向には作用してなくて、めららしさみたいなものができていて。

いちごドロップと加瀬さん。 高嶋ひろみ

 加瀬さんは中学生男子脳というか、ダメな人というか、何かこうフェチ属性色々備えていらっしゃる……。山田さんは突拍子もないことあるけどすごくマジメだな〜と思わせられる組み合わせ。今回は修学旅行往路編。次回は沖縄編かな?

ほんとのかのじょ 今村陽子

 ゆりまんがのはずなのにえすえむにゅうもんまんがになっているのはなぜ。しかもボンテージとか鞭とか蝋燭とかわかりやすい形ではなくて「心のSM」が見事に読者に植え付けられていきます。今回は二本立てで前後編構成。後編はもしかしてもしかすると“おあずけ”の刷り込みになっていたりもしませんか。作者の単行本も『乙女×乱舞』『sunny』の二つ読んでみたところ『乙女×乱舞』にも主従キャラが活躍していてとても納得してしまったのでした。『ヒーローの秘密』も読みたいのだけど売ってるの見つからないな〜。

きよはの反響 橋本みつる

 未来からのメッセージが告げる友人の死。抗えない運命の示される未来。独特のタッチと雰囲気で。七月には単行本も出るようです。

カラス、濡れ羽にひかりもの 四ツ原フリコ

 四ツ原フリコ、絵柄が一段と可愛らしくなった気がします。今回は外見カラスっぽい子と性格カラスっぽい子のお話。

聖純少女パラダイム 森島明子

 森島明子の絵柄の“濃い”感はどこから来るのだろう、と改めて不思議に思った今回。主役の二人の関係、ちょっぴりずつだけど進んでるかな?

under one roof/parlor 藤生

 エッセイ漫画は淡々と続けていつか単行本になるといいな。

少女アソート 藤たまき

 雨隠ギドと藤たまきは絵の“感じ”だけでも好きになってしまう。いかにも威丈高ではない恵まれた少女の少女故の傲慢。あーもーチョコレートが食べたいなー。

恋愛禁止憲法 平尾アウリ

 平尾アウリの漫画の世界は何かおかしい。どこかおかしい。ボケ役だけでツッコミがいないためかもうどこまでもおかしな会話に。

Armet ユキムラ

 騎士と姫君モノ。王道のおとぎ話的設定を強力な筆力で読ませてしまう。

悪魔女と引きこもり 佐藤沙緒理

 佐藤沙緒理はvol.6でのバイオレンスな作風ともvol.8のシリアスからも印象を変えて悪魔召喚コメディ。

シャンデリア・ダイヤモンド・スターダスト 吉田丸悠

 吉田丸悠のお話では「絶会」(平成絶対領域委員会)というアイドルグループがよく出てくるなーと思っていたのですが、ネット掲示板で

vol.4きれいなあのこJK組真鈴絶会解散時クラスメイト谷本
vol.5ソプラノ・フォルテシモJK組レイカ絶会結成前(中学時代)同級生五百森
vol.7ロリータコンプレックスJK組里緒絶会結成前(子役時代)子役仲間ちさと
vol.8ミニスカートよさようならJC組麻由・美優絶会活動時メンバー同士
vol.10シャンデリア・ダイヤモンド・スターダストJC組絶会解散後(大学時代)同棲相手みつき

2ch レズ・百合萌え板 ピュア百合】ひらり、vol.1【新書館 >>702

とまとめられていたのを見て膝を打ちました。

これは、にせもの 未幡

 一時の想いとほんとうの恋の違いってなんだろう、というお話。ラスト2ページがすごく良かった。

星をふたりで カザマアヤミ

 金髪碧眼の転校生、クラスに馴染もうとしなかったけれど距離感の合う主人公とは打ち解けて……。『星の王子さま』をキーにしたお話。

しのびのいろは3 ささだあすか

 忍者の守護のついた女子高生・さくらシリーズ第三話。第二話は短編集『きらきらのなつ』のみの掲載のはず。

箱庭コスモス 桑田乃梨子

 こんなにふしぎを実践できているふし研はスゴイのではないだろうか回。

クロース・トゥ・ユー 犬丸

 Witch meets Knightシリーズ。犬丸のこのお話は登場人物多め、人間関係複雑気味なのできっと単行本が出てからが真骨頂。今回はしっとり静かながらゆいっちドキワク編。

 今号は昭和少女漫画のお約束的な「外国ではキスなんて挨拶」キャンペーン号でした。七月末には四ツ原フリコと橋本みつるの単行本予告もありました。ひらり、GLコミック大賞は「もう一歩!」までで入賞なし。

|

『女の子の設計図』紺野キタ

女の子の設計図
紺野キタ
新書館ひらり、コミックス
2013.3.30

 タイトルは『女の子の設計図』ですが小さく添えられた英題は“Drawing of a girl”。ニュアンスには素描も含むのかもしれない。

 紺野キタの初・百合コミックス。『日曜日に生まれた子供』に収録の『百合姉妹』『百合姫』初期の百合作品があったりで紺野キタの百合話自体はけっこう前から触れていたのですが、確かにコミックス一冊丸ごと百合モノというのは初めて。収録作は百合アンソロジー『ひらり、』に掲載の離れて育って姉妹の再会を描く「女の子の設計図1〜3」、少女の中に芽生えた少年の心を描いた「少年」、『ウィングス』掲載の「wicca」、リニューアル後の『百合姫』掲載作でちょっと生々しいアプローチの「おんなのからだ」の計四作品・六話。

 新装版『Cotton』や『日曜日に生まれた子供』に収録された百合モノと今回の『女の子の設計図』に収録されたお話たちは作風が少し違います。『百合姉妹』や初期の『百合姫』に掲載された作品たちは時代を跳躍した感じの昔風かもしれない「少女」のイメージですが今回の『女の子設計図』に登場する少女たちは現代――というより現実の「少女」のイメージに近づいた印象。観念的な少女性を追いかけていたのが少し現実に歩み寄ってきた、と今回の収録作たちをまとめて読んで思いました。

 「wicca」は私には初見でした。観念的な世界での二人劇――あるいは一人劇かもしれませんが――を読んで思い出したのは『知る辺の道』に収録された「匣」という短編。閉ざされた世界がテーマであり、何もかもが幻想の向こう側にあるために作中世界の背後に設定された現実を想像させられます。
 タイトルの「wicca」は辞書を引くと魔術崇拝の意味らしくヨーロッパの非キリスト教的イメージなのかな。ストーリーには触れませんが、wiccaという語が含む「三倍返し」的なイメージとともに取り返しのつかないことへは償いなど存在しないという絶望が含まれているように思え、故に「一人劇かもしれない」という感想となりました。読む人それぞれで思い浮かべるものに差がありそうです。「どう思った?」を読者同士で聞いてみたいお話でした。

 『ひみつの階段』もあれば『Dark Seed』のような学園魔法モノもあり、BLや『1リットルの涙』のようなノンフィクションのコミカライズもありそれぞれ違う世界を見せてくれる紺野キタ。今回も初期の『百合姫』で読んだのとは違う“百合”が読めた気がします。『ひらり、』でも『ウィングス』でもまたこの作者の描く少年・少女を読みたいな。

 表題作「女の子の設計図」は『ひらり、』掲載時に比べると青音あとの髪が黒くなっていることに気づきます。およよ、と見比べるとコマ単位、ページ単位での描き直しがありました。「少年」でも同様に手が入れられて全体に画面を少しだけ黒くする方向にシフトしたかな?という印象に。
 カバー絵は見返しにしかけがあるのかな、と告知絵を見て予想したのですが半分当たりで半分外れでした。カバー下表紙にもおまけがありました。

 紺野キタの新刊情報としては4/24に『つづきはまた明日』四巻も出ると帯に告知がありました。こちらはシリーズ最終巻だとか。
 Kindle版の『女の子の設計図』も出ているようです。

|

『ゴシックスピリット』高原英里

 猟奇ってなんだろう、と思いました。
 この本で紹介されていた大越孝太郎のコミックを読んでみたのです。猟奇的な設定・シーンの目白押しに、うわ、と思ったのも過激なはずの世界にはあっという間に慣れてしまいました。魔に見入られる人のパターン、調教に染まるという妄想の都合の良さ、狂気への様式美的なステップ。読んでいて引き付けられるものがある反面、描かれる猟奇的な世界には奇妙な安定感・保守性感じたのでした。

 『ゴシックスピリット』は同著者の前作『ゴシックハート』と同じゴシックテーマの本ではありますが、内容的な重複はほとんどなく新鮮な内容でした。今回は特に和ゴシック――江戸の演劇や江戸川乱歩が加わり目新しさを感じました。今回のメインテーマかな。

 ところが日本文化の中から見出すゴシック、は読んでいて違和感がありました。確かにエログロにアプローチした乱歩は猟奇も怪奇もありますし、古典怪談も欧米のゴシック文学が元にした民間伝承や怪談と近いものがありますが現代のゴシックと接続するためにはもうワンステップが必要な気がするのです。いえ、読んでいてそんな気がしてきました。
 恐らくそのワンステップは京極夏彦のように古典怪談を現代に蘇らせ、今のゴシックから過去へ向かう川筋を辿って古典と繋ぐという行為。和の猟奇や怪奇とアンチキリスト的な存在であるゴシックはこれから繋いでいかねばゴシックになりえない。様式美、しかも真に根のある伝統ではなく、フィクションの世界に立ち上がった幻想怪奇の様式美に連なることにこそゴシックがあるように思えます。単に共通要素のあるものを挙げてもそれはゴシックたりえないのではないか、と。
 たぶんその接続は「萌え」の世界では以前からあって、巫女服にフリルやレースが組み込まれたり、陰陽師が華麗な活躍を見せていたりと漫画やアニメで形になっている部分にはあったのでしょう。江戸文化を通り越して中世的な日本文化とゴシックの接続はすでに済んでいる、ということになるでしょうか。

 そんなことを思いながらこの本が挙げた大越孝太郎を読んで冒頭の「猟奇ってなんだろう」となりました。

 もうひとつ印象に残ったのが短歌のゴシック。塚本邦雄らの作品が紹介されていたのですが『ウタカイ』以来短歌が面白く思えてきた身には興味深い内容でした。ボリューム的にはちょこっとでしたが。

 論よりも紹介に比重が置かれていることもあって、良いゴシック読書ガイドになっているのは前作同様。ここでは江戸もの絡みの話にボリュームを割きましたが、洋モノの系譜の紹介や明治以降の日本のゴシックもたっぷり紹介されていました。

|

« 2013年3月 | トップページ | 2013年5月 »