« 『ゴシックスピリット』高原英里 | トップページ | 『ひらり、』vol.10 »

『女の子の設計図』紺野キタ

女の子の設計図
紺野キタ
新書館ひらり、コミックス
2013.3.30

 タイトルは『女の子の設計図』ですが小さく添えられた英題は“Drawing of a girl”。ニュアンスには素描も含むのかもしれない。

 紺野キタの初・百合コミックス。『日曜日に生まれた子供』に収録の『百合姉妹』『百合姫』初期の百合作品があったりで紺野キタの百合話自体はけっこう前から触れていたのですが、確かにコミックス一冊丸ごと百合モノというのは初めて。収録作は百合アンソロジー『ひらり、』に掲載の離れて育って姉妹の再会を描く「女の子の設計図1〜3」、少女の中に芽生えた少年の心を描いた「少年」、『ウィングス』掲載の「wicca」、リニューアル後の『百合姫』掲載作でちょっと生々しいアプローチの「おんなのからだ」の計四作品・六話。

 新装版『Cotton』や『日曜日に生まれた子供』に収録された百合モノと今回の『女の子の設計図』に収録されたお話たちは作風が少し違います。『百合姉妹』や初期の『百合姫』に掲載された作品たちは時代を跳躍した感じの昔風かもしれない「少女」のイメージですが今回の『女の子設計図』に登場する少女たちは現代――というより現実の「少女」のイメージに近づいた印象。観念的な少女性を追いかけていたのが少し現実に歩み寄ってきた、と今回の収録作たちをまとめて読んで思いました。

 「wicca」は私には初見でした。観念的な世界での二人劇――あるいは一人劇かもしれませんが――を読んで思い出したのは『知る辺の道』に収録された「匣」という短編。閉ざされた世界がテーマであり、何もかもが幻想の向こう側にあるために作中世界の背後に設定された現実を想像させられます。
 タイトルの「wicca」は辞書を引くと魔術崇拝の意味らしくヨーロッパの非キリスト教的イメージなのかな。ストーリーには触れませんが、wiccaという語が含む「三倍返し」的なイメージとともに取り返しのつかないことへは償いなど存在しないという絶望が含まれているように思え、故に「一人劇かもしれない」という感想となりました。読む人それぞれで思い浮かべるものに差がありそうです。「どう思った?」を読者同士で聞いてみたいお話でした。

 『ひみつの階段』もあれば『Dark Seed』のような学園魔法モノもあり、BLや『1リットルの涙』のようなノンフィクションのコミカライズもありそれぞれ違う世界を見せてくれる紺野キタ。今回も初期の『百合姫』で読んだのとは違う“百合”が読めた気がします。『ひらり、』でも『ウィングス』でもまたこの作者の描く少年・少女を読みたいな。

 表題作「女の子の設計図」は『ひらり、』掲載時に比べると青音あとの髪が黒くなっていることに気づきます。およよ、と見比べるとコマ単位、ページ単位での描き直しがありました。「少年」でも同様に手が入れられて全体に画面を少しだけ黒くする方向にシフトしたかな?という印象に。
 カバー絵は見返しにしかけがあるのかな、と告知絵を見て予想したのですが半分当たりで半分外れでした。カバー下表紙にもおまけがありました。

 紺野キタの新刊情報としては4/24に『つづきはまた明日』四巻も出ると帯に告知がありました。こちらはシリーズ最終巻だとか。
 Kindle版の『女の子の設計図』も出ているようです。

|

« 『ゴシックスピリット』高原英里 | トップページ | 『ひらり、』vol.10 »