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『欠落少女コレクション』× 超文学フリマ

 小説同人誌の感想です。

 私も寄稿させていただいたサークル・ソウブンドウの『欠落少女コレクション』、超文学フリマの当日に刷り上がった実本をいただいてきました。自作以外の掲載作の紹介を兼ねた感想を。

 テーマは「欠落×少女」。

表紙 enu

 可愛らしくもゴシック感濃いイラスト。ソウブンドウ様の紹介ページに画像があります。これはぐっとくるハズ。超文学フリマの会場では大きなパネルになって通りかかる人々を魅了していました。

爪先に、結んだリボンをひっかける 七木香枝

 女学生の生活が描かれる導入部は華やかでありつつも家父長制の支配する封建的な世界の空気が香ります。その空気がもうなんというか素敵なのです。血と運命にがんじがらめにされた娘の閉塞感。そこから抜け出そうという密やかな足掻き。ひたひたと忍び寄る絶望感。ニコニコ超会議2の会場からの帰路、電車の中で夢中でページを繰りました。女学校の明るく華やかな側面の対極にある重い話ですが、読ませます。惹き付けてくれます。

銀鶏 志保龍彦

 支配階級の少女と下層世界で生きる殺人闘技の格闘家少女のお話。
 第二回創元SF短編賞で日下三蔵賞に輝いた作者の「Kudanの瞳」のKudanのイメージを頭に置きつつ読み始めたのですが、まったく異なる積極的に「戦う」少女が立ち現れます。格闘家少女・銀鶏のイメージの強さ、質感。その鮮やかさ、実在感の根源をあとがきで知り大いに納得させられたのでした。熱いです。とても。

みちる サモト

 ある日出会った少女の絵画。親近感を覚えたその絵の中の人物はなぜか妹であるかのように感じられ――。
 絵を描く人。何かに魂を捧げてしまった人。そんな業を背負った人を優しさを感じさせる柔らかな文章で描きます。異なる人々、心理的に異形である人々に対しては人間らしい温かな思いやりも往々に空回りする。優しく柔らかさを感じさせる視点と文体が穏やかに悲しみを伝えてきます。

感応グラン=ギニョル 空木春宵

 戦慄。読んでいてゾクゾク来ました。見世物小屋グラン=ギニョルのお話、ではあるのですが見世物小屋の猥雑なイメージのみを予想すると痛快に裏切られることでしょう。
 大正末〜昭和初期を思わせるエロ・グロを俗悪な魅力たっぷりに、それでいてどこか気高さを感じさせる描写で。「繭の見る夢」「女郎花織る蛛将」でもロマンや叙情の背後にロジカルで科学的な思考を感じさせた作者ですが、今回も“理”を備えていました。匂い立つような情感を兼ね備え。このイメージの豊かさはどこから来るのだろう……。すごい。とにかくすごい。

きみがいた月曜日 神尾アルミ

 明るさの中に漂うシリアス。華やかさ。SF分。繊細さ。
 通学の途中での自分と瓜二つの容貌を持つ少女との邂逅。もたらされる信じ難い説明。友情、思春期ならではの自意識、孤独。とてもとても内省的であるはずのテーマをSF的な設定の元に対話として立ち上げます。“わたし”に向かい合うお話はそのありよう自体が少女そのものに思えました。

★ ★ ★

 私事になりますが。
 読み終えて一番に、いえ、読み進めつつ思ったのは「この本に載せてもらえて良かった」でした。
 この本、読まれた方はスゴイを感じると思うのです。そのスゴイに作品を通じて立ち会えたことの幸せ。拙作はとりあえず棚上げにさせていただきますが「こんな話の書き手がいるんだ」という感動を共有していただけるのではないかと思います

超文学フリマ

超文学フリマ会場俯瞰

 ニコニコ超会議はかなりの人数を動員できたようで、幕張メッセのあの広い会場三棟にぎっしり人が入り、大盛況でした。超文学フリマのエリアはきっとガラガラなのだろう、と失礼な予想をしながら訪れてみるとそれなりに人口密度が高く、他ブースを目当てに来た人の中にも本を眺めて行く人が多かったように見えました。「ミク」のようなオタク文化からの盛り上がりイベントということもあって活字中心の同人誌即売会も決してアウェイではなかった気がします。
 会場は屋根が高く、大出力のスピーカーを使った出し物が多かったこともあり、超文学フリマのスペースでも普段の声量での会話が困難な喧噪に満ちていました。ブースでソウブンドウの方々とおしゃべりしようと思っても、複数人で話をするのが難しく要件のみ果たしてきた感じです。いえ、私がコミュ障ぶりを発揮してうまく話ができなかったのもありますが。

 「超文学フリマ」感想募集にトラバを打ってあります。作品、イベントの感想へのリンク集になっているようです。

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