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『彼女とカメラと彼女の季節 3』月子

彼女とカメラと彼女の季節3
月子
講談社モーニングKC
2013.7.23

 記事カテゴリは「百合」を含めてありますが、そのあたりは異論が出るかもしれません。

 『彼女とカメラと彼女の季節』——略称『カノカメ』は1巻時点から百合オタに注目されつつ、オタ間での紛糾の対象にもなっていた作品です。注目されていたのは主人公・あかりがユキに対して同性愛的感情を自覚するお話として始まっていたから。紛糾の元はあかりとユキに加え、凛太郎という男性キャラが重要な位置を占めていたから、かな。2巻ではあかりと凛太郎の距離が縮まり、この3巻ではさらに親密になっていきます。
 男性キャラが主人公と深く関わってくるために一部の百合オタクからは批判的に扱われますが、私にはこの漫画は巻が進むにつれてますます百合漫画として面白くなっていると思うのです。無性的で写真しか見ていないはずのユキ、同性愛傾向を自覚しユキへの恋心を持ちつつも凛太郎を許容して愛情に近い感情を抱けるようになりつつあるあかり。変わらずあかりにまっすぐ想いを向ける凛太郎。主人公のあかりが自身の感情を手探りで確かめていく話となります。ちゃんと読んでみればこの漫画が明らかにあかりとユキの心を追っていることに気づくでしょう。

 狭義の百合ジャンル作品ではないかもしれませんが、少女の心を追った話であることは確かで、『ひみつの階段』や『ピエタ』、あるいは『丘の家のミッキー』や『クララ白書』、『赤毛のアン』や『若草物語』『小公女』の世界で描かれてきた少女のありように惹かれてきた身には、少女の視点で描かれ少女を見つめるこのお話はとても魅力的です。そういった要素が色濃く現れるのが百合漫画というジャンルであったから好んでこれまで読んできたのであり、求める物語は必ずしも同性愛である必要はなく、作中の男性の存在も不快ではありません。

 あかりは、あるいは巻が進むこの先、凛太郎と結ばれるのかもしれませんし他の男性と恋愛するかもしれません。けれどあかりにとっての一番はユキ。きっとこれは変わらない。凛太郎の存在が次第に重くはなってきてはいても。

 この巻ではあかりと凛太郎をモデルにユキが撮影するという形でお話が展開します。カップルを演じるあかりと凛太郎、撮影者としてのユキ。撮られ撮る経験から写真に対する視点を持ちはじめることであかりはユキの世界をいつの間にか感じ取れるようになっています。技巧や理屈は語らずとも生の感情に駆動される十代のキラメキにカメラを向けてシャッターを切ること。リアルタイムでは無意識の向こう側に流れていってしまう光景が、印画紙に焼き付けられて留まり、向かい合える面白さ。写真漫画の増えた最近にあっても『カノカメ』は写真の面白さの表現ではぶっちぎり。蘊蓄もマニア指向のメカ描写も裏方なのに、随一の濃さを持つ写真漫画になっている奇跡。痺れるとしか言いようがありません。

 写真という趣味に親しんでいる人、憧れている人にお勧めしたいガチの写真漫画です。

 写真には必ずしも真実を写すものではない、という側面もあります。ないものは写せない。けれどあるものだってあるがままに写るわけではない。世界を時間と画角で切り取ることで変容させることができるのです。今後はそのあたりにも触れられると面白いかもしれません。
 この先、どんな漫画になっていくのか楽しみです。

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