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『味わいの認知科学』日下部裕子・和田有史

味わいの認知科学
日下部裕子・和田有史[編]
勁草書房
2011.10.20

 とてもオススメの本であります。

 味ってなんだろう。
 味わうってなんだろう。

 私たちは日々、様々なものを食べ、飲んで「おいしい」とか「まずい」と言っています。ちょっとした科学知識があると、味というのは舌に味蕾があってそこで感じ取った味が脳に伝わって……と思い出しもするのですが具体的に味蕾に何がどう作用しているのか、脳が味を感じるときに何が起きているのかは実は良く知らないのではないかと思います。そして「たぶん科学も味についてはよくわかってないのでは」という予想を立てるのではないでしょうか。一方で、化学的な分析もできちゃうかも、なんて期待も。
 私はそうでした。そんな予想は、読み終わってみればおおよそ当たっていました。でも、知っていることばかり書かれていたわけではまったくなく、味についてどのくらいのことがわかっていて、どれくらいわかっていないことがあるのかの全体が見えて来ました。味覚の機構、嗅覚との関係、脳科学的なアプローチ、心理学実験といったこの本で解説されたことによって「味」のイメージが変わった気がします。臭いや記憶との関係が想像していた以上に深く、心理学の領域がとても広いことが驚きとなりました。

 縦書きの本ですが内容的には学問寄りで、大学二、三年生以上を対象にしている印象です。数式や化学式は出て来ませんが脳科学絡みでは脳の部位名称が並びますし、工学として味覚を扱う話は定量化アプローチに慣れていないととっつきが悪いかもしれません。読み流す本ではなく、味覚の科学の概論がまとめられた教科書のようなタイプの本です。
 少し惜しいと思ったのは筆者が複数に分かれているためか、内容に重複があったり、紹介する話の順序に統制が行き届いていなかったこと。一冊の本にまとめるのであればもう少し章ごとの内容の相互擦り合わせができていて欲しい気がしました。

 求めていた「味わい」と「認知」の知識に関してがっちり説明されていて、満足度の高い一冊でした。

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