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『カクリヨの短い歌』大桑八代

カクリヨの短い歌
大桑八代
小学館ガガガ文庫
2013.5.17

 森田季節の『ウタカイ』がとても気に入っていて、異能バトルものとして比較に出されているのを見かけて読んでみました。Kindle版です。

 異能短歌バトルとの評は正しく、かつて一度幽玄界カクリヨに消えてしまった短歌たちが作中の時代に呪いの力を備えて戻ってきたという舞台設定。呪いの力は歌たちがカクリヨに消えてしまう前から備わっていたのか否かはよくわかりません。とにかく、声に出して読むことで超常的な効果を発揮する歌があり、その歌を巡り、歌を使いバトルが繰り広げられるお話です。
 主人公——というか物語を通じて登場するのは完道ししみち藍佳あいかの二人。作中で用いられる短歌は古今、新古今をはじめ歴史的な歌たちのようです。歌われた情景の比較的ストレートな解釈で呪い=禍歌が発動するのはわかりやすくはありつつも、武器としてはシンプルで短歌らしい特性がより前面に出たものが読みたいような気もしました。短詩は時と場合、解釈如何で意味が変わったりする、というような点で。
 祝園ほふりぞのという名家が収集する和歌の争奪・守護というのがベースにあり、主人公たちがどう守るか、歌を求める側がどう攻めるかというシナリオが描かれていきます。章ごとに異なる語り手によって綴られ、また、伝奇バトルらしく死者も相応に出ます。そしてたぶん祝園や禍歌を中心にした異能バトルでありつつも壮大な痴話げんかなんじゃないかな〜という気配も。藍佳の設定や完道のおっとりキャラ、真晴のタフガールっぷりはライトノベルらしくもあり、短歌という素材を使ってはいても古典のお勉強のような堅苦しさはない楽しい読み物でした。

 短歌を素材にしたライトノベルとして『ウタカイ』と『カクリヨの短い歌』とどちらもお勧めしたいと思ったのでした。現代短歌の形で作者自身が創作した『ウタカイ』の短歌はストーリーとの親和性も高く好みではありましたが、『カクリヨ〜』の本格異能バトルとしての容赦のなさも魅力に思えます。

★ ★ ★

ガガガ文庫:減色

 内容とはまったく関係ないのですがKindle版への苦言を少々。
 表紙をはじめとしたイラストの減色処理がヒドいです。上掲の画像はiPod touch 4thの表紙スクリーンショットから題字周りを切り出したもの。ディザでトーンを変換してしまっています。3.5inchの画面であれば目立ちませんがiPad3の画面では目についてしまいます。ガガガ文庫の電子書籍は今のところ共通の処理が施されているようで検索すると不満の声が。カラーのタブレットで読まれる方には気になると思います。

ガガガ文庫:太字指定外れ

 また、作中では短歌は太字で表示されるのですが、短歌中でフリガナのついている親字の太字指定が外れていたりするのが数カ所。いずれもAmazonのカスタマーサービスに指摘だけはしておきましたが効果はあるのかな。

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