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『メバエ』vol.1

メバエ vol.1
少年画報社
2014.4.30

 どんな感想を書こうか悩みました。

 載っている漫画はそれぞれどれも面白くて、質も高かったです。「もよおす、百合漫画」というコピー通りのアンソロジー(雑誌)でした。好みからはちょっとだけ外れていました。

 電撃系の漫画誌や『チャンピオンREDいちご』のような18禁ゲームのコミカライズの載っている雑誌があります。成年コミックのように性器をもろに描写せず、けれど成年コミックの性描写手法を用いる作品を多く掲載する漫画誌です。あるいは青年誌に載っているエロ要素メインの作品たち。『メバエ』もそんな成年指定なしの男性向けエロを中心とした漫画誌で、女の子同士をテーマにした、というのが第一印象でした。
 でも、ちょっと違うかも。長月みそかの作品は少女漫画に近いテイストだったし。
 というわけで一覧にしてみました。

メバエ vol.1 エロス描写度表
タイトル著者性描写
ペルソナかれん玄鉄絢成年漫画的?
ほわんと長月みそかなし
呪いのあおいちゃんあらた伊里ほぼなし
プラクティス・プラスひげなむち成年漫画的
たべごろちゃんぐんのうさ成年漫画的
化け猫さんと飼い猫ちゃん
おんなのこぼくじょう!
犬丸
キツく抱いてハニー環望少年漫画的
歳の差姉妹に時々あることms
花と毒薬
純愛とろとろりっぷ
小鳩ねねこ濃いめ
亜熱帯HOTELFLOWERCHILD成年漫画的
鈍色に残す朱村咲なし
蒼い炎薫る土鳴子ハナハルなし

 性描写アリの作品は1/3弱と一読しての印象よりも控えめでした。エロス描写のインパクトに圧されて印象が偏ってしまったみたい。性描写ではないけれど演出でエロスを盛り込んだ「純愛とろとろリップ」のような作品もあります。芳文社の『つぼみ』にエロス要素を加えた感じ、かな。少女漫画寄りのものから成年漫画的なものまで幅の広い誌面というのが実際のところ。

 比較のために百合ジャンルの雑誌、アンソロジーをいくつか挙げてみます。
 成年指定を代表するのは『彩百合』シリーズ。これは18禁同人誌と似たテイストで演出方法は男性向け成年漫画の影響が強く、性器も描いてモザイク(墨消し)が入ります。成年指定なしながら性描写の主体の『百合姫Wildrose』や『Girls Love』(どちらも『百合姫』系)といったアンソロジーもあります。こちらは少女漫画・レディコミ誌的な表現中心。

 百合漫画各誌を描写別にチャートにしてみました。

百合漫画誌別性表現チャート

 各誌でオーバーラップしている領域は実際はもっと多いです。

 少し違う角度からも。
 私はポルノも楽しく読むタイプですが成年指定のない実質的なポルノには抵抗を覚えもします。表現の幅広さを求めて性描写や残酷描写を盛り込みたい作品であるならば全年齢対象の一般誌向きかもしれませんが、端からポルノを作るつもりなのであればR12、R15、Xといった描写内容によるレーティングは(行政による強制や業界団体による自己防衛ではなく読者に対する誠実な姿勢として)行って欲しい気がします。論理的な理由はないのですが、実質ポルノであるのに一般誌として売るのは姑息に思えてしまいます。一方で、『彩百合』が成年指定になっていることには好感を覚えます。
 『メバエ』も掲載作はどれも良いと思えたのに、ポルノの手法で描かれたものを含み「もよおす、百合マンガ」というコピーで売られながらポルノ扱いされずに書店に並ぶあたりに釈然としないものを感じました。そういう意味では『百合姫Wildrose』シリーズも性描写と売り方という点で同じ議論の俎上に載るかもしれません。
 う〜ん。鳴子ハナハルの色っぽい表紙で「もよおす、百合マンガ」という帯がついているのでパッケージングと中身の一致度は高いかも。成年指定まではいらない……のかな。

 また、『メバエ』が男性向けポルノと同じ手法・視点で作られている作品を含みつつ百合分類であることにも複雑な感情を覚えます。商品としての女性性を消費している——ネットスラング風に表現すると「俺ヨメ」で、男性読者が自身以外の男性キャラを見たくないという欲求を満たすアンソロに思えてしまうのです。男のための見せ物として作られる女性同性愛もの、というのはあまりに「マリみて」や吉屋信子の世界と隔たりすぎていることに戸惑います。とりあえず私は対象読者層ではなかったみたい。かつての『つぼみ』も性描写こそほとんどなかったもののコンセプトが『メバエ』と近く、正直「誰のための漫画誌なのかよくわからない」という戸惑いはありました。もちろん、掲載漫画の中には大好きな作品もあります。同様に、こうして違和感を並べてしまった『メバエ』からも好みの作品が出てくることでしょう。

★ ★ ★

 『メバエ』を読んで改めて色々考えさせられました。
 百合漫画に対し、男抜きの男性向けポルノを期待したのではなく、レズビアニズムが読みたかったのでもフェミニズム運動の一部として賛美したかったのでもなかったことを再確認することに。私にとっては明治・大正期に成立した「少女」という概念の賛美としての漫画=百合漫画であるのだな、と。
 なんだか狭量な話となりました。

 念を押しておくと『メバエ』のような百合漫画が赦せない、というわけでは決してないです。単に、読みたいものとはっきりと違うアンソロ(雑誌)が出てきたというだけのこと。百合ジャンルの拡大を示すのでしょう。『つぼみ』では今ひとつ不明確であった“男性向け”要素をはっきりと打ち出してきたことによって「マリみて」みたいものというイメージが中心であった百合漫画の世界もターニングポイントを迎えたのだと思います。

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