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『彼女とカメラと彼女の季節(5)』月子

彼女とカメラと彼女の季節
月子
講談社モーニングKC
2014.9.22

 この漫画を読んでいて写真絡みのエピソードが頭を過りました。
 戦場の悲惨な光景を目の前にカメラを構えると構図を整えしまう自分に気づく、という写真家集団マグナムの一人の話。アラーキーが奥さんを亡くした際に亡骸を撮影したという話。東日本大震災で現地に入った米・中の従軍カメラマンが撮影した写真の数々も。

 プロ写真家の凄味を言いたかったわけではないです。ただ、思い出した。写真を撮るということを好み、仕事にし、日常にしてしまった人たちのことを。そうして撮られた写真を。

 上に挙げたのは死にまつわるシーンを撮った話ですが、それは日常感覚的には禁忌に近いことではないかと思います。それを撮ってしまう。撮らずにはいられなくなる。しかも“絵”として見映えするよう技巧を駆使して。ユキもあかりも作中では生きた人を撮りますが、作品として他者を撮るというエゴは倫理に必ず触れてきます。そういう意味で連想した極端な例が死の写真であったのかもしれません。

 ユキはそういう種類の人間なのだな、という感慨。ユキと出会って写真を撮るようになったあかりもまた5巻まで進む間に近い領域に踏み込むようになりました。だから写真は(趣味は)怖いでもなく、だから写真はすごいでもない。ただ、そういうものとして描かれるこの漫画での写真。

 痺れました。『彼女とカメラと彼女の季節』、略称「カノカメ」は写真漫画ではあってもメカ描写も凝らず、うんちくも語られず、かといってファッションとしてのアバンギャルドな小道具でもなく、撮影術を語るでもないですが、「写真」の実感の濃い漫画でした。こういう漫画が成立するんだ、という驚き。『軽井沢シンドローム』『シリーズ1/1000sec』『究極超人あ〜る』『ライカの帰還』も好きですが、心に刺さったのは「カノカメ」でした。
 写真を撮ることが好きな人にはぜひ一読を、と勧めたいです。

 「カノカメ」は写真漫画であると同時に百合漫画でもあります。ユキとあかりの二人の間に凛太郎という男子が登場することもあって百合漫画オタク的にははらはらさせられた4巻までですが、5巻では見事に人間関係が収束しほっとしたのでした。セクシャリティに対する揺れ。同性愛を自認したあかりの想いの先が同性愛者であるとは限らないユキであったこと。振り回され続けた凛太郎があまりにも誠実なイイ奴過ぎること。ああ、もううまくまとまらないけど、セクシャリティを盛り込んだ恋愛漫画としてもすごく良かったのです。

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