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『となりのロボット』西UKO

となりのロボット
西UKO
秋田書店
2014.11.14

 『プリンセスGOLD』2013年7月号から2014年11月号まで掲載されたお話です。「わたしはロボットです。今はだいたい人と同じことができます」という言葉から始まる、ヒロという女子高生型ロボットとチカという人間の女の子とのお話。百合モノが得意な作者で『となりのロボット』もジャンル分けするならば百合漫画。でも、それだけじゃなく、ロボットというテーマをしっかり描く事でSFでもあります。
 少女漫画誌でSF?と思われるかもしれません。確かにデテールの部分では少年・青年誌のようにメカメカしさを主張したりはしないのでメカとしてのロボットものという印象からは遠いのですが、人間のヒロイン・チカのヒロに対する認識・ロボット観が『アトム』が視聴者に求めた共感や『銀色の恋人』の示したウェットな“心”とはほど遠い唯物論的・還元主義的なクールさなのです。チカはヒロがあくまでも機械である事を自覚しながら、ヒロに対し執着や感情を持つ。一方のヒロも淡々とした機械としての自身を保ちながらチカを特別な存在として認識しているようなのです。
 そう説明すると人間味のない冷たい機械のお話、というイメージが湧くかもしれませんが、それは断じてNO!なのです。チカの見せる執着の熱い事。幼少期にヒロと出会い、ヒロと接しながら育ったチカはヒロが単なる機械である事を当然のこととして受け入れ、機械であるヒロに対する執着を“恋”と認識します。その想いは間違いなく熱さに加え、チカ自身を客観視するクールな視点が想いの熱さを際立たせます。熱さとクールさの同居するチカの感性にこそ、SFが濃厚に漂います。『攻殻機動隊』では物質世界を越えた「ゴースト」を仮定し魂が複製不能であるとして一種の心身二元論を導入していますが『となりのロボット』では、ヒトの世界に溶け込む事のできる=チューリングテストをクリアするロボットに霊性を与える事なく恋や愛の対象とするのです。これをSFと言わずしてなんと言いましょう。
 もちろん、先にも書きましたがガチガチのメカメカしいロボットものではなく(大人向け)少女漫画誌に掲載された作品らしくチカの想いを中心に描かれる恋愛ものとしての読み応えも十分。たった一度しか訪れる事のない初恋の初々しさ大切さもきゅんときます。

 かつての24年組が描いたウェットなSF少女漫画とは異なるアプローチですが、紛れもなくその血脈を引きつつ、正統派SFとしてのスタンスを持った人型ロボットSF少女漫画と思います。SF好きにも百合好きにも恋愛もの好きにもお勧めできるはず。

 「むくわれない恋に落ちた2人の最高に純粋でアブないラブ・レッスン!!」という帯の文言は違わないけどちがーう!とは言いたくなったゾ。

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