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『演劇部の魔女と騎士』犬丸

概要

演劇部の魔女と騎士
犬丸
新書館ひらり、コミックス
2015.2.28

 百合アンソロジー『ひらり、』のvol.3〜14、増刊の『ほうかご』vol.1〜2掲載作に描き下し1編を加えたもの。カバー下、各話の幕間に四コマやイラストが配され、扉ページのカラーも新作。掲載初期の分(たとえばvol.3「魔女と騎士」)ではほぼ丸ごと描き直されているようです。雁須磨子の推薦帯が巻かれ、巻末には小川一水の解説が2ページあります。

ストーリー

 中高一貫教育らしき女子校の演劇部が舞台。メインに据えられるのは魔女ウィッチこと唯地ゆいち騎士ナイト役の内藤の二人。この二人に加えて、二学年下から三学年上まで十人以上が関わる群像劇的な連作短編集です。全十四話。

オススメポイント

 登場人物多め+時系列が話順ではないということもあって戸惑うかもしれませんが各話ごとの登場人物を追ううちにそれぞれの関係性も見えてきます。むしろ、それぞれの話で脇役であったりするキャラも含めて作中の演劇部が受け継ぎ織り上げていくものが見えてくると、そう極端に多くないはずの登場人物相互の関係が気になり、複雑さを意識することでしょう。
 キャラたちの間には凛とした距離感が保たれ、百合漫画ではあってもペアの熱々っぷりをメインに見せるタイプではないです。ふと二人きりになった登場人物たちに距離が縮まる瞬間が訪れ、部活のにぎやかな空間から二人きりの張りつめた空気に切り替わる。その瞬間がたまらなく素敵なのです。
 全話を通じてぐっと来たのは火ノ見さんという自由人キャラ。火ノ見さんを軸にした「私たちの知らない2、3の事情」と「ありふれたかくしごと」の最終二話がダメ押しとなって掛け替えのない大切な話となりました。今回、単行本で読んでも改めて「大好きだ」と確認できた次第。
 登場人物の関わりに戸惑った方は作者がTwitterで投下した人物相関図で整理できるかも。(掲載誌が年三回刊だったこともあり連載中はとてもありがたかった)
 小川一水の解説も熱心な百合漫画読者による声援のようで頬が緩んだのでした。
 試し読みページできていました。

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