創作のための電子辞書
小説を書く上で欠かせないのが辞書。字義的に“間違っていない”だけでは不十分で、書き手のイメージを伝える大事な武器が言葉です。デジタルになって引く手間が減り、言葉選びの強い武器になりました。
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パソコン・PDAで使うデジタル辞書
- 広辞苑 第六版
- 国語辞典の代名詞的存在。同クラスの中型国語辞典には大辞林、大辞泉などライバルも複数いるのですが、広辞苑も含めどれも互いに参照し合っているのか語釈も用例も大差がない実情に。国語辞典を複数揃えるなら広辞苑クラスをひとつと『明鏡国語辞典 第二版』(文法や使い分けが詳しい)や『新明解国語辞典 第6版』(個性の強い語釈 ※新明解第六版はEPWINGに変換できる商品がなさそう)のような特徴のある辞書との組み合わせがオススメ。
辞書類をまとめて揃えるなら『ビジネスセット2012』(広辞苑+現代用語の基礎知識+英和・和英中辞典etc)や『正しい日本語のための厳選国語辞典セット2』(広辞苑+漢字源+明鏡+日本語大シソーラス+日本語表現活用+古語)のようなセット商品が割安。 - 大修館日本語大シソーラス
- 膨大な語彙に圧倒される。国語辞典との連携で言葉選びでの鉄壁のコンビ。デジタル版を強く推奨。自然科学・工学系の言葉は少し弱め。広辞苑とのセット商品も(上記)あるようです。
- 学研 漢字源 改訂第五版
- 意外にPCやPDAなどEPWING変換で使いづらいのが漢字辞典。Unicode対応の部分で問題が出てしまいがちです。EBシリーズのように外字領域をUnicode置換する試みもあります。私の使用しているのは第四版なので使い勝手も変わっているかもしれません。
- 研究社新英和(第7版)・和英(第5版)中辞典
- セット辞書の英和・和英で入ってる代表がこれ。単体で買う事はあまりなさそう。英語翻訳で本格的に利用する方は『英辞郎』なり『EPWING版 新英和大辞典&新和英大辞典』なり、選択肢は色々あるようです。
- 現代用語の基礎知識 2009
- これも単体で買うことはあまりないかも。セット商品に入っていたので一応使っていますが、使用頻度は低いです。専門度が低い雑多な内容ということでWikipediaとぶつかってしまいます。物量では端からデジタル環境での利用を前提にしたWikipediaには叶うべくもなく。
- EPWING版Wikipedia
- WikipediaをEPWING変換してローカルで使用することが可能です。WikipediaのEPWING版は Kazuhiro's blog - wikipedia-fpw 様に自前で変換する手順があります。Wikipediaはオタク用語や流行ネタ、マニア的な内容には滅法強い反面、内容の客観性や正確さには問題があるのも事実。小説でWikipediaの内容を使う場合は絶対に裏を取るべきですし、今や誰もがその存在を知っています。そのまま引っ張ってくると読者に笑われてしまうと思いますヨ。
右のスクリーンショットは画像付Wikipedia EPWING版。Bookendsにて配布されています。EB Seriesの検索ツールで検索する場合にはBookends配布版のetcフォルダに同梱されているwikip.plistというファイルをcatalogsと同じフォルダに置いてやればShiftJIS外のUnicode文字もきれいなフォントで表示してくれます。
理化学辞典- 理系の人の専門知識のサポートに。文系の人が科学知識を仕入れる用途には説明不足で向きません。
岩波生物学辞典- 「生物」と書かれていますが「生化学」や「微生物」寄り。専門性は理化学事典より強いです。
- 明鏡国語辞典
- 文章を書く際には広辞苑よりずっと使いやすいです。同音異義語(例:聞く、聴く、利く、効く)の使い分けをわかりやすく解説し、用例も現代語で充実しています。私はATOKの同義語ウィンドウで使う『明鏡国語辞典・ジーニアス英和/和英辞典 /R.4 for ATOK』(の前々バージョン)を使っていますが、2012年に『明鏡国語辞典 第二版』が出て購入しました。(感想記事)
- 研究社日本語表現活用辞典
- 用例が古典からの出典の多い広辞苑に不満で購入しましたが利用頻度はあまり高くないです。明鏡の用例や文法解説の方が実用的な印象。
- 研究社理化学英和辞典 ~ 英和コンピュータ用語辞典付き
- 理系英語文献に当たるときには必須。google翻訳やinfoseek翻訳は専門用語には無力です。和訳は専門用語がそのまま並ぶだけなので理化学事典との併用推奨。
紙の辞書
コンピュータの便利さの前には不便に感じられるようになってきた紙の辞書。でもまだまだデジタル版が売られていない物もあります。
- 類語辞典
- 『角川類語国語辞典』は非常に便利。文章書きで紙の辞書を一冊だけ使うとしたらこれ。索引と語釈が分離されているので慣れないうちは引くのが面倒に感じるかも。語釈や用例部分は中型国語辞典の簡略化丸ぱく。
ライバルとなるべき『三省堂類語新辞典』や『講談社類語大辞典』を期待して購入したものの劣悪な出来だったので今でもシソーラス形式では角川類語。デジタル版が大昔のデータディスクマン用(一応EPWINGらしい)しかないようなのが難点。高価で入手困難のようです。電子辞書専用機やATOK用は存在するようですがデジタルならば日本語大シソーラス+国語辞典の組み合わせの方が強力なので角川類語にこだわる必要もないはず。
角川の類語はとても使いやすいですが一方で『講談社『類語大辞典』の研究―辞書がこんなに杜撰でいいかしら』のような視点でチェックすると欠点だらけなわけでけっして理想の辞書ではありません。でも紙で使ったときに「近くのページに類語がある」感じは類語の意味分類に真剣に取り組んだ辞書ならでは。三省堂類語や講談社類語にはこのシソーラス的特性が不十分……どころか全然ダメな辞書でした。
五十音形式の類語なら講談社学術文庫の『類語の辞典(上)』『類語の辞典(下)』セットをお勧め。昔の類語辞典の復刻版で表記は古臭いですが。 - 古生物学事典
- これは趣味/専門の人しか買わないであろう事典。分類体系や新種の記載が続々と続くだけにこれはネット上で随時更新されるものが必要なのかも。最新情報ではなく基礎や歴史をチェックするときに威力を発揮します。
オンライン事典
- 琉球語音声データベース
- これのPDIC版なりEPWING版なり、モバイルマシンで使える辞書が欲しい。
- 青空文庫
- 著作権切れの小説テキストを公開している青空文庫ですが、文章を書くときに大活躍です。用法がいまひとつ掴みきれていない単語や言い回しは青空文庫のサイト内検索で検索してみると過去の文豪たちの使用例が見つかることも。貴重な用例を参照しない手はありません。
辞書ツール
EPWING、もしくはPDICという規格があります。
パソコン用に売られている辞書ソフトの大半では専用検索ツールが必要ですが、最初からEPWING形式のものと、変換ツールによってEPWING化できるものが汎用ツールで使用可能で、マイナーOSでも使用可能となります。Logovista製品はdessedによってEPWING化できるはずですが、変換できる保証はありません。自己責任でどうぞ。
- Zaurus
- EPWING化した辞書データをztenvで利用するのがお勧めです。Edict Memo
- Windows
- DDWin、もしくはJammingが有名です。EBWinもシンプルで使い勝手が良いです。EBWinでは外字として登録されているものをUnicode化表示する機能が熱いです。
- Mac
- EBWinをリリースしている“EB series support page”からEBMacが登場しました。Mac環境での辞書ツール決定版になったようです。
- iPhone/iPod touch/iPad
- やはり“EB series support page”よりEB Pocket for iOSがリリースされています。こちらもEBシリーズ共通の使用感。
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