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『クビナガリュウ発見!』宇都宮聡

リンクはAmazonへクビナガリュウ発見!―伝説のサラリーマン化石ハンターが伝授する化石採集のコツ
築地書館
宇都宮聡
2007.2.20
1680円

★★☆☆☆

 趣味の化石ハンターとして素晴らしい発見をした人の採集記。
 化石コレクションという趣味自体はメジャーではないものの、それなりに好きな人がいて、コレクションする人の中には自分で化石掘りを楽しむ人もいるようです。この本はそんな化石掘りを楽しむアマチュアの中でもとくにのめり込んだ人の書いた採集の記録でした。
 化石ハンターといえばメアリ・アニング。メアリ・アニングについてはアニメの監督・脚本家として名高い吉川惣司が 『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』という本で紹介していてとてもおもしろいのでお勧めですし、有名なティランノサウルス・スーの発掘記『SUE スー 史上最大のティラノサウルス発掘』なんて本もあります。こういった化石ハンティングの名著たちと比べてしまうとさすがにスケールが小さくなってしまうので読み応えという点では寂しいかな。でも、アマチュアとして新種の古生物に自分の名を残せるというのはそれだけでも偉業。ちょっと地味ではありますが、サラリーマンでもここまで頑張れるんだ、ということに感心できるはず。の数が控えめなのは地味な話と言うことで。

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招き猫@豪徳寺

スマート招き猫 FinePixF10 1/75sec F4 16mm ISO80 ちょこんと棚板に腰掛けた招き猫。
 顔立ちや等身がどことなくジブリのアニメ「猫の恩返し」風。腰掛ける姿も優雅でスマート。組んだ足がどこか色っぽくもあります。

 豪徳寺の桜も五分……七分咲きくらいでしょうか。
 桜を絡めた写真を撮りたかったのですが、招き猫の棚のあたりにある八重桜は花の季節が遅いのでもうしばらく先になりそうです。

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『3Dで見る火星の絶景ポイント』

3Dで見る火星の絶景ポイント3Dで見る火星の絶景ポイントAmazonへのリンク
ニュートンプレス
2415円
2007.2.15

★★★★☆

 面白かった!
 『Newton』のムックは雑誌掲載分の記事や少し前に出たムックの焼き直しだったりすることが多いので毎回付き合ってると「やれやれ」となるのですが、良い感じにまとまっていることが多いので好きなジャンルではついつい買ってしまいます。私の場合は恐竜・化石ネタと太陽系内惑星ネタ。

 今回の火星本はツボでした。
 記事も写真もさほど目新しくはないのですが、アナグリフ立体写真が一度にこれだけまとめて見られる本はそうはないはずです。雑誌『Newton』の記事でも時折アナグリフ立体写真が織り込まれていますが、ほんの数枚の写真を見るのにいちいち立体視用のメガネを用意するのも面倒で……。

 アナグリフというのは赤と青のセロファンを、左右それぞれの目の前にかざして眺める種類の立体写真。写真の方にも加工が必要ですし、色セロファンのメガネも必要ですが、工夫なく立体視できるので誰にでも楽しめます。

 もっとも立体写真と言っても「肉眼で見るのと同じように鮮やかな現実感!」と言うわけではありません。緩やかな起伏を持ったものは今ひとつ立体感が感じにくく、かっちりとしたエッジを持ったもの……平地に散らばる個々の石やきつく刻まれた谷、くっきりと凹んだクレーターなどは面白いように浮かび上がって見えます。立体写真の隅にすり込まれた解説文が空中に浮かんで見えたりするのもおもしろい。

 アナグリフ立体写真はフリーソフトでも作れるみたいなので近いうちに挑戦してみようかと思います。最近、カメラをさぼり気味ですし。

 NASAのWORLD WINDというgoogle earthみたいなソフトでも火星の地形を3Dで表示でき、アナグリフ表示にも対応しているのでたっぷり楽しむこともできます。『3Dで見る~』はローバーからの低めの視点中心で、WORLD WINDは衛星観測データを元にしているためあまり地表すれすれまでは近づけないため大地形が中心です。
 どっちもお勧め。

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『太陽の簒奪者』野尻抱介

リンクはAmazonへ太陽の簒奪者
野尻抱介
ハヤカワJA文庫

★★★★☆

 SFマガジンの連載で部分的に読んでいたのですが、全体を通して読んだのは初めてのはず。アニメの『ロケットガール』と『沈黙のフライバイ』で野尻抱介が気になったので手に取ってみました。
 通して読むと記憶にあったよりも面白かったです。

 ファーストコンタクト物のハードSF。主人公の内面描写などは控えめでファーストコンタクトと科学技術的な側面に描写の大半が割かれるSFらしいSFです。『ロケットガール』より『沈黙のフライバイ』に雰囲気は似ているかな。
 コンタクトの過程で、知性とはなんだろう、という話が取り上げられ、認知科学や人工知能研究、言語研究が座礁したままあまり進歩らしい進歩のないこの十数年ほどの現実の科学がちょっぴり寂しくなりました。初出が1999年末なんです、このお話。

 谷甲州や神林長平といった和製SFがお好きな人にはお勧めです。淡々とした描写ながらどこかふわりとした柔らかな文章で読みやすいのでハードSFの入門にも良いかと思います。

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『宇宙で地球はたった一つの存在か』松井孝典

リンクはAmazonへ宇宙で地球はたった一つの存在か
松井孝典
ウェッジ選書
2005.12.25
1470円

★★★☆☆

 おもしろかった……けど、なんだかすっきりとしなかった本。
 松井孝典、毛利衛、田近英一、長沼毅という四人から、おそらくは「普遍性」というテーマで原稿を集めた本。個々の知識、たとえばスノーボールアースや太陽系の惑星たちの内部構造についての解説は楽しいのですが、それらの最先端の科学知識と普遍性というテーマとの結びつきが今ひとつ説得力を欠いてしまいます。
「ちょっと視点を変えれば普遍も特殊もないんじゃない?」
という風に。
 実際、話の中のあちこちで普遍が成立するのかあやふやだと言わんばかりに「普遍」は相対化されて「特殊」になったり、逆の道筋を辿ったりします。そして最終章では文明の普遍性というものが取り上げられるのですが、具体的な科学の知識を飛び出して文明論になった途端に理路が整然としなくなり、唐突な結論がぽこりと浮かび上がって混乱するはず。
 テーマの検討が十分に熟成していない印象です。

 クオリア、利己的遺伝子、構造主義生物学。具体的な法則性や数式化も検証も不可能なアイデアのようなものが人気があるようですが普遍性というテーマもこれらに通じる検証不能な代物に思えます。とても胡散臭い。
 もちろん、著者達はバリバリの正統派の学者で、この本は論文ではない軟らかい読み物なのですから堅苦しく考える必要はないし、先端科学知識の紹介については文句なしに素晴らしく面白いのですが……。

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『パスタの迷宮』大矢復

パスタの迷宮
大矢復
洋泉社
720円
2002.2.21

★★★★☆

 オリーブオイルは好きですか。唐辛子は好きですか。ニンニクは好きですか。
 この三つが好きな人はまず間違いなくパスタも好きなはず。だって、ここにスパゲティを加えればアリオ・オリオ・エ・ペペロンチーノ――もっともシンプルなパスタ料理になるのだから。

 今回読んだ『パスタの迷宮』はパスタ好きの人ならば楽しめるはず。細かなレシピが載っているわけでもなければグルメガイドでもありませんが、パスタに関する蘊蓄が盛りだくさん。ローマ帝国時代のパスタの原型から近代に至って成立したスパゲティまで楽しく読ませてくれます。

 テレビで仕入れたのだったか、スパゲティ・カラボナーラというメニューは戦後アメリカで発明されたもの、という話を信じ込んでいたのですが、この本を読むとそれはまったく根拠のない話のようです。カルボナーラ絡みの話では他にも日本では手に入りにくいパンチェタの作り方なども解説されていて試してみたくなりましたし、イカスミパスタも思ったより簡単そうでやはり挑戦意欲を刺激されます。うーん。食べ物の本を読むとお腹が減っていけません。

 今回は図書館から借りてきた本の感想でした。
 Amazonの画像を使おうと思ったら絶版みたいです。2002年の本がもう絶版……。

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招き猫@豪徳寺

あちょ~ FinePixF10 1/200 F2.8 8mm ISO200 -0.3EV 梅の花も散り、桜が待ち遠しいこの季節。暖かくなったと思っても夜にはまだ冷え込みます。

 立ち姿の招き猫のポーズというのはどことなくカンフー風。茶色の花柄猫が香港映画のキメポーズでも取っているかに見えます。

ラップde招き FinePixF10 F2.8 8mm ISO200 -0.3EV 満身創痍の大型招き。テープでぐるぐる巻です。

ちびピンク FinePixF10 1/45sec F2.8 8mm ISO200 -0.3EV 日陰では映えるこの色合い。小型のデジカメはこういう小さなものを写したときの方が見映えがします。身の丈三センチくらい……かな。

籠入り FinePixF10 1/640sec F6.4 8mm ISO80 -0.3EV 籠に入った姿が可愛らしく、小首を傾げている風に見えたのでそれを強調してみようと思ったのですが、テレビゲームをしているときに体が傾いているみたいな感じになってしまいました。

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『沈黙のフライバイ』野尻抱介

リンクはAmazonへ沈黙のフライバイ
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
630円
2007.2.28

★★★★☆

 久々に夢中で読んだ本でした。少し前にアニメ化で紹介した同作者の『ロケットガール』よりずっと面白かった。

 同系統のSFとしては谷甲州が軍事寄りの航空宇宙軍シリーズというのを書いていたのですが、こちらは現在絶版とのこと。人気シリーズだったのに……。今は電子出版で二作品が購入可能ですが、残りの電子化が停滞しているようなのが残念です。
 野尻抱介の新作で久々に近未来・国産ハードSFに触れてみるとこれが楽しくて、楽しくて。谷甲州のSFは土木・建築臭が心地良いのですが、こちらは純粋な宇宙開発臭たっぷり。ライトノベルよりもハードSFで本領発揮の人なのだな、と改めて思いました。

 『沈黙のフライバイ』は近未来を舞台にしたハードSF短編集。アニメチックな美少女や奇矯な能力を持つ登場人物はいませんし戦争もありませんが、手に汗を握り、一気に読めてしまうこと請け合い。工学的思考と文芸の心地良いハーモニーが楽しめると思います。オススメ。

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『カーの復讐』二階堂黎人

リンクはAmazonへカーの復讐
二階堂黎人
講談社ミステリーニンド
2005.11.25
2100円

★★★☆☆

 シリーズのスタート時にはかなりの注目を集めた(気がする)講談社ミステリーランド。箱入り、布装丁、紙で手を切らないように、と配慮された製本。総ルビ。子供にも読める本格ミステリのシリーズです。

 二階堂黎人という作家にはぴたりとはまるレーベルではないかと思います。二階堂黎人の、乱歩の頃のちょっと時代がかった雰囲気を思わせる文章とお話は、こうして子供向け(でも大人も読める)シリーズにしてみるとぴたりと合いました。抜群に面白い、というほどではないけれど同作者の二階堂蘭子シリーズよりはよほど水を得た魚のよう。
 お話に登場するルパンもモーリス・ルブランのオリジナルに登場するルパンよりも、偕成社の子供向け翻案モノに出てくるルパンに近いです。むしろ、怪人二十面相風かな。

 大人が子供に読ませたいと思うようなお上品な話ではありませんが、スプラッタではなく適度にグロで、恐い思いのできる、子供が自分で読み進めたくなるような話だと思います。

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