『太陽の簒奪者』野尻抱介
太陽の簒奪者
野尻抱介
ハヤカワJA文庫
★★★★☆
SFマガジンの連載で部分的に読んでいたのですが、全体を通して読んだのは初めてのはず。アニメの『ロケットガール』と『沈黙のフライバイ』で野尻抱介が気になったので手に取ってみました。
通して読むと記憶にあったよりも面白かったです。
ファーストコンタクト物のハードSF。主人公の内面描写などは控えめでファーストコンタクトと科学技術的な側面に描写の大半が割かれるSFらしいSFです。『ロケットガール』より『沈黙のフライバイ』に雰囲気は似ているかな。
コンタクトの過程で、知性とはなんだろう、という話が取り上げられ、認知科学や人工知能研究、言語研究が座礁したままあまり進歩らしい進歩のないこの十数年ほどの現実の科学がちょっぴり寂しくなりました。初出が1999年末なんです、このお話。
谷甲州や神林長平といった和製SFがお好きな人にはお勧めです。淡々とした描写ながらどこかふわりとした柔らかな文章で読みやすいのでハードSFの入門にも良いかと思います。
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