『よみがえる分子化石』秋山雅彦
よみがえる分子化石―有機地質学への招待
秋山雅彦
共立出版
1995.4.1
1407円
★★★★☆
★★★★をつけましたが誰が読んでも面白いという類の本ではないです。
化石成因論(タフォノミー)という学問があります。理科の教科書なんかに「化石ができるまで」なんて図解入りで、生物が死んでから土砂に埋まり、時間が経つと化石になります……みたいな説明がありますが、あの化石のできあがる過程を研究するのが化石成因論です。
この化石成因論というジャンル、調べてみようと思っても実は非常に資料が少ないのです。英語圏の検索エンジンで"taphonomy"を調べてみても数えられるほどの論文と一、二冊の本がヒットするだけ。もちろん日本語の専門書・解説書もありません。古生物学の全集本などには化石成因論の章が必ず設けられていますが、どれも高校の理科の教科書イラストレベル。炭酸カルシウムが鉱物に置換されて~などともっともらしいことは書いてあるのですが「置換て実際にどんな化学反応が起きてるのさ」「どうして元の骨の形がきっちり残るのさ」などという疑問には答えてくれません。
直接疑問を解決してくれる本がないなら周辺から、と言うことで化石の中の有機分子を扱う本を探してみたところ……ありました。今回紹介しているこの本。十年以上前の本ですが、私の知りたかったところの近くをかすめています。化石に対してミクロの視点で接し、時間の流れを扱うという点で化石成因論を支える柱になるはずの知識です。
欲しかった情報に近いものが手に入ったゆえの高評価なのですが、化石全般に対して興味があります、という人でも楽しく読めると思います。数式は登場せず、化学式が少しだけ出てくる程度なので専門でなくても取っつきにくくはないはず。本来の対象読者はこれから化石研究に携わろうとする大学一年生……くらいの感じかな?
ああ、金子隆一あたりが一冊タフォノミーの話でぎっしりの本を書いてくれるといいのにナ。
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