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『火星からのメッセージ』ジム・ベル

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ジム・ベル著 沢田京子訳
ランダムハウス講談社
2007.5.23
4988円

★★★★☆

 でっかいです。重いです。
 一辺が三〇センチほどの正方形、厚みが二センチ弱。五千円もする本なのでレジに持っていくのに少しばかり躊躇しましたが買って良かった。

 この本は火星ローバーのスピリットとオポチュニティのパノラマカメラ開発を担当した技術者の手による本です。写真趣味があり、天文写真に魅せられてNASAの技術者になった人が著者であるだけに選りすぐりの写真が並びます。
 と言ってもこの本は火星ローバーからの観測写真ばかりではなく、解説文にもかなりの紙幅が割かれています。翻訳は微妙にこなれていないし、元々の文章も技術者上がりの著者ですし、「家族・少年の夢・夢の実現」みたいないかにもアメリカの読み物らしい調子も鼻につきはしますが、火星ローバーからのニュースに胸を躍らせてNASAのサイトの画像を眺めたりしていた人ならば楽しめるはず。

 「世界初。火星のパノラマ写真集」なんて売り文句がつけられています。が、比較的単調な、広がりのある景色をパノラマしているカットが多いので視覚的にはパノラマ~感はあまり強くありません。私たちにとって馴染みのある人工物――建物や車やコイン――との対比がないのでスケール感がわからなくなってしまうためでしょうか。
 そう言えば以前読んだ砂漠写真の写真集で著者が「広さを表現しようと砂漠に超広角レンズを持っていっても広く感じられる写真が撮れない」旨を書いていました。写真から実感を得るのって難しいことなのかもしれません。

 ローバーの撮影データは基本的に開示されているのでこの本で紹介されている画像(のたぶんほとんど)はNASAのサイトにアクセスすれば閲覧可能です。高い本を買うのはちょっと……と言う方はNASA JPL Mars Exploration Rover Missionへどうぞ。赤青メガネを使うステレオカメラ画像なんかもあって楽しいですよ。

 ふと思ったのですが、ローバーの撮影したデータを元に国立科学博物館のシアター360で火星の風景体験番組でも作ると楽しいかも。荒涼とした荒れ地ばかりだから見学者が退屈しちゃうかな?

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