東京大学総合研究博物館にて10/20~12/26の間『異星の踏査』という特別展が開かれています。行ってきました。小規模な展示でしたが楽しめました。

東大というのは賑やかなところで人の流れが絶えません。それでも博物館のあたりはあまり人影もなく静かです。
最近ではいい歳をしたごくごく普通の大人の中にもアポロの月探査を「捏造」と信じる人がいるとか。変な時代です。
こちらは月の石。背景にプロジェクターでアポロの月面探査の様子が映し出されています。光り輝いている四角錐の中に月の石が封じ込まれています。かつての万博の時にはこれを見るために人が大挙して押し寄せたのでしょうが、今回の展示は規模が小さな事もあり閑散としていました。
こちらは南極で発見された火星産と思われる隕石。日本の南極観測隊が発見した物で、同様の隕石の中では最大の物だそうです。じーっと見つめてみても玄武岩の欠片にしか見えません。石のできた時期、石に含まれている気泡の成分から“火星産”と推測されたようですが、うーむ。溶岩に含まれている気泡って岩石自体のガス成分の抜け損ないじゃないんでしょうか。
隕石はくっきりと黒い部分のみです。セピア味がかった火星風景の写真の上に隕石が置かれています。

見た目に地味な展示が多かった中で唯一インタラクティブな展示。火星のパノラマ写真をパノラミックなスクリーンに投影しています。画面中央やや上あたりにスポットが当たっている場所にはトラックボールが置かれていて、ボールを操作すると火星の風景が左右にぐりぐりとスクロールします。これは楽しい。360度パノラマ写真を元にパノラマスクリーンを生かしたナイスな展示。トラックボール本体横のボタンを押すと映像が切り替わります。オポチュニティとスピリットの撮影した画像でした。

これも南極観測隊の採集した隕石。“普通コンドライト”という種類の隕石だそうで小惑星イトカワも同じ素材でできていると考えられているとか。地球に向かって帰還中の満身創痍のはやぶさ、無事に戻ってこれるといいな。
背景に浮かんでいるのが小惑星イトカワ。
スターダスト計画をご存じですか? ガンダムとかパタリロの話ではなく、アメリカの彗星サンプルリターン計画です。見事に持ち帰った彗星の塵がこれ(ショウケースの中の白線の交点あたり)で……小さすぎて何が何だかわかりません。この展示のすぐ側には顕微鏡の映像も並べられていましたが、むむむ、サンプルから焦点がずれてませんか。モニタに何が映ってたのか見てもよくわかりませんでした。
そうそう。スターダスト計画のサンプル展示は世界初だそうです。

顕微鏡モニタの方の彗星の塵サンプル。サムネイルでは見えないと思いますが、拡大画像の方ではかろうじて細い支柱が見えるかと思います。
"塵はおよそ10~20μmの大きさで,直径0.5mmのガラス管の上に取り付けた直径3μmのグラスファイバーにのり付けされている." (ショウケースの解説より)
だそうで写真で見える猫のヒゲのようなのがグラスファイバーと思われます。写真右端の銀色が顕微鏡のレンズ。
展示は地味ですがここに揃えられたものは紛れもなく地球外物質の数々。毎年数百トンの宇宙塵が降り注ぐこの地球では気づかないだけで身の回りには地球外物質が溢れているはずですが、その由来が明確に宇宙にあることが確かなものばかり。何万年、何億年も宇宙の環境に曝されてきた石の由来を思い浮かべるとドキドキできると思います。残り会期も少ないので気の向かれた方はお早めに。
会場は博物館としてはかなり控えめで国立博物館みたいなものをイメージしていくと拍子抜けしてしまうかもしれません。また撮影は『異星の踏査』はOKですがそれ以外の化石やホルマリン標本などの常設展は禁止なのでご注意を。休館日は月曜日です。
会場で販売されていた図録(かなり早い時期に売り切れたらしい)が出版社から出版されました。感想はこちら⏎。