『あかねいろ』の素材
先日公開した自作小説『あかねいろ』を書いてみようと思ったきっかけは梨木香歩の右の二冊を読んだことでした。染め織りを楽しむ三人の女性。そこに絡む「りかさん」という市松人形。児童文学を思わせる柔らかな文体にしっとりとした手仕事の話。「いいなあ」と憧れを抱きました。真似してみたい、と思ったのです。
単なる真似では書いていてもあまり楽しくありません。ここはひとつ自分で調べ物をして染め織りの蘊蓄を詰め込んでみようと思いつきました。テーマは百合で。
書き始めてみてわかったのですが、私はどうやら百合(少女同士の恋愛物)そのものが書きたかったわけではないのかもしれません。紺野キタのマンガや恩田陸
の小説に描かれるような少女性の表現が好きなようです。気まぐれで残酷で無垢で美しい幻想の中の少女。百合というジャンルにはその少女性という成分がたくさん含まれているように思います。セクシャリティを書きたいのではなく少女というファンタジーが書きたかったのだと気づきました。
『あかねいろ』を読んでくださった方の中には「あれ? このシーン、紺野キタのマンガにも似たシーンがあった」「染め織りネタだし、人形とかちょろっと出てくるし梨木香歩のマネ?」と思われた方もいるかもしれません。単なる真似ではなくオマージュに昇華すべく頑張ったつもりですが、さてはて……。
染め織りの蘊蓄探しではネットも大活躍でした。例えば北海道における綿花栽培。現実では露地栽培でまとまった収穫に成功した例はないようです。ただし中国北部では北海道よりも緯度が高く寒冷な気候で綿花栽培を行っている地方があるので施肥や給水を厳密に管理すれば不可能ではなくなるかもしれない、との記述を見つけ『あかねいろ』作中では高校生がそれに成功しちゃってます。
藍の生葉染めに関しても図書館に情報がなく、ネットから情報を得ました。
調べ物には便利な時代です。
ブログ用にと思っていたお話が一段落したのでこれからしばらくは投稿用のSFに専念です。
関連記事
- ちちぶ銘仙館見学記 ―― 女学生の友であった絹織物・銘仙の生産風景を再現した記念館
- 東京農工大科学博物館 ―― 旧称・繊維博物館見学記
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント