『ウェブ社会をどう生きるか』西垣通
ウェブ社会をどう生きるか
西垣通
岩波新書
2007.5.22
735円
★★★★☆
面白かったです。
一気に読めた。
西垣通の『IT革命』は読んだ人もけっこういるのではないかと思います。今回の『ウェブ社会をどう生きるか』は『IT革命』のweb2.0版といった感じの内容でした。
SFファンであればこの著者の『ペシミスティック・サイボーグ』が高い評価を受けていたことも記憶にあるかもしれません。
web2.0、集合知、ロングテール・ビジネス、広義の情報から狭義の情報までの定義、「バカの壁」、超多極分散社会。
web2.0を解説しビジネスチャンスを謳う本はいくらでもありますが、日本を代表するであろう情報学の学者の視点から語られる現代の情報化社会はとても刺激的で興味深いです。情報の定義から入り、情報学の歴史を絡めてweb2.0を語る――単に目新しい潮流を煽っているだけのハウツー本にはできない懐の深さがあります。ざくざくと紹介される関連書籍も宝の山。
少し残念なのは客観的世界――素朴な実在論的世界と各々の主観が織りなす多元的世界とを結ぶ論理が端折られていたりするところ。たぶんこの著者の『基礎情報学』を読めということなんだろうなあ……。一番おいしそうな部分でオアヅケを食らった気分。所々同じように説明が足りない感じで、うまく理解できないまま読み進めた部分がいくつかありました。ちょっと悔しい。
情報とは何か、に興味のある人向け。
読むとパソコンが得意になるとかそんな話ではなくて、哲学っぽい知識と視点を楽しみたい人向きかな。
あるいは士郎正宗の『攻殻機動隊』の蘊蓄や欄外の参考図書が楽しめた人向け。
☆ ☆ ☆
話を自分の田んぼに引っ張りますが。
この本、もっと早くに読んでいるべきでした。早めに投稿した第九回の小松左京賞の原稿、この本(と参考図書)をあらかじめ読んでいればもっとすっきり整理できたかも。読みながら頭の中でざざざと自分の書いた物が整理されていく音が。でも書き始める前に読んでいないと到底反映させられなかっただろうしなぁ……。
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