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『惑星地質学』

惑星地質学
宮下英昭/橘省吾/平田成/杉田精司
東京大学出版会
2008.1.23
3360円

★★★★☆

 昨年11月に『異星の踏査』展を見てきました。(見学記⏎) その『異星の踏査』展用の図録として作られたのがこの本らしいのですが、私が見学に行ったときにはすでに売り切れていて悔しい思いをしました。
 それが出版社から改めて再刊されたのが今年1月。気づいたのが3月。少し遅くなりましたが感想を。

 日本初の惑星地質学の教科書として使えるように作られた、との言葉通り理系教育を受けていないとちょっと取っつきにくい感じです。対数グラフなどは慣れていないとナニコレ?ですし、文章も必ずしも一般向け科学解説書のように読みやすくはありません、が数式の登場しない本なので、天文や惑星物理に興味があり丹念に読みさえすれば中高生でもおおよその内容は消化できるはず。
 しかもカラーの図版が適切に、豊富に使われた綺麗な本です。

 ただし、この本の中で書かれている具体的な方法論・研究手法をきっちり正確に理解するには理・工学部の二年生程度の理系基礎教育が必要です。「教科書として書かれた」所以でしょう。

 太陽系内惑星探査に興味のある人、買い逃してはいけません。3200円+税とちょっと値は張りますが、充実してます。この内容なら格安です。読み物としては歯ごたえがある感じだけれど、現時点で太陽系内天体に関する本を買うならこの本以外にない、と言ってもいいくらい。

 『わなびざうるす』的には、太陽系を舞台にしたハードSFに携わっている人必読、と断言したいです。
 いや、むしろ小説を書いているような人には読ませたくないかも。資料として強力過ぎます。

 地方の小書店ではまず扱いのない本だと思いますし、機会を逃したら手に入らなくなりそうな気がします。(東大の先生達の本を細々と学生・研究者向けに作る出版社だと思うので)

 5/25にはアメリカの火星探査機フェニックスが無事に火星の高緯度地帯に着陸しました。土壌の調査も行われるようで、どんな成果が出るのか楽しみです。

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招き猫@豪徳寺

オーパーツ? GR DIGITAL F4 1/6sec ISO154 「ホビットの冒険」が始まりそうな指輪……にはぜんぜん見えませんが、ふちに刻まれた模様からなんとなく連想してしまいました。開ける価値のないクローゼットの扉はないし、はめてみる価値のない魔法の指輪もないものです。
 指輪ではなくハトメか何かのようです。
 なぜか棚にぽつりと。

大正時代型招き猫手作り再現 GR DIGITAL F2.4 1/23sec ISO154 おや。
 みぃつけた。

 こちらの「招福」の文字のある白黒ブチ招き猫は先日のコメント欄で予告いただいた手作り招き猫と思われます。大正時代の豪徳寺の招き猫写真から復刻・再現なされたとか。
 当時の招き猫について制作者のitowtakumi様が情報を欲しておられるそうです。お心当たりの方がおいでであれば、ぜひ。

※初出時お名前の綴りが間違っておりました。失礼いたしました。

もう一匹かくれんぼ GR DIGITAL F2.4 1/32sec ISO114 -0.3EV 一通り写真にも撮ったし、と撤収しようとしたところでふと上を見上げると「見つかっちゃった」とこんなところにかくれんぼ。背伸びをしつつノーファインダーで、下手な鉄砲式でたくさん撮ってみた中の一枚。

 写真には少しも反映されていませんが、この日は五月晴れという表現に相応しい爽やかな空でした。

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羊山公園・やまとーあーとみゅーじあむ

羊山公園より秩父市街一望

 昨日、ちちぶ銘仙館を見学した後はすぐ近くの牧水の滝と羊山公園を散策してお弁当を食べて来ました。牧水の滝はなんとなく無理矢理仕立てた名所の気がしないでもありませんが、丘の上から秩父市街を一望できる羊山公園は気持ちの良い場所でした。

 羊山公園の一角には「武甲山資料館」と「やまとーあーとみゅーじあむ」があり、後者では棟方志功の作品が展示されています。記念に、と見てきました。大きくはありませんが立派な美術館でした。う~む。なぜ秩父に棟方志功の美術館が。

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ちちぶ銘仙館見学記

 ちちぶ銘仙館へ行ってきました。

ちちぶ銘仙館入口 F4 1/310sec ISO64 -0.3EV

 西武池袋線の終点・西武秩父駅で下車し、徒歩五分。埼玉県繊維工業試験場と看板の残る建物は歴史を感じさせます。佇まいだけでもすでにアタリの予感ですが、門前で機音が漏れ聞こえて来た時点で「来て良かった」と予感は確信に変わりました。

手織機ずらり GR DIGITAL F5 1/32 ISO88 -0.3EV

 入場料200円也を払って機音の聞こえてくる方向へ足進めてみるとこんな光景が。織機は白木も鮮やかな新しめのものが多かったですが、並んでいる織機の大半が実稼働中であることを示すように綜絖に糸が通されています。こういう光景が見たかったのです。
 ああ、来て良かった。

 私が見学に訪れた時にはこの写真の一番奥で女性が一人、機に向かっておられました。近くには手を藍に染めた白髪の男性が。床を見るとふつふつと泡を浮かばせている藍瓶がありました。
 先生、と呼ばれてらした男性は藍に染まった指先のまま色々説明してくださいました。銘仙というのは絹ではあっても比較的求めやすい庶民の絹織物であったこと。平織りの染め物なので少し古くなっても表裏両面が使えたので二倍長生きする着物であったこと。手織りの技術は一度失われれば途切れてしまうこと。そして現在、手織りの技術を伝える場が次々と失われていってるということ。etc、etc。

織りかけ銘仙 GR DIGITAL F2.4 1/32sec ISO96 -0.3EV 動いている織機の写真も撮ったのですが、作業中に広角レンズで間近に寄るわけにもいかないので説明写真は作業者がお留守の織機から。

 写真は織りかけの織機を真上に近い斜め上から見下ろしたところ。左上奥に人が座ります。

 写真右下側がまだ折られていない経糸(たていと)の状態です。
 鉤で吊られた木枠二つが綜絖(そうこう)で二枚綜絖は平織りを示しているはず。折り目が密で丈夫なので、普段に着られる絹としての銘仙は平織りなのでしょう。経糸を透かした下には綜絖を上下させるためのペダルが見えます。
 二枚綜絖の左上に横切るのは筬(おさ)。そしてその向こうには織られた布が姿を現します。
 布の上に置かれているのは杼(ひ=シャトル)。
 杼のちょっと上には呼び鈴の握り手みたいなものが鉤の影に隠れていますが、これは杼を左右に(半自動で)飛ばすための工夫だそうです。明治期に登場した発明だとか。この動作は言葉での説明が難しいです。

 印象に残ったのは布に与えるテンション。織り上がった布を巻き付ける横木を回し布に張りを与えるのですが、かなりギリギリギリという感じで締め上げます。実際に織っているところを見なければわからないことってたくさんあるんだと、見に来て良かったなと、心から思ったのでした。

 アジアの生活水準が上がり、アジアからも一次・二次産業としての繊維産業が駆逐される時には、次はどこの地域が「世界の工場」になるのだろう。今、労賃の安いアジアの国々もその頃には失われた染織文化を振り返り、惜しむのだろうか。
 力織機への転換が始まる直前に隆盛した銘仙の織りを見て、そんなことを思いました。

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『春になったら苺を摘みに』梨木香歩

リンクはAmazonへ春になったら苺を摘みに
梨木香歩
新潮文庫
2006.2
420円

★★★☆☆

 このところ梨木香歩の本の感想が続きます。

 梨木香歩の最初のエッセイ集。穏やかな空気と水の気配に満たされた中に少しだけ政治や戦乱への棘を含んだ『水辺にて』とは違い、異文化というものが前面に押し出された英国滞在記中心のエッセイ。タイトルほど幻想的だったり『裏庭』を連想させることはないようです。
 でも登場する人々はどこか梨木香歩の物語世界でも馴染みのある香りがするのも事実。甘いだけのファンタジーではない、現実世界の悲しさを潜ませている作風のその少し陰鬱な部分が強く出たエッセイに思えました。

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招き猫@豪徳寺 商店街の電柱イラスト

20080520_01 3/23の記事で紹介した街灯に書き込まれたイラスト、同じシリーズをご紹介。

 花の世話をする猫。隣には美容院の花いっぱいのショウケース。

20080520_02 こちらは別の美容院と居酒屋さんの前の街灯。
 このアングルからだとうんと胴長の猫で胴体が街灯を一周しているかのように見えますが……正解は実物を見てのお楽しみ。

20080520_03 自転車屋さんの向かい側にある街灯。
 背後の壁は居酒屋さん。

 イラスト付電柱は他にも二ヶ所ほどあるようです。

 この街灯イラストの猫、模様がどことなくゴマフアザラシっぽいというか、ヒョウ柄に見えなくもないです。

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招き猫@豪徳寺

ウィンク GR DIGITAL F3.2 1/104sec ISO64 -0.3EV

 ぱっと見た感じではどうということのない小さな招き猫たちでしたがクローズアップしてみると一癖ありました。強烈なウィンク。重厚な金色もいい感じ。

みにくいアヒルの子? GR DIGITAL F2.4 1/90sec ISO64 -0.3EV

 真っ白な招き猫たちの中に一匹だけ黄ばんだ子。

水鏡 GR DIGITAL F2.4 1/68sec ISO64 雨上がりの招き猫奉納所には水鏡ができていました。

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『ネコを撮る』岩合光昭

リンクはAmazonへネコを撮るリンクはAmazonへ
岩合光昭
朝日新書
2007.3.30
756円

★★★★☆

 動物写真家岩合光昭の猫撮影技術本。
 技術、と言っても具体的な撮影技法やノウハウではなく、どうすれば猫に写真を撮らせてもらえるか、を中心にまとめた本。そして実は冒頭の数ページでこの答えは出てしまっていたりします。
 その答えを色々な体験談を通して繰り返し、少しずつ切り口を変えながら説明しています。要は、猫に好かれる人になること、なのですが、たぶん難しく感じられる人にはいつまでも難しい問題なのでしょう。

 載せられている写真のどれも猫の可愛さ、面白さが溢れているので、ただ眺めるだけでも楽しい本。巻頭のカラーページだけでも魅力的ですが、モノクロページにもモノクロ向きの見やすい写真が配されています。

 結論。猫は可愛い。

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GR DIGITAL + RAW THERAPEE

 デジカメでやってみたいことがありました。
 RAW現像です。
 CCDからのそのままの情報を記録して云々~というデータを扱えるとかで上級マニア向けみたいな扱いの機能です。GR DIGITALにもこのRAW記録モードというのがあります。早速試してみました。

 ――データ保存遅っ。

 GR DIGITALのRAW形式はadobeのDNGフォーマットとやらで汎用です。が、GRD付属のPhotshopElementは試用期限付きの体験版。ここはフリーソフトで何か良い物がないかと探してみたところ"RAW THERAPEE"なるソフトの評判が良さそうに思えました。「ロウ・セラピー」と読むのかな。綴りが微妙。
 試してみた結果はというと。

 ――普通のレタッチソフトじゃん。

 RAW形式が扱えるのと色弄りの幅が多少増える程度で、基本的に小サイズで出力する私にはこれと言った利点がないようです。ホワイトバランスや軟調/硬調の設定をあらかじめ気にしなくて済むのがメリットなのかな。

 う~ん。色味の調整はなんだか難しいですね。色に関しては普通のレタッチソフト(GIMPやDibasなどのフリーソフト)でも思ったようにコントロールできず、結局コントラストと明るさくらいしか弄らないようにしていたのですが、RAW THERAPEEでもそのあたりは同じでした。きっちり練習に取り組まないとコツが掴めなさそう。

☆ ☆ ☆

2008.5.28追記:RAW現像の練習をしてみているのですが、GR DIGITALのJPEG出力がかなり優秀であることに気づきました。特にISO150近辺。RAWで出力したものを見るとすでにこのあたりのISO感度でノイズだらけです。ノイズリダクションもただかければ良いというものではないようで、シャープネスの調整や色の弄り方でデテールの残り方が変わります。標準のJPEG出力を超えるにはかなりの根気が要るかも。

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『水辺にて』梨木香歩

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梨木香歩
筑摩書房
2006.11.20
1470円

★★★★☆

 梨木香歩の本です。
 物語かと思って手に取り、読み始めてから随筆だと気づきました。梨木香歩はカヌーを趣味の一つとしているようで、様々な水にまつわる体験談の中にしばしばカヌーの話題が登場します。というよりはカヌーエッセイなのかな。

 意外。

 私も少しだけカヌーで遊んだことがあります。北海道の釧路川、四国の四万十川、栃木の那珂川。あとは湖を何カ所か。とても楽しかったことを思い出しました。公園の池のボートとは段違いに軽やかに水面を滑る――まさしく滑る――素敵なファルトボート。華奢な骨組みと布一枚で水面に浮かぶ感覚は体験した人にしかわからない独特の魅力があります。
釧路川上流域にて 右の画像は釧路川に漕ぎに行ったときもの。“写ルンです”で撮ったのでちょっとぼけぼけですが。梨木香歩のエッセイを読んでいてこの時の水の香りを思い出しました。そうか、『家守綺譚』を読んだときに心地良いと感じた水の香りはカヌー体験から来たものだったんだ……。

 たかが随筆。されど随筆。
 読んで愕然としました。文章がとても心地良いのです。小説ではない、日常の身の回りの体験をこんな風に書けるなんて、と。日頃から思う物、感じる物、志す物――感性がこれだけ豊かだからこそ『裏庭』が出てきたのだなと頷けてしまいました。

 神様はずるい。

 自分に与えられなかった、育てられなかった才能を羨んでみても仕方がないのですが、そう思わずにいられないエッセイでした。

 オススメです。

 釧路川の写真では釣り竿が写っていますが、この時釣れたのは小さなウグイだけ。晩のおかずに大きな鱒をあてにしていたため、野菜ばかりの中に一口サイズのウグイがぽつんと浮かんだ少し寂しいシチューと相成りました。

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GR DIGITAL雑感

 GR DIGITALに何日か触ってみて思ったことなど。

  • レリーズボタンの感触が店頭にあるGRD/GRD2と違う。
  • 液晶は精細で色の違いもわかりやすく綺麗。でも明るいところや斜めからは見づらい。
  • 些細な差で撮影結果が大きく変わる。
  • 低速シャッターでも手ブレしづらい。
  • スポットAFが背景に合いがち。マルチAFは範囲が広く近すぎる場所に合いがち。
  • 壊れそうな作動音。
  • 28mm相当で撮るのは気合いがいる。
  • マクロが得意。
  • ストロボの発光量補正が便利。

 もう二年半前のモデルなのでAFや液晶では現行機種には太刀打ちできない感じです。でも、それは些細なこと。撮影結果に関してはかなり満足できました。

 レリーズボタンの感触は他のGRDより軽いようで、これは前オーナーがRICOHのサービスでレリーズの重さ調整を受けていたのかもしれません。

苔 GRD F2.4 1/290sec -0.3EV ISO64 右はマクロの撮影例です。
 苔です。画像クリックで683x1024の拡大画像へ。
 コンパクトデジタルカメラは概ねマクロが得意でFinePixF10でもびっくりしたのですが、GRDはさらに寄れるようです。ボケ方も綺麗なので楽しめそう。一眼レフだとスペック的には近くまで寄れてもレンズとボディの大きさでなかなか実際には近づけないのですが、コンパクト機はスレスレから撮れるのが強力です。レンズ前1.5cmが実用になります。
 今度は粘菌の子実体でも探して撮影してみようっと。

 画質に関しては……単純に解像性能や高感度性能では前のデジカメ・F10に負けてます。モニタでドット等倍にして見るとそんな感じ。
 でもプリントしてみたり、モニタ上でも画面いっぱいに収まるように表示するとしっとりと質感のある絵になり、逆光にも強く、樽型歪みもなく、ボケも綺麗と好印象。

 ZaurusとのSDメモリ共用は意外に面倒だったのでSDカードを買ってきました。2GBで990円。安くなりました。512MBとか256MBはもう使い捨てや旅先での進呈用にざくざく持ってても良いのかも。
 ZaurusSL-C1000では1GB超のSDカードを認識しないことを忘れていて少し慌てましたがダウンロードだけはしておいた大容量SDドライバを思い出して無事認識。GRDでも問題ありませんでした。

 前のFinePixはxDピクチャーカードだったのですがGRDはSDカードとなりZaurusで撮影データを見る際に変換カードがいらなくなりました。ZaurusはaBookReaderZColorAdjustの組合せでそこそこちゃんとした色あいの撮影結果が見られる優れものだったりします。

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東京農工大科学博物館

20080516_01  東京農工大工科学博物館(旧称:繊維博物館)に行ってきました。デジカメで展示品の撮影もしたのですが、個人用途ということで撮影許可をもらったのでブログでの写真紹介は農工大の中央通りだけ。

 東小金井の駅からなんとなく人の流れに乗って十分ほど歩くと農工大です。東小金井の駅舎は建て替えの真っ最中でした。校内は広いですが、学校の規模からするとこぢんまりとしている方かな。敷地内には案内標識はあっても学内の他の建物と見分けがつかず、初めて訪れる人は「博物館、どこ?」とうろうろしてしまうでしょう。

 手織機を見たいと思っての農工大行です。ここの博物館では染めや織りを行う「友の会」の活動を行っているようで、現役の手織機を見られるのではないかと期待したのです。

 ですが、どうも「博物館」という名称と実態がズレている印象。
 展示品の状態があまり良くありません。歴史のありそうな立派な(明らかに戦前に作られた素晴らしくしっかりとして洒落た造りの)ショウケースや模型は半ば放置状態でくすんでしまっています。現在では恐らく作ることのできない貴重な展示だと思うのですが。
 たぶん、博物館として運営されるだけの予算がついていないのでしょう。日本では歴史的な被服・繊維関連の展示は振るわないようですし。
 沖縄産の15cmくらいありそうな細長い繭や、明治の当時のまま綛(かせ)や玉の状態になった絹糸はとても興味深く、印象に残りました。埃を被っているのはもったいないな、と思います。が、きっちり整備しても人はあまりこないかもしれませんね……。
 一般の見学者も少ないようで、受付で「見学です」と言ったら少し驚かれたようです。

 期待した手織機も一応、使える状態にはなっていたのですが、綜絖に糸が通っておらず休止状態。ただ、これは季節的な問題かな? 博物館の周囲では植物の皮を処理している人たちがいたので、染め、もしくは糸の準備中なのでしょう。
 綜絖を動かし、杼を飛ばしている姿が見たかったのですが、残念。こちらは現役で動いている気配が感じられたので(糸が通っておらず埃よけのビニールが被っていたので撮影もしなかったけれど)なんとなく納得して帰ってきました。

 大型の力織機や糸取り機は動態・もしくは動態に近いものが見られました。こちらは現役で学生の勉強材料になっていそう。隅の方に置かれていたジャカード織機のパンチカードが面白くて印象に残りました。電子制御がなかった時代の機械式の制御装置はどれもアイデアの塊なんですね。

 学生食堂で食事をして引き上げてきました。

2008.5.18追記

 自作小説『あかねいろ』の中で絹糸と材料の必要量について触れた部分があり、私なりに図書館で資料漁って数字を挙げたのですが、農工大博物館では図書館資料とはかなり違う数字が見つかり悩み中。

蚕蛾 8匹

蚕 3000匹

(桑の葉 100kg)

繭 5.25kg

生糸 526g

着物一着分 450g

 生半可な調べ方ではこうしてぼろが出てしまうことを痛感。生糸→練絹で半分になるという資料もあり、どうしたものやら……。

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招き猫@豪徳寺 GR DIGITAL撮り初め

招き猫奉納所の千羽鶴 GR DIGITAL F2.4 1/250sec ISO64 -0.3EV 新しいおもちゃが手に入ったのが嬉しくて日の出直後の招き猫奉納所に寄ってきました。

 ハイコントラストでゲイジュツっぽく。

 招き猫奉納所の端っこには千羽鶴がぶら下がっていて、そこに逆光で陽が当たっているところをパチリ。

ずらり GR DIGITAL F4 1/310sec ISO64 -0.7EV いつもの招き猫たちもこんな具合に。
 なんか格好良くなっちゃいました。

 普通に露出を合わせると白飛びしてしまう部分に露出を合わせてみただけなのですが、背景が真夜中のように沈みます。

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RICOH GR DIGITAL 購入

FinePixF10とGR DIGITALの箱 愛用のFuji FinePixF10が故障して以来、デジカメのない寂しい日々を過ごしておりました。

 最初に購入候補に挙がったのはRICOHのGR DIGITAL Ⅱなのですが、ネット上の掲示板をあちこち眺めてみると、前モデルのGR DIGITALの方が画質が好きだったという人がちらほら。そこでデジカメWacthのGRDⅡの記事⏎を眺めて前モデルとの比較画像を眺めてみると……。

 ――前モデルの方が好みの絵柄。

 しかし初代GR DIGITALは昨年12月に新型に切り替わってしまい、市場にもすでに在庫は残っていないようです。仕方ない、と言うことで中古を探して買ってきました。
 一枚目の画像はそのGR DIGITALで撮影したF10。GR DIGITALを写したかったのですが、F10が故障しているのでGR DIGITAL自身は撮影できず箱だけ登場と相成りました。

 RICOH GR DIGITAL(公式サイト⏎)は810万画素の単焦点コンパクトデジタルカメラです。35mm版換算f=28mm相当/F2.4の明るく歪みのない広角レンズ。豊富なマニュアル機能。質感の高いボディが売り。

 広角単焦点というところに少し抵抗はありましたが、これまでにF10で撮影したものを見ると広角端で撮ったものばかりです。ならば28mm相当の単焦点でもいいや、と相成りました。

たまにゃん あれ? なんか上下が余っちゃってる感じ。
 これは画角に馴染めるまでしばらく苦労するかも。

 豪徳寺で試し撮りをしてきました。
 看板の被写体は〝たまにゃん〟と思われます。11日のイベントは……すっかり忘れていました。

 GR DIGITALは本体の質感や操作感が好印象。
 ダイヤルによる絞り値と露出補正値のダイレクトな操作も快適だし、ホールド感も手に馴染みます。少し微妙なのはシャッターボタンの位置と押し込み加減。今ひとつシャッターの切れる深さが掴めずに力が入って画面が傾いたり。慣れるまで少し時間がかかりそうです。

 貼った写真は携帯カメラとあまり違わないように見えてしまいますが、それは撮影者がヘタクソなのと画像サイズのせいです。たぶん。

 あ~。SDカードを買うのを忘れた。
 しばらくはZaurusと共用でいいかな。

 参照:Amazon RICOH GR DIGITALII リンクはAmazonへ

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『家守綺譚』梨木香歩

リンクはAmazonへ家守綺譚リンクはAmazonへ
梨木香歩
新潮文庫
2006.10.1
380円

★★★★☆

 読んだと思っていた本なのですが積ん読本の山から出てきて、ページを繰ってみたら初読でした。しかも「なんで読み損ねていたんだ、ばかばか」と思う面白さ。
 刺激的な話ではないのですが、読み始めると止まらず、読み終えてしみじみ良かったと思えるお話でした。

 梨木香歩は何を読んでも面白い。

 時代はいつ頃でしょうか。電気がまだ引かれ始めたばかり、場所は登場する地名からすると琵琶湖周辺の山中で、昭和の初めくらいでしょうか。自家用車もテレビ――どころかラジオも登場しません。そんな舞台に、駆け出しの貧乏作家が留守宅の家守を任されて、というところから物語が始まります。植物の名前が冠された短編、というよりはショートショートと言ったボリュームの話が淡々と連ねられ、一つのまとまった物語を構成していきます。連作短編、です。サルスベリ、都わすれ、ヒツジグサと二十八の植物にまつわるお話。

 梨木香歩の話はいつもどこか懐かしい。『西の魔女が死んだ』でも『裏庭』でも『りかさん』でも時代設定以前に、登場する人々の醸す空気がノスタルジィを含みます。たぶん、きっと、時代を未来に設定してもこの人の書く物は“古き善き時代”の香りが漂うのでしょう。

 ああ『沼地のある森を抜けて』も読んでない。
 読まねば。

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『認知意味論のしくみ』籾山洋介

リンクはAmazonへ認知意味論のしくみ (シリーズ・日本語のしくみを探る)リンクはAmazonへ
籾山洋介著・町田健編
研究者
2002.2.1
2100円

★★☆☆☆

 正直、読むのが辛い本でした。

 特別に難解な本というわけではないです。言語学の本はチョムスキーや構造主義言語学の訳本にわかりづらいものが多かったりして難解な印象のあるジャンルですが、この本は比較的平易な言葉で書かれています。
 なのに読むのが辛い、というのは――たぶん構造がないのです。読んでいて、自分が今何についての説明を読んでいるのか、その位置づけがさっぱりわからない。図解で解説すればわかりやすそうなところをべったり文章で解説しているあたりも直感的な理解を妨げます。
 用語の定義や解説はあるのですが、認知意味論という学問全体の見取り図が示されません。
 読み終えて振り返ってみると基本となる定義をいくつか並べた後に

  • 比較
  • 比喩
  • 類語

の三種を、いえ、三種の内の後者二つをいくつかに分類して終わりです。細部は「なるほど」と思うのですが、根本的に「言葉の意味って何?」に答えることができていないように思います。答えようとするアプローチも見えてきません。物理学におけるニュートンの運動方程式に当たるような基本的な出発点、骨組みが見当たらずなんとも心許ない感触です。
 とりあえず今わかっている確かなことだけでも整理しておこう、ということで比喩や類語の種類について分類を進めているのかもしれませんが、根源的な部分=「意味ってなんだろう」に答えることができていないせいか、成果につながりそうな手応えが得られないのです。少なくともこの本に書かれている範囲のアプローチでは、文章から「意味」を抽出するモデルを作ることにも、意味や意図から文章を生成するモデルを作ることにも貢献できなさそうな感触です。
 しっかり勉強してみればその印象も変わるのでしょうか。

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Pen 2008 5/15号『恐竜の世界へ。』

リンクはAmazonへPen 2008年 5/15号 『恐竜の世界へ。』リンクはAmazonへ
阪急コミュニケーションズ
550円

★★★☆☆

 ファッション誌のようなよくわからない雑誌『Pen』の恐竜特集。恐竜ってファッションとはかけ離れた、たぶんオタクや学者気質の人の趣味の気がします。バーバリのカジュアルは買うかもしれないけれどプラダは買わない、みたいな。ルイ・ヴィトンの時計もたぶんお呼びじゃない。(広告が載っている) 恐竜特集で買う人に果たして広告効果はあるのでしょうか、などと余計なことを思ったり。

 記事の内容的には新しめの良い話題を的確に網羅している感じで悪くないのですが、p.37みたいに肝心のティラノサウルスではなく背景にピントが合ってるようなものを大写しにしたり、必要もないのに写真にページを跨がせたり、なんじゃこれ、と思う部分も。
 雑誌の性格的にマニア向けではありえませんが、思ったより熱の入った特集でした。
 世界の博物館紹介の記事は良かったけど、日本の博物館紹介ももちっと詳しくても良かったのに。福井県立恐竜博物館だけってのは少し寂しいです。

 あ、『世界最大の翼竜展』は東京では6/28からか~。『恐竜大陸』は見送ったけどこっちは見に行きたいな。

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「かぐや」撮影HiVision地球の出・入

 月探査機「かぐや」が撮影した地球の出、地球の入りの画像ですが、ハイビジョン版が公開されました。

NHKの動画公開サイト⏎

 「かぐや」のハイビジョン映像はバラエティ仕立ての特番でちょこっと放送されたきりだったと思うのですが、ようやくネットでもハイビジョンデータが放映されることに。NASAと大違いのJAXA+NHKの姿勢に世界中から不満の声が集まっていたらしいです。ストリーミングデータは2Mbpsなので高速な回線が必要ですが、環境がある方はぜひ。

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『屋根裏の二處女』吉屋信子

リンクはAmazonへ屋根裏の二處女リンクはAmazonへ
吉屋信子
国書刊行会 吉屋信子乙女小説コレクション
2003.3.24
1995円

★★★★☆

 再読です。手元にある家庭社版の『屋根裏の二処女』の状態が悪く読みづらくなり、嶽本野ばらの解説も読みたかったので良い機会と買ってみました。

 『わすれなぐさ』リンクはAmazonへや『花物語〈上〉〈中〉〈下〉リンクはAmazonへのような少女小説ではなく、私小説に当たるものだと思います。少女たちの華やかな雰囲気よりも苦悩が中心です。
 主人公の章子は「人間の力の緒を締め司る要の釘が一本与えられていなかった」というモラトリアム人間です。何に対してもやる気を見せられず関心も持てず、保母になるために都会の学校に出てきたのにその懸命になれない性格のために最初の寮にもいられなくなり、恩師にも見限られてしまいます。転がり込んだ次の女子寮で章子は秋津なる寮生と出会い――。
 という話なのですが、同性間の恋愛がテーマではないのです、たぶん。話の重要な部分に章子の秋津への恋愛感情が絡んでくるのは確かで、恋愛小説と読めないこともありませんが、さまよえる人々の話であるはずです。生き方が見つからない、居場所が見つからない、信仰が見つからない、という。

 嶽本野ばらの解説もいつもの野ばら調でした。面白かった。

 吉屋信子といえば最近はなぜかドラマの原作などでもとりあげられていてmalika(マリカ)リンクはAmazonへという新創刊のコミック誌に「安宅家の人々」のコミカライズと吉屋信子伝コミックのダブル連載がありました。あるのかないのかよくわからない百合ブームの影響でしょうか。唯一の百合コミック専門誌であるはずの『百合姫』ではないところでエス文学の源流の一つである吉屋信子が語られるというのは少し皮肉な感じです。
 『百合姉妹』が創刊されたときには吉屋信子的少女小説の再興を(コミックという形で)なそうとしたのではなかったのかと思ったのですが。

 吉屋信子の『黒薔薇』もこの勢いで再読してみよう。(感想記事

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『フタバスズキリュウ発掘物語』長谷川善和

国立科学博物館のフタバスズキリュウ骨格 リンク先は1200x358

フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウリンクはAmazonへ
長谷川善和
化学同人DOJIN SENSHO
2008.3.20
1470円

★★★☆☆

 国立科学博物館の日本館にはフタバスズキリュウの骨格展示があります。上に挙げたのはその写真。見学者の頭の上を長い首が横切ります。

 今回読んだ本はフタバスズキリュウの研究に携わってきた研究者の著作。発見から四十年を経てようやく新種・新属のフタバサウルス・スズキィとして記載され、正式な種となりました。当時高校生だった発見者の鈴木直少年も五十代ということになります。

 この本を読んで一番に感じたのは、フタバスズキリュウ発見当時の日本の古生物学の貧しさでした。当時はまだ日本で中生代の大型動物が見つかるなどとは考えられておらず、専門とする研究者もいなかったようです。『フタバスズキリュウ発掘物語』の著者も新生代の古脊椎動物の研究はしていても、発見された骨の様子を聞いてから資料を掻き集め、海外の論文と照らし合わせて手探り状態でクビナガリュウと判断したようです。1968年ってそんな時代だったんですね。今ならばちょっとしたマニアでも簡単にクビナガリュウであることくらいは同定できてしまいそうなのに。
 時代の状況がよくわかると同時に、欧米からもたらされる恐竜発見記とのあまりのスタンスの違いに「日本的だなぁ」などと思ってしまいました。
 例えば19世紀前半のメアリ・アニング。12歳でイクチオサウルスの世界初の全身骨格を見つけ、22歳でプレシオサウルスを発見します。読み書きも覚束ない貧しい家具職人の娘が英国の古生物学界をリードするのですが、その活躍が『メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋』(吉川惣司)リンクはAmazonへという本になっています。150年後の日本の方が遙かに遅れているように見えるのは気のせいでしょうか。

 『フタバスズキリュウ発掘物語』は平易に書くよう努めた様子が窺える、丁寧な文章で綴られます。少しばかり行き過ぎて子供向けっぽい印象もあるかな。内容的には科学解説本そのものなので、文章から受ける雰囲気よりはやや大人&古生物ファン向き。難解ではありませんが、もう少し詳しく突っ込んだ解説があっても良かった気はします。恐らくは日本でもっとも有名な化石の、四十年分の研究の成果を見たかったな。化石骨をCTにかけて構造を調べたり、頭骨の内側の形から脳の構造を推測したり、骨格モデルに筋肉をつけて遊泳速度を推定したりはしなかったのでしょうか。国立科学博物館にはアーケロン(どデカい昔の亀)の標本がありますが、そのアーケロンや現生の海亀との比較はしていないのでしょうか。溝入りサポート付の腹肋でしっかりと籠状になった胸郭の強度を計算し、砂浜に上がって卵を産むことのできる体の強度があったか否かを計算してみたりはしなかったのでしょうか。印象で「魚食」「アンモナイト等殻付の獲物は無理」「陸上産卵不能」「変温」と挙げられますが、統計や組織構造面での証拠が出てこないのです。読んでいて少々歯痒くなってきます。直接、フタバスズキリュウ研究に携わった人の本なのに、と。

 楽しく読めたけれど、少しばかりもやもやの残る本でした。
 国立科学博物館に出かける前にこの本で予習しておくと頭骨の構造や腹肋の特徴が楽しく読み取れるはず。サメに襲われた痕跡はショウケースに納められた化石の実物から見て取れます。展示解説もしっかりついているので一目でわかりますヨ。

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Zaurus+青空文庫=『文庫エディター』

 久々にZaurusの話題です。
 しばらく情報収集を怠っていたZaurus環境。ふと気づけば面白いソフトがあるじゃないですか。

文庫エディター ver.0.4 / ゼロ975様(Qt初心者の覚え書き

 これは青空文庫形式のテキストで小説を書いている私にはお誂え向き。ああ、2007年の5月に最初の公開版が出てる……。
 しかもビューワモードでの青空対応度はSharp純正のブンコビューワよりずっと高くて挿絵OK、字下げOK、地付きOK、ルビの開始記号「|」にも対応。こんな良い物が作られていると気づかなかったとは不覚でした。

 かなり出遅れましたが、Zaurusユーザ、かつ、青空文庫ファンの方、オススメです。

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上村松園

 最近『青空文庫』に上村松園の著作公開が続いています。cf.青空文庫収録上村松園著作⏎

花がたみ/上村松園/1915 近代日本画でもっとも有名な作家ではないかと思います。今でも上村松園・松篁・淳之と三代の作家の作品はあちこちで展覧会が開かれていますね。cf.松伯美術館⏎
 私も松園の絵は大好きで、幾度か見に行ったことがあります。画集も時々眺めては「いいなぁ」と溜息を吐いたり。
 松園の絵は今のコミックに慣れた人の目にも素敵に見えると思います。

 青空文庫に収められているのは松園の随筆に当たるものでしょうか。どの文もさほど長くはなく、ごく簡潔に、個々の作品に取り組んだ経緯や制作環境について綴られています。有名な『花がたみ』について、狂人病院(当時の表現です)に病人を観察しに行った、という話などは庭の鯉や鶏、鴛鴦(おしどり)を徹底的に観察して描いた日本画家上村三代らしいエピソードに思われます。

 以下は縦書き文庫の上村松園著作本棚へのリンク(要JavaScript)。

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『Dark Seed』家系図

 幾度か紹介している紺野キタの『Dark Seed』、人間関係がややこしい感じです。
 そこで家系図を作ってみました。by Geni
 ※注意:一巻終了時点でのネタバレを含みます。

Dark Seed 家系図

 絵にしてみると思ったよりすっきり。
 Geniでは養子(adopted child?)という項目が見つけられず、画像に後から書き込んだのでちょっと不細工。アレックス・バトラーの弟=ヴィンセントとセレスト姉妹の異母弟はツリー構造がややこしくなったのか表示されませんでした。むぅ。

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デスクトップ検索

 WindowsDesktopSearch、GoogleDesktop、etc。
 デスクトップ検索ツール、便利ですね。ですが、透明テキスト付のPDFとの相性が今ひとつです。WindowsDesktopSearchはver.2の頃は標準のifilterでうまく検索できたのですがver.3になってからはfoxitpdfのifilterでないと透明テキストが検索できなくなり、その後いつの間にかfoxitのifilterを使っても検索できないようになっていました。(ifilterをインストールし直し、インデックスを再構築すると直ります)

 デスクトップ検索ができないんじゃ透明テキスト付PDFの魅力が半減、というわけで改めて探してみました。

 ありました。“DesktopHE”。フリーソフトです。

 Hyper Estraierを検索エンジンに使用した、Windows用のデスクトップ検索ツールです。
日本語の文書に対して、N-gram方式による漏れのない検索が行えるのが特長です。

 指定したディレクトリの配下の、次の種類のファイルから全文検索を行えます。
 ・テキストファイル
 ・HTMLファイル
 ・電子メールファイル(拡張子が「.eml」「.mime」「.mht」「.mhtml」のもの)
 ・Wordファイル
 ・Excelファイル
 ・PowerPointファイル
 ・pdfファイル
 ・OpenOffice.orgファイル

DesktopHE公式ページ概要より

 以前に試したときはxdoc2txtとScanSnapOrganizerの生成する透明テキスト付PDFの相性が悪かったのかうまく全文検索ができなかったのですが、今回試してみたらうまく行きました。←日本語フォルダ名かxdoc2txtのファイルサイズ制限設定に引っかかっていたのだろう

 DesktopHEは核となる検索エンジン部分がとても優秀です。WDSやGDSのように検索漏れがあったり、存在しないはずの語が検索に引っかかってきたりと、おかしな検索結果とは無縁です。代わりに

  • 導入がほんのちょっとだけややこしい
  • インデックスの作成が手動(自動化もできるけどパソコンに詳しくないと難しい)
  • xdoc2txtでファイルサイズの制限を解除すると時々エラーを吐く
  • 拾い物のPDFなどうまくインデックスできないものもある

と少しだけ敷居が高いです。

 検索精度が高いことは何ものにも代え難いし、概要の抜き出し表示もシンプルですが良いアイデアで実用的。一太郎やOOo、MS-Officeファイルが検索できるのも便利。

 お勧めです。

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記述記号とJIS X 0213:2004

20080422_01_2  小説では、普段使わない記述記号を使ったりします。
 代表としては「二倍の踊り字」でしょうか。青空文庫でも表示タグが決められていたり。最近の小説ではまず見ませんが、好きな表記です。

 ココログもutf8形式のUnicodeが文字セットに指定されているので(閲覧者が対応フォントを入れていれば)右の括弧内の三文字「〳〴〵」が表示されるはずです。いわば機種依存文字ですがJIS X 0213で規定されている文字なので気にせず使ってしまいます。
 縦書き用の踊り字なのでブラウザの横書きだと上下に一文字ずつ分割されてお間抜けに見えますね。

 二倍の踊り字は、ワープロソフトなどではひらがなの「く」を倍角で使用するのが普通でしょうか。「ワープロ 踊り字」なんて感じで検索してもそんな方法を紹介しているところが多いようです。
 でも「く」はあくまでもひらがなの「く」で、踊り字ではないのです。
 これはダッシュ「―」と長音「ー」とハイフン「‐」とマイナス「-」と罫線「─」が見た目にあまり差がないのに違う文字コードが与えられているのと同じで倍角ひらがなの「く」で済ませるのはよろしくないことのはず。表意文字は意味あってこそ。

 ATOKの文字パレットを眺めると「準仮名・漢字」の項にこの二倍の踊り字があり、同じグループにカタカナ踊り字「ヽヾ」、ひらがな踊り字「ゝゞ」などが並びます。合略仮名のマス「〼」、コト「ヿ」、ヨリ「ゟ」なんてのも同項目にあって

ヱビスアリ〼
サウイフヿ
とうあさゟ

などと使うのでしょう。でもこれは小説の中では使えないかな。コトもヨリも読めない人の方が多いはず。フリガナを振るのも間が抜けていますし。同様の合略文字にはシテとかトキとかトモもあるはずですがJIS X 0213:2004にもないようです。

 踊り字が使えるTPOがあまりないのが残念です。

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