『認知意味論のしくみ』籾山洋介
認知意味論のしくみ (シリーズ・日本語のしくみを探る)
籾山洋介著・町田健編
研究者
2002.2.1
2100円
★★☆☆☆
正直、読むのが辛い本でした。
特別に難解な本というわけではないです。言語学の本はチョムスキーや構造主義言語学の訳本にわかりづらいものが多かったりして難解な印象のあるジャンルですが、この本は比較的平易な言葉で書かれています。
なのに読むのが辛い、というのは――たぶん構造がないのです。読んでいて、自分が今何についての説明を読んでいるのか、その位置づけがさっぱりわからない。図解で解説すればわかりやすそうなところをべったり文章で解説しているあたりも直感的な理解を妨げます。
用語の定義や解説はあるのですが、認知意味論という学問全体の見取り図が示されません。
読み終えて振り返ってみると基本となる定義をいくつか並べた後に
- 比較
- 比喩
- 類語
の三種を、いえ、三種の内の後者二つをいくつかに分類して終わりです。細部は「なるほど」と思うのですが、根本的に「言葉の意味って何?」に答えることができていないように思います。答えようとするアプローチも見えてきません。物理学におけるニュートンの運動方程式に当たるような基本的な出発点、骨組みが見当たらずなんとも心許ない感触です。
とりあえず今わかっている確かなことだけでも整理しておこう、ということで比喩や類語の種類について分類を進めているのかもしれませんが、根源的な部分=「意味ってなんだろう」に答えることができていないせいか、成果につながりそうな手応えが得られないのです。少なくともこの本に書かれている範囲のアプローチでは、文章から「意味」を抽出するモデルを作ることにも、意味や意図から文章を生成するモデルを作ることにも貢献できなさそうな感触です。
しっかり勉強してみればその印象も変わるのでしょうか。
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