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『屋根裏の二處女』吉屋信子

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吉屋信子
国書刊行会 吉屋信子乙女小説コレクション
2003.3.24
1995円

★★★★☆

 再読です。手元にある家庭社版の『屋根裏の二処女』の状態が悪く読みづらくなり、嶽本野ばらの解説も読みたかったので良い機会と買ってみました。

 『わすれなぐさ』リンクはAmazonへや『花物語〈上〉〈中〉〈下〉リンクはAmazonへのような少女小説ではなく、私小説に当たるものだと思います。少女たちの華やかな雰囲気よりも苦悩が中心です。
 主人公の章子は「人間の力の緒を締め司る要の釘が一本与えられていなかった」というモラトリアム人間です。何に対してもやる気を見せられず関心も持てず、保母になるために都会の学校に出てきたのにその懸命になれない性格のために最初の寮にもいられなくなり、恩師にも見限られてしまいます。転がり込んだ次の女子寮で章子は秋津なる寮生と出会い――。
 という話なのですが、同性間の恋愛がテーマではないのです、たぶん。話の重要な部分に章子の秋津への恋愛感情が絡んでくるのは確かで、恋愛小説と読めないこともありませんが、さまよえる人々の話であるはずです。生き方が見つからない、居場所が見つからない、信仰が見つからない、という。

 嶽本野ばらの解説もいつもの野ばら調でした。面白かった。

 吉屋信子といえば最近はなぜかドラマの原作などでもとりあげられていてmalika(マリカ)リンクはAmazonへという新創刊のコミック誌に「安宅家の人々」のコミカライズと吉屋信子伝コミックのダブル連載がありました。あるのかないのかよくわからない百合ブームの影響でしょうか。唯一の百合コミック専門誌であるはずの『百合姫』ではないところでエス文学の源流の一つである吉屋信子が語られるというのは少し皮肉な感じです。
 『百合姉妹』が創刊されたときには吉屋信子的少女小説の再興を(コミックという形で)なそうとしたのではなかったのかと思ったのですが。

 吉屋信子の『黒薔薇』もこの勢いで再読してみよう。(感想記事

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