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『水辺にて』梨木香歩

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梨木香歩
筑摩書房
2006.11.20
1470円

★★★★☆

 梨木香歩の本です。
 物語かと思って手に取り、読み始めてから随筆だと気づきました。梨木香歩はカヌーを趣味の一つとしているようで、様々な水にまつわる体験談の中にしばしばカヌーの話題が登場します。というよりはカヌーエッセイなのかな。

 意外。

 私も少しだけカヌーで遊んだことがあります。北海道の釧路川、四国の四万十川、栃木の那珂川。あとは湖を何カ所か。とても楽しかったことを思い出しました。公園の池のボートとは段違いに軽やかに水面を滑る――まさしく滑る――素敵なファルトボート。華奢な骨組みと布一枚で水面に浮かぶ感覚は体験した人にしかわからない独特の魅力があります。
釧路川上流域にて 右の画像は釧路川に漕ぎに行ったときもの。“写ルンです”で撮ったのでちょっとぼけぼけですが。梨木香歩のエッセイを読んでいてこの時の水の香りを思い出しました。そうか、『家守綺譚』を読んだときに心地良いと感じた水の香りはカヌー体験から来たものだったんだ……。

 たかが随筆。されど随筆。
 読んで愕然としました。文章がとても心地良いのです。小説ではない、日常の身の回りの体験をこんな風に書けるなんて、と。日頃から思う物、感じる物、志す物――感性がこれだけ豊かだからこそ『裏庭』が出てきたのだなと頷けてしまいました。

 神様はずるい。

 自分に与えられなかった、育てられなかった才能を羨んでみても仕方がないのですが、そう思わずにいられないエッセイでした。

 オススメです。

 釧路川の写真では釣り竿が写っていますが、この時釣れたのは小さなウグイだけ。晩のおかずに大きな鱒をあてにしていたため、野菜ばかりの中に一口サイズのウグイがぽつんと浮かんだ少し寂しいシチューと相成りました。

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