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『レッド・マーズ(上)(下)』キム・スタンリー・ロビンスン

レッド・マーズ〈上〉
レッド・マーズ〈下〉
キム・スタンリー・ロビンスン著 大島豊訳
創元SF文庫
1998.8.28
★★★☆☆

 十年前の本で今更の感もありますが、読み逃していたキム・スタンリー・ロビンスンの火星三部作。

 当時の火星最新知識紹介という側面もあったと思うのですが、物語の中心は原始共産型ユートピアが失われていく、という過程のようです。緑化の是非、勝手なことを始める初期入植者達、押し寄せる商業主義。500ページの文庫二冊に渡って綴られるフロンティア社会の変化。壮大な話です。
 続編の『グリーン・マーズ』は出ていますが、三つめの『ブルー・マーズ』は未刊行。原著自体は1998年に出ているようなのですが、日本では売れ行きが悪かったのでしょうか。固定した主人公のいない群像劇的な綴られ方が日本のSFファンには合わなかったのかもしれません。政治のパワーゲームみたいな話は最近の日本人SFファンはあまり好まないようですし。

 実をいうと第9回小松左京賞に投稿した原稿がこの『レッド・マーズ』に近い時代設定だったのに気づいて(今更ながら慌てて)読んでみたのですが、こういう壮大な話を書ければなぁ、と思わせられました。文章やキャラクター設定がいかにもアメリカ的で馴染めなかったのですが、それを差し引いてもパワフルな物語だと感心してしまいました。不勉強が身に染みます。科学解説本ばかり読んでいたのではダメなんですね……。

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