『イシノネ』に登場した音楽
『イシノネ』作中で登場させた主な曲からCDを紹介。
今考えると曲とエピソードをもっと深く絡められれば良かったな、とも思います。
- バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ ハーン
- ハーンのバッハ演奏を一度聴くと他の一流と言われる演奏家達がヘタクソに思えてしまいます。文句なしの名盤。古楽器演奏(バッハ当時の技巧と楽器)ならば残響たっぷりの教会建築で録音されたクイケンの新録音
も心地良いです。作中でヴァイオリン練習場所になっている展望室も残響が豊かで無伴奏ソナタの分散和音がきれいに重なるのかも。
- サラサーテ:カルメン幻想曲 ツィゴイネルワイゼン/ヴァイオリン名曲集より ムター
- CDのタイトルは「ツィゴイネルワイゼン」が主役ですが一緒に収録された「カルメン幻想曲」がムターにぴったり。ヒールでタンバリンを鳴らしながら弾くのは絶対無理!と思えてしまう難曲です。「のだめカンタービレ」で峰がこの曲を弾く恋人を指して「俺の真っ赤なルビー」と感涙を流しますが、本当に「真っ赤なルビー」なイメージの曲。脱線ですがツィゴイネルワイゼンは冒頭で「き~み~の名は~」と口ずさんでみると脳裏にメロディが焼き付きます。
- さくらさくら
- これは残念ながらイメージに近いCDは見つかりませんでした。高校生の頃、ヴァイオリンを習っていた友人が余興に見せてくれたのが作中での“左手ピチカートによる装飾音付さくらさくら”でした。身近に楽器弾きがいるなら演奏をねだって困らせてあげてください。「琴で弾くときみたいな装飾音」と注文をつけるのがお勧めです。
- ラヴェル:ツィガーヌ レーピン
- ムターのツィガーヌは力強く情熱的ですがレーピンの録音は寂寥感がありました。ラロの「スペイン交響曲」がメインタイトルのCDですがこれに収録されているツィガーヌは割と好き。ただ決定盤演奏が見当たらない曲でもある気はします。
- シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 テツラフ
- このブログ内でも紹介記事を書いたので詳しくはそちらへ。この曲も好きな曲なのに決定盤が思いつかない……。
- パガニーニ:カプリース 五嶋みどり
- 五嶋みどりの伝説の一枚。ヴァイオリンについてあまり知らない人が聴くと「本当に一人で演奏してるの?」と不思議に感じる超絶技巧曲。
- ベルク:ヴァイオリン協奏曲 ムター
- お勧めは現役ヴァイオリン弾きの女王・ムターの録音。いわゆるゲンオン(現代音楽)の中ではもっとも聴きやすい曲と思われます。この録音もとてもロマンチック。オーケストラもムター自身の演奏も最高。一世を風靡した名盤――のはずなのに国内盤が廃盤、なのかな。Amazonで見当たらなかったのでリンクは海外版です。少し線が細い感じですが渡辺玲子
の録音も割と好き。この曲はハーンが録音してくれれば最高、と思うのですが。
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2ch創作文芸板「小松左京賞スレ」関連のお話。
スレッドで『イシノネ』を読んで下さっている方は概ね
- 文章はかろうじて及第?
- 構成がダメで先に読み進めるのが辛い
という印象のようです。
2chという場所柄酷評を覚悟していたのですが晒した当人が読んでいるスレということで遠慮もあるのでしょうか。印象が短く一言二言綴られそれが、ああ、と納得行くものばかり。「登場人物は何をしたいのか?」には膝を打ちました。
早々に読破して下さった方もおいでのようです。
一次選考落ちでいわばハズレ保証のついた長編ということになりますが、にも関わらず手にとって下さった皆さんありがとう。
落選作でも公開することでSF系新人賞を目指す人の何かの参考にでもなれば『イシノネ』も浮かばれるというものです。
さて。気持ちに区切りをつけて次へ向かおう。