『一億三千万人のための小説教室 』高橋源一郎
一億三千万人のための小説教室
高橋源一郎
岩波新書
735円
2002.6.20
★★★☆☆
この手の小説指南本、ついつい手にとってしまいませんか。「なるほど」と頷けることもあればそうでないこともありますが、幾度ハズレに当たっても懲りずに手を出してしまいます。そしてどうやらプロの作家でもこの手の本を読んでいたりするようです。
わたしの書斎の本棚には「小説の書き方」「小説教室」「小説はどうやって書くか」「小説家になる方法」「新人賞のとり方」「作家になるには?」といった、小説を書くための、もしくは小説家になるための本が三十一冊ありました。
『一億三千万人のための小説教室』高橋源一郎,まえがきより
なるほどと思う部分も多かったし楽しくも読めましたが、やはり、というべきでしょうか。この『小説教室』を読んでも自分の書くものががらりと変わるようなことはない気がしました。書かれているのはごく当たり前の、普通のことです。少なくとも意外なことは欠片も書かれていませんでした。
でも、この本に書かれている通りのことはそうそうできなさそう。
世界が違って見えるまで待つ? 難しい~。
小説と遊ぶ? 難しい~。
『ハリウッド脚本術』のようなものを実践するのは大変ですが、それは労力の点で大変なだけでじっくり取り組めば完遂できてしまうものです。クリアすれば達成感もありますし、プロットを立てる際にはとても役に立つことが実感できます。
一方で「小説と遊ぶ」というような観念的な指南は達成度も何もわからないわけで、要求水準が高い、と思ってしまいます。いえ、いつまでたっても追いつけないような相対的な目標設定なのでしょう。具体的なハウツーではなく、心の問題を重視するあたりが純文学作家の文章読本らしい、ような気もします。
読んで楽しくはありましたが、役に立つかと問われれば「よくわかんない」です。
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