『先輩と私』森奈津子
先輩と私
森奈津子
徳間書店
1680円
2008.6.30
★★★★☆
雑誌『問題小説』に連載されていた連作短編を単行本化したもの。成人男性向け中間小説誌、ということになっているようですがこの雑誌、男性向けというのはよくわかるし、エロに対しては寛容……というより柱のひとつにしているようなので森奈津子の同性愛モノが載せられていてもおかしくはない気がするのですが、今回読んでいて思いました。きっと誌面ではすごく浮いていたんだろうな、と。なんというか男性原理バンザイみたいな傾向の雑誌なので。
表紙と口絵のイラストは思い切りマンガっぽくて中身との違和感を感じます。中身はほぼレズビアン官能小説で、表紙はライトノベル的というかコメデイ四コママンガというか。でも内容も登場人物たちの思考や発想がかなりギャグよりなので合っていないわけではない、のかな。
同性愛小説でフェミニズムやSM要素もてんこ盛りではありますが、全体を貫いているのはやっぱりどこか不条理さを感じさせる雰囲気で、そこに性的演出における「お約束」が絡んで森奈津子ワールドを展開しています。なんというか、端から見たエロ=ギャグなのだ、みたいな。
好みで言えばもっとはっちゃけた『西城秀樹のおかげです』に収録されているような話が好きですが、この本も十二分に楽しめました。
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