« 10月の百合コミック | トップページ | 『軌道エレベータ』石原藤男・金子隆一 »

『テンペスト』池上永一

テンペスト 上 若夏の巻
テンペスト 下 花風の巻
池上永一
角川グループパブリッシング
2008.8.28
各1680円
★★★★☆

 面白かった。
 読んで良かった。

 池上永一の新刊です。
 陳舜臣の、というよりNHK大河ドラマの『琉球の風』……よりちょっと下った清国崩壊の時代を池上永一が描くとこうなります、という大作。読み応えたっぷりでした。ちょっぴりユーモラスに、ちょっぴりファンタジー風に、どことなくあっけらかんとしながらもさりげなく残酷さもある南の国の物語。現代的な、少し砕けた表現が多いので堅めの言葉遣いが好きな歴史ファンには馴染みにくいかも。ジャンルとしては歴史ファンタジーになるのかもしれませんが、伝奇モノの要素もあります。 『バガージマヌパナス―わが島のはなし』の頃の鮮烈さは(私が沖縄話に慣れてしまったのか)やや薄らいだ印象ですが、綿密な調査の上に構築されたと思われる物語の密度のぐっとくること。沖縄出身者らしい故郷への愛もたっぷり。魅力的なキャラクターにめまぐるしいイベントの連続。琉歌の数々。ボリュームたっぷりの物語ですが、読み始めたら途中で本を置きたくなくなると思います。
 このお話、ヒロインは真鶴ですが、作者に愛されていたのは強烈なアクのある聞得大君(きこえおおきみ)かもしれない、とちらりと思ったのでした。

|

« 10月の百合コミック | トップページ | 『軌道エレベータ』石原藤男・金子隆一 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。